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手紙越しの旦那様  作者: 桜 みゆき


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4章  新たな訪問者 4

 セルジュの滞在が決まり、数日。

「奥様……」

 朝。困り果てた様子の侍女に起こされ、ネリーは小さく溜息をついた。

「また、ですか」

 彼女の手には、すっかり見慣れてしまった小さな花束。

 差出人不明のそれは、セルジュが来た次の日から毎朝欠かされず届けられていた。

 誰からの物なのか。それをはっきり確かめたわけではない。だが、セルジュが犯人であるのは、誰の目にも明らかだった。

 ネリーは頭痛を覚えて、眉間を揉んだ。

 はじめ、エリーゼの部屋と場所を勘違いをしたのだろうとネリーは思った。やや無理のある推論だということは自覚していたが、それ以外に理由が思いつかなかったからだ。

 しかし、それとなく部屋の正しい場所を彼に伝えてみたものの、きょとんとした顔で知ってると言われてしまい、ネリーは二の句が継げなくなった。

 その一件以降も、花は朝になるとネリーの部屋の前に、誰にも見られずに置いてある。

 本当に彼からの贈り物なのか確かめてしまえば、その意味を考えざるを得なくなってしまうため、深く考えることが怖くなった。

 ネリーは困り顔の侍女と顔を見合わせて、溜息をつく。

「どうされますか……?」

「そう、ね……」

 一体、どういうつもりで贈られているものなのか分からず、若干の薄気味悪さを感じるネリーはとても受け取る気にはなれないでいた。だからといって、花自体には罪はないため捨てるのも憚られる。

 溜息をついたネリーは、結局いつものように指示した。

「それはあなたにあげるから、好きにしてください。どこかに飾るならば、わたしの部屋以外でお願いしますね」

 はじめは綺麗な花に多少嬉しそうにしていた侍女たちも、連日となると扱いに困るのか、微妙な顔をして頷いた。

 今や屋敷中に、「差出人不明」の花が活けられている。

 周囲が華やかになっていくのとは裏腹に、ネリーは少しずつ、息苦しくなっていくような気がした。周りを囲まれ、逃げ場がなくなっていくような感覚がする。

 今日は真っ赤な薔薇の花だった。

 どこに飾られるかはまだ分からないが、大層目立つだろうと溜息をついた。

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