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手紙越しの旦那様  作者: 桜 みゆき


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5章  あなたへの誓い 8

 ネリーは、レイブスの言葉をぼんやり聞いていた。

 意味が、分からなかった。

 後にゆっくりと聞いたところによると、「ノールヴィリニア公爵戦死」の情報は、国から発表されたものではなく、あくまで噂に過ぎないらしいかった。しかし、新聞による報道がなされたため、それはかなりの信憑性をもって、人々に知れ渡っていったという。

 公爵家としては、彼が確かに死亡したという確証を持てるまで沈黙を貫くこととなったが、それでもロアンを慕う人々の顔からは笑みが消えていた。

 それはネリーも例外ではない。

 誤報であってくれたらと願っていた。

 だがもし、本当だったら。

 心が絶望に染まっていくのを感じていた。

 ただ今は、静かに過ごしたい。

 時間が過ぎてゆくままに、ネリーは日々を送った。

 何かを自発的にしようとする気力は、最早残っていない。不安定な心の隙を埋めようとするかのように、側に居続けるセルジュのことも好きにさせた。

 返答するのも、追い払うのも、酷く億劫だった。

「ネリー、もういいじゃないか」

 彼は、毎日こうして囁いた。

「君が公爵に義理立てする必要もなくなっただろう? 僕と幸せになろうよ」

 その言葉は、ネリーの心を麻痺させていく。

 涙も出ないほど、憔悴した心を更に。

「愛してるよ、ネリー。僕は君を一人にはしない」

 セルジュの手が、ネリーの肩を抱く。

 何もかも疲れてしまっていた。

 この手に身を委ねるだけで楽になれるのなら、もう、それでも良いかもしれない。

「だから、ネリー。僕を選んで」

 セルジュが抱き寄せるまま、ネリーは身を預けようとしていた。

 しかし、彼の言葉は続く。

「だって公爵はもう、いないんだから」

「――――ッ」

 ネリーは気付くと、肩に触れていた手をパシンと払っていた。

「貴方に、何が分かるんです」

 その勢いのまま立ち上がり、逃げるように走り出す。

「ネリー!?」

 後ろからこちらを呼ぶ声が聞こえたが、振り返る気にはならなかった。

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