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2話ー「常に順風満帆な人生など、この世に一つも無いんだ」



 スタイル家の領からは少しばかり離れており、馬車で約10時間程で到着できた。

 既に辺りは暗くなっており物騒じみた雰囲気に感じた。


 到着するとそこには期待抜かれた門兵が二人少し間を開け立っている。

 カルマは馬車を降りると一人話に向かった。


「お待たせいたしました。 スタイル家の領主スタイル・カルマです」

「お話は聞いております。 夫人の事もありますのでこのまま馬車でお通り下さい」


 カルマはすかさず頭を下げる。


「ありがとうございます」


 流石は王族の直属の門兵。

 本来ならば馬車で王宮の前に出向くなど何様のつもりだと言われてもしょうがないが、状況を見計らっての独断だ。

 あの感じだと既に王には申し入れしているのであろう――本来ならばこの判断基準が王族兼王宮に職する者のスタンダードなのだが。


 王宮の前に到着すると、それはまるで別世界のような雰囲気を持ったお城で誰もが生唾を飲んだ。

 全員で馬車を降りると駆け足で王の間へ向かった。

 王宮の中は黄金に輝くキラキラの装飾で端から端まで施されている。

 他外国の謁見の為に、ポジションを取る為にここまで手を凝らせているのだろう。


 王の間へは貴族しか入れないので、メイドと産婆を王の間の扉の前で待機してもらいカルマとミシェルだけで入って行った。


 内装は本棚で敷き詰められ、如何にも智に赴きあるお部屋だった。

 真ん中には大きな机と椅子、そこに見た目が40代程のミドルヘアで真ん中分けの金髪で細身の男が足を組んで座っていた。

 実年齢は60代前半というのだから驚きだ。


 カルマとミシェルは直ぐに立膝を付くと自らの顔が見えないように伏せた。


「遅くなりました。 アシュタルト王」

「大丈夫だ。 それより夫人の方は大丈夫か?」

「はい、私は大丈夫です。 お気遣いありがとうございます」

「とんでもない」


 ミシェルは自分が気遣かわれたより、アシュタルト王が産後の女性を心配した事に安堵を覚えた。

 しかしカルマだけは違った。

 ミシェルはアシュタルト王と何回も会ったことがある訳では無いので何も感じなかったが、カルマはアシュタルト王の眼光が光を失っている事に気付いた。

 こんな言い方は失礼かもしれないが、死んだ魚の眼に見えた。


「これまで長かったな」

「……はい」

「カルマ君が冒険家を辞めると聞いた時には腹の底から驚いたもんだ」

「一番驚かれていらっしゃいましたね、アシュタルト王」

「そうだったか?」


 アシュタルト王は朗らかな笑みを見せて場の緊張感を解き、組んでいた足も解いた。


「カルマ君からは沢山の事を学んだ。 今でも覚えているのは、私が政治と国民を天秤に掛けたときに『人間とは』を解いてくれたときだ。 あのときは本当に助かった。 心から感謝している」


 カルマは付いていた肘を曲げ、より一層頭を深く下げる。


「勿体なきお言葉、ありがとうございます」


 その姿にアシュタルト王は微笑む。


「君は……今でも、民が何より大切か?」

「はい、民が居るから私達は心を満たせます。 民が居るから私達はより懸命に生きようと強くなれます。 この言葉の裏に変わらず人種や種族などの安い壁は存在しません。 そう私は考えています」


 実際にスタイル家の領地には奴隷制度や人種差別をする制度は一切存在しないのだ。       

 この多種多様にいる生物の妥協点を打つことは容易な事で無い。

 しかし、存在していないのだ。

 安い言葉では無いことは明白だった。


「そうか」

「はい」


 少し間が開き、アシュタルト王が椅子に手を掛けゆっくり立ち上がった。

 その姿は悠然と勇ましく、王と名乗るのに一点も濁りは無い風格だった。


「スタイル家領主スタイル・カルマ、及び夫人スタイル・ミシェル。 二人が冒険家の頃   からの活躍は王国貢献されし者の中でも群を抜いている事は誰もが知っている。 そして、民の経済を大きく広げ人種や種族に関係無く『差別の無い街』を築き上げたのも他外国を含めても指の数だろう。 このことを何よりも高く評価しすべきことであり、そして私個人からも強く評価をしたい」


 二人は立膝のまま深く頭を下げ最大の感謝の意を伝える。


「「「ありがとうございます」」」


 ゆっくりアシュタルト王は二人に近づく。

 ピタっと足を止めると、急にアシュタルト王の目付きが鋭くなり心無い冷えた眼光に明確に変わった。


「しかし……誠に遺憾ながらその民及びギルム王国を裏切った事は真実であり事実である。 この事により国家反逆罪によりギルム王国への立ち入り禁止、中流貴族からの名の抹消及び全ての功績を剥奪する」




「「「はッ?」」」




 全てが謎のまま全てを奪われたスタイル家。

 突如二人は電灯も灯照らさぬ真っ暗な夜道に捨てられたのだった――。



            ☩



 あの日から丁度10年が経ち俺は10歳を迎えた。


 10歳になると体内に魔力始動が起こり、魔力が体中を勤しんで駆け巡る。

 この時の俺は未だ知らなかったが、大女神様から頂いた「ユニークスキル」と現実世界からの継がれた呪いの体質「超ショートスリーパー」で世界一の王国を築き上げる条件が揃ったという事だった――。




良かったら評価等を宜しくお願いしますッ!


面白かったら「いいね」して貰えると嬉しいです( *´艸`)

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