表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
手紙越しの旦那様  作者: 桜 みゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/64

4章  新たな訪問者 2

「わたくし、帰りませんわよ」

「エリーゼ、君のお父上も心配されているから……」

 婚約者のにべもない返答に対して困り顔を浮かべるセルジュを横目に、ネリーは物思いに耽っていた。

 ――君が心配でここまで来たんだ。

 ネリーはその言葉に、掴まれた手をそっと払うのが精一杯で、曖昧な反応しかできなかった。

 一体、どういう意図であんなことを言ったのだろう。

 掴まれていた箇所をぎゅっと握り、考え込む。

 嫁いだ相手があの噂の主だったからだろうか。それとも実は深い意味などなくて、ただの社交辞令だろうか。

 セルジュの真意が分からず、もやもやする。

「――何度も言わせないでくださいませ! わたくしは、帰りません」

 甲高い声にはっとして、ネリーは顔を上げた。

「エリーゼ、セルジュ様をあまり困らせては……」

「わたくしに出て行ってほしいだけなのではなくて、御姉様?」

 ネリーは一瞬、言葉に詰まる。

 そんな気持ちがない、とは言えなかった。

 なにより、もうじきノールヴィリニアの夏が終わろうとしている。本格的な冬になれば交通は滞り、通れたとしても危険な道程となると聞いていた。もう幾月もしないうちに、春になるまで泊まらせる他なくなってしまう。

「それに、言ったでしょう?」

「何を、です?」

 得意気に微笑むエリーゼに、ネリーは怪訝な顔で見返した。

「『新しくお目付け役がくるわ』と」

 エリーゼはニヤリと唇の端を持ち上げると、セルジュに言う。

「そんなに帰ってほしいのならば、説得してごらんなさいな、セルジュ。それまで、ここに泊まればいいのよ。かまわないでしょう、御姉様?」

 いきなり何を言い出すのかと目を丸くしたネリーは、同じく驚いているに違いないセルジュの様子を窺った。しかし彼は、少し考え込むように顎に手を添え、暫しの間のあと、はにかむように笑った。

「そうしても、良いかい?」

 小首を傾げ尋ねる彼を見て、ネリーは呆気にとられる。

 頷く以外の返答が許されない雰囲気となり、了承するしかなくなった。

 ネリーは、セルジュのあっさりとしすぎる反応に、少しだけ違和感を覚えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ