神様から案山子への贈り物
初めての短編で、初の恋愛小説です!上手くかけているは分かりませんが、楽しんで頂けると嬉しいです!
:短編:
---- 神様からの案山子へのプレゼント-----
――僕は案山子だ。今は12月……稲刈りも既に終わり、何もする事が無くなった? まぁ立っているだけで、今まで何かをやったとか、達成感とか言うものは感じたことが無い……人型と言っても、考えたりだとか、感じたりなんていう感覚は無かった。ここで疑問に思った人もいると思う、案山子なのに思考しているんだとか思わなかったでしょうか? 僕も最初は疑問に思ったさ、それは突然で何にもない、日常的な1コマでしかない、数年前に起きた、いいや? 気が付いた話だ。
それはいつも通り?に立っていた時だ……いきなり人、少女の声が聴こえて来たのである。
「あっ!かかしたんら〜おはよ〜ございます!」
僕に気が付いた少女は、舌っ足らずな言葉で、元気よく挨拶をしてくる。
当然僕は挨拶を返せる訳もなく、心の中で「うん、おはよう」と優しく返事を返すのだった。
「きょーも、じーじのはたけをまもってね? あたしはがっこうにいってくるね? ばいばい! 」
そう言われた僕は、心の中で。
『任せておいて、鳥さんから守るよ、怪我とかしないように気を付けて行くんだよ? いってらっしゃい』
「うん!わかった〜」
と言った傍から「ドテッ」派手に転んでしまったのだ。ん?ちょっと待って、少女が転んだ事も気になるが、今返事をしたよな?
『大丈夫かい?歩ける?」と心の声で伝えようとしてみる』
「うわぁーん!いたいよぉー!あるけない〜……」
どうやら通じる様だ、しかし何故だ?何て考えている場合では無い!倉庫の方に、この畑の持ち主である、お爺さんが居たのだ、私は試しに心の声で「女の子が転んで大変なんです!助けに来てください!」と呼んでみた
「ん?!何処におるんじゃ!」
良かった、通じた様だ……私はもう一度に、「古い案山子の有る、通学路の方です!」
それを聞いたじーじは、慌てた様子で「何処に居るんじゃー!!」と呼びながら、こっちに向かって来る。そうして、少女が、お爺さんに気が付くと甘えた様子で。
「じーじ〜……ころんじゃったよぉ……」
少女を抱きしめてから、ポシェットから消毒液と、絆創膏を取り出して。
「婆さんに言われて、入れておいて良かったわい!ワハハハ!コレで大丈夫じゃ!」
「じーじ!ありがと〜」
「結良?気を付けるんじゃぞ?しかし、さっきの聴こえてきた声は誰やったんじゃろうか?」
結良ちゃん? という少女がお祖父さんに元気よく説明を初めた。
「あのかかしたんがね? いってらっしゃい!っていってくれてね?こけたときにね?らいじょ〜ぶ?っていってくれてね?じーじをよんでくれたの〜」
「そうか、じゃあ案山子さんにお礼を言わないとのう。お前さんが儂を呼んでくれたのか……孫が世話になったな……ありがとう」
「かかしたん、ありがと〜、じゃあ!じーじ、いってくるね?」
「あぁ……気を付けて行っておいで」
少女とじーじが挨拶してきたとしても、以前は気付いてなかったのもあるけど、それからというもの毎朝僕に挨拶をしてきてくれるようになったのだ。
『お〜い、そこの案山子や〜』
そして数日後。いきなり、じーじでは無い声の主が声をかけてきたのだ。
『貴方はいったい誰ですか?』
『儂じゃよ儂』
――お祖父さんがこの間、結良ちゃんのお母さんに、俺俺詐欺とか気を付けてよ?いきなり電話かけてきて、「俺だよ俺」とか言うのが流行ってるらしいから!とか言っていたのを思い出した。これはまさか、俺俺詐欺為らぬ、儂儂詐欺じゃ無かろうか?
『ごめんなさい、貴方の事も分からないし、お金も持ってません……』
私は丁重に、儂儂詐欺の人にお断りを入れた。そして儂儂詐欺の人が、愉快、愉快と楽しそうに、返事をした。
『ほっほっほぉ〜 お前さんは面白い奴よのう。まぁ知らんじゃろうな?別に儂は金など必要無い。しかしお前さんを、人間みたいに見て聞いて喋ったり出来る様にして良かったわい!』
――ん?!人間みたいに、 見て、聞いて、喋れるように!? 儂儂詐欺の人は神様の様な事が出来る存在なのか……人間は凄い進化を遂げているな、昔とは比べ物にならないな。
『儂儂詐欺さん、じゃあ僕の何を奪おうとするんですか!?まさか!命……は無いし、何が必要なんですか?』
『本当にお前さんは面白いのう……何も取らんよ?やって欲しい事はあるが、のう……』
『そうなのですか?それで、やって欲しい事とは?』
『お前さんにやって貰いたい事とはな、ここの畑で作業しよる者が居ろう?その孫娘が将来、我々神々にとって重要な役割を果たす存在になるんじゃよ、その娘を見守って欲しいのじゃ』
『神?!儂儂詐欺の人ではなかったのですか!?は、まず置いておいて。普段通りに立っていれば良いのですね?』
『そうじゃよ〜神なんじゃ!まぁ、そうなのじゃが、半分当たりで、半分不正解じゃな』
私は気持ち、土下座をする様にして。神様に訊ねる
『ははぁー……それで、もう半分はどういう事でしょうか?』
『ちょっ!お前さんや!無理に身体を動かそうとするでない!身体がミシミシいっておる!例え神じゃとて、そこまで敬服せんでも良い!』
『では失礼しまして、このまま聞きます』
『えーと……何処まで話したかの?』
『結良ちゃんを立って見守るだけでは半分正解の答えだと聞いた所までですね』
『全く……お前さんは凄いのか、凄く無いのか分からん奴じゃ。それでの?結良という娘が18になる頃に、お前さんのその身体は、とある事故で無くなる』
『では、それまで見守っていれば良いと?』
『不正解じゃ。その時にお前さんには人間の身体を渡そう……しかも、とびっきりのイケメンじゃ!そして娘が24になった時に、神々との交わりが有るその時まで守ってやるのじゃ……』
そう言うと、神様はまるで存在して居なかったかのように気配が消えた……それからというもの、数年間はただ突っ立って、時に2人と話し、見守るだけの作業が続いた。そして……少女が18歳になる誕生日前日、大型の台風が来ると言う話を、じーじから聞かされた。
「まぁ…案山子なら今まで通り大丈夫じゃろ……」
じーじもだいぶ歳を取り、ヨタヨタしながら今は畑仕事をこなしている。
『だといいですね……コースによっても違うらしいですからね、荒れなきゃいいですが』
そう言う僕は、結良ちゃんが明日には18歳になる事を知っていて、神様から数年前に、死の宣告を受けているも同然である。だから今日、僕はこの身体とはおさらばという事だろう……
「ふむ、そうじゃな?儂はコレが終わったら家に帰るかのう……ほなの?お疲れ様じゃ……案山子」
『あはは……どうぞお気を付けて、お疲れ様でした。(この身体で会話をするのは最後だろう……さようなら)』
そして深夜、低気圧の影響で進路が変わり、この田舎町への直撃コースとなった。その時である……17になった結良ちゃんが家を飛び出して、傘も持たず僕に向かって走ってくるのだ。
「案山子さん!!大丈夫!?返事をして!」
『結良ちゃん……今すぐ家に帰るんだ!ココは危ない!僕なら大丈夫だ!』
「でも!じーじが案山子さんの様子が変だったって、言っていたの!」
--無駄に勘の良い…… じーじだ。素直に帰ってくれそうにないな…… これは。
『僕なら大丈夫だよ?もし結良ちゃんに、もしもの事が有れば、そっちの方が辛い!だから早く!!』
「でも!」
と彼女が言った瞬間!古びた木の電信柱が結良ちゃん目掛けて倒れていくのが見えた。
『危ない!ごめん!!』
「え?!」
そうして僕は動け!!と力を込めて、結良ちゃんを引っこ抜いた足を使い、突き飛ばした!
「きゃぁっ?!」
と悲鳴を上げ、そのまま電信柱が倒れてきた逆の安全な方向へ飛ばされる。そして僕はというと、電信柱に押し潰されて、切れた電線が身体に付き、身体が燃えた……炎に包まれ焼けていく……それに気が付いた結良ちゃん、しかし僕に突き飛ばされた影響で、動けない……
『結良ちゃんのお父さん!助けに来てください!お願いします!!』
そして……何事かと思いつつも、慌てて家から飛び出して来た。僕は、もうこれで大丈夫だと安心した束の間、意識が遠のいていく……
「結良!!大丈夫か!?家に戻るぞ!なんでお前って奴はこんな時に外に出るんだ!!」
お父さんは結良ちゃんを掴み上げ、引っ張って家に戻っていく。しかし結良ちゃんは……
「お父さん!離して!案山子さんが!助けなくっちゃ!」
「案山子?!そんな物、別にいいだろ!?どうせ明日の朝には全部、処分する予定だったんだ!良いから来い!」
お父さんは結良ちゃんをお姫様抱っこで、無理やりにでも連れて行こうとする。
しかし彼女は泣きじゃくりながらも抵抗していて、僕を助けようと、あそこまで泣いてくれる。
こんなに愛される案山子は、僕しか居ないんじゃないかと、自惚れみたいなもの感じた。
そして、この身体での別れの挨拶をした。
『結良ちゃん……今までありがとう。
そしてさっきはごめん、痛かったよね?でも許してね?…… 僕の為にマフラーを編んでくれてありがとう……好きだと言って、ほっぺたにキスをしてくれて、ありがとう…… 思い出がいっぱい出来てとっても幸せだったよ…… また会う日ま……』
そうして僕の意識が燃え尽きた……… 僕の最後の言葉を聞いた彼女は、お父さんに抱き抱えられながらも、僕との別れを、声を張り上げ、嘆き悲しんだ。それから彼女は、僕との別れを経験してからは、畑の案山子に挨拶をする事も無くなった。
それから、何ヶ月かたった日…… 僕は目覚めた。
『お〜案山子、起きたか……』
「神様ですか?お久しぶりですね?」
『うむ、久しいの……10数年ぶりかの?』
「そのくらいですね、僕は人間になったんですかね?」
『そうじゃな、儂の若い頃といい勝負が出来るレベルのイケメンじゃよ』
「そうですか、それで僕はコレからどうすれば?彼女は何処に?」
そう聞くと、神様は丁寧に説明をしてくれた。
まずお前さんは街をぶらぶら歩き、大手の芸能事務所にスカウトされるんじゃ、そうして翌日デビューしてな? テレビに出るんじゃよ。そうすれば後は簡単じゃ、結良は必ずお前さんのファンになり、追っかけになる。後はなる様になるじゃろうて……と、まるで大予言者の様に。因みに僕は今、細い路地に挟まっている状態だ。そこから出て、10m歩いた所で声をかけられた。
「すいません!お兄さんいいですか?」
「なんですか?(神様が言っていた、芸能事務所の人だろうと思った)」
「いやぁーお兄さんめっちゃイケメンさんですね!後ろ姿でもバリバリオーラ出てて、びっくりしたよ〜もしかしてタレントさんだったりする?」
「ありがとうございます。この街に来たばっかりで……」
「お兄ーさん!!お話し中ごめんねー僕こういうものなんだけどねー」
と、いきなり別の男性が話に割り込んで来て、紙を渡してきた。
「おい!ちょっと!先に僕が目を付けたんだけどなー!」
「あんたの所は3流芸能事務所だろ?お兄さんを輝かせれるのはウチの事務所なの!分かる?」
それから口喧嘩を初めだした。
何事かと、周りにだんだん人が集まって来たので、田舎暮らしが長いせいか、どうにも耐えられなくなり僕はその場から逃げ出した。
しばらく走って、人の少なそうな所にに着いて、ベンチで一息を付く。
「ふぅ……都会人間って凄いな、果たして僕はちゃんと生きて行けるだろうか……」
そんな独り言にもならないような、溜息混じりの言葉に、突然!頭上から、気だるそうな女性の声が降ってきた。
「貴方ならどんな所でも生きて行けるわ、どんな国でも……ただし、災いが起こりそうね〜貴方を巡って」
いきなり人が話しかけてきてびっくりした。
「おわっ?!」
「あらあら、ごめんなさい。驚かせちゃったわね?貴方みたいなイケメン君が、ぼ〜っとしてたら悪いお姉さんに食べられちゃうわよ?」
「いえ、大丈夫です……都会って怖い所なんですね、気を付けます」
目を細め、身がキュッとしまると? それを察知した突然独り言に答えた女性が。
「そんなに警戒しないで、別に私は貴方を食べたりしないわ」
安堵のせいか、走ったせいなのかは分からないが、急に「ぐぅ〜」と気の抜ける音がした。人生初の空腹である。
「ふふっ……可愛い。仕事中じゃ無きゃ家に連れて帰りたいわね、ご飯まだなの?そこのカフェでご馳走するわよ? (こんな逸材を見逃すか!)」
そう言われた僕は多分、目をキラキラさせて、興奮したように、お姉さんに近づいたと思う。
「いいんですか!?」
「きゃぁっ?!びっくりした……キュンキュンして、死ぬかと思ったわ!?」
「ごめんなさい!!」
「良いのよ?最初は私が驚かせてしまったし、コレで御相子って事で……ね? じゃあ行きましょうか、後はご馳走する代わりと言っちゃーなんだけど、話したい事が有るのよ……良いかしら?」
「はい!」
それからカフェで、僕はというと……1人で7000円分の食事を身体の中に流し込んだのだ。お姉さんはドン引きである、両方の意味で。
「余程お腹が空いてたのね〜……美味しかったかしら?(この子は欠食児か何かかしら?と言うか、このカフェ代は経費で出るのかしら?財布スッカラカンよ!)」
「はい!とっても美味しかったです!!(満面の笑みで)」
「なら良かったわ……それで本題だけど良いかしら?(文句でも言うもんなら、その綺麗な顔を2、3発殴ってやろうと思ったわ……無理だけど、そんな顔をされたら……ね?)」
「はい!何でしょうか?」
「私はこういう者で、丸太橋 凛と言います。
芸能事務所のスカウトやマネージャー何かもやっているわ…… それで、芸能人とかに興味はあるかしら?」
「いえ、全く……今までは、ずっと立ち仕事だったので……テレビも無い生活をしていたので、芸能人を観た事も無いです」
「え!? それは本当?! 大変な生活をしてきたのね……貴方なら必ず大スターになれるわ!(この子はやっぱり欠食児じゃないの?大食い選手権とかにも出れそうだし……マルチに行けそうね?)」
「じゃあよろしくお願いします!丸太橋さん!」
「え?!ちょっと待って!?そんなに簡単に決めて良いの?!」
「理由としましては、とある占い師(神様)に、この街にくれば大手の芸能事務所がスカウトしに来るだろうって教えてくれたんです。だから丸太橋さん、お願いします!」
「へぇ〜……占いとか好きなんだ〜……分かった!元よりそのつもりだったし、説得する手間を省けたから良かったわ、それでご両親に報告する義務が有るの、連絡は取れるかしら?(この子純粋過ぎるでしょ!と言うか、君なら何処に行ってもスカウトマンの餌食よ!)」
「いいえ、今は家族はいません……1人で生活をしてました。家もお金も何もありません」
「(ちょっと待って!?この子は何?いったいどういう生活してきたのよ!!それでこの純粋さを保てるとか何者よ!逆に怖いわ!)ごめんなさいね?そうとは知らずに……安心して、事務所には衣食住が完備されているから餓死する事は無いわ!」
それから住所不定無職の案山子は大手芸能事務所に居場所を見つけ、新星として翌日にデビューを果たし、日本全国民が案山子の存在を知る事となる。それからというと、案山子の大ブームが起きてから数日後。
「結良〜このイケメン、知ってる?」
「あっ……知らないや、誰なの?」
「その、あっ……って何? まぁいいや、この人はね?白河 案山子って名前なの〜まぁ、名前は良いんだけど……」
--この時思った、友達の華ちゃんが見せてくれた、スマホに映された彼を見た瞬間、誰かに似ていると感じた。数ヶ月前に消えてしまった、私を庇って助けてくれて燃え尽きてしまった彼を!じーじの畑に居て、見守って居てくれた案山子と雰囲が似ていると、この感じは間違いじゃない!そう私は確信して、丁寧に分かりやすく説明してくれてるのに、荒々しく友達の華ちゃんの言葉の骨を折る様に、もう一度…… 訊ねる。
「華ちゃん!この人は案山子さんって言うの!?」
「ちょっと結良!いきなりどうしたの?!」
「ごっ……ごめん」
いきなり声を荒げて、びっくりさせた事を謝ると、華ちゃんは笑顔になり、気にしないで?と言う様に、こう言った。
「びっくりした〜……けど、結良って大人しいイメージだったから、意外だなぁ〜そんなに気に入った?白河 案山子さん」
「いえ、そうじゃないの……実家で暮らしてた時に、この人に雰囲気が物凄く似ている人が居たの、その人も【案山子さん】だったから……気になっちゃって、大声出しちゃった……住んでた所の地名が白河なの、だから余計に反応しちゃって」
「へぇ〜結良も、そんな淡い恋を経験してたんだね?その人イケメンだった?」
「顔か……(へのへのもへじだったからな〜けど、達筆で書かれた物だし、他の案山子よりはイケメンだったかもな〜)うん!周りの人よりはカッコよかったよ」
「じゃあさ、じゃあさ、その人身長高いの?」
「えーと確かお父さん同じくらいだったから、180cmくらいあったと思うよ」
「結良って意外と、理想が高い人?」
「いや?お仕事頑張ってて、一緒に居て楽しい人かな」
なんていう女子トークから、彼を知る事となった。
それからというもの、案山子は芸能人として、活躍の場をだんだんと広げていった……そして、彼女と運命的出会いを果すのだ。それは結良が都会に友達と遊びに来ていた時で、待ち合わせ場所で華ちゃんを待っていると、男3人が取り囲む様にして、1番背の高い人が声をかけてきたのだ。
「ねぇ〜ねぇ〜君、暇?」
「友達を待っていますので、すみません」
「あれぇ〜残念だなぁ〜じゃあ友達来るまで一緒に待っててあげるよ!寂しくないように」
「結構です。私は寂しくありません」
なんていう会話を続けていく内に、相手がヒートアップしてきた様で、語彙も荒々しくなり、腕を掴み上げ引っ張って行こうとする。
「ちょっとお前……人が優しくしてるからって!何もしないと思ったのか!?こっちに来い!」
結良は「嫌です!離して下さい」と言いながらも抵抗虚しく、ずるずると引きずられていく。
そうして偶然、近くのカフェで仕事の打ち合わせをしていた彼は、雨が降りそうな空だと思い、ふと…外を見ると、男3人に連れて行かれている、見知った顔があった……そう、結良ちゃんである。打ち合わせ中にも関わらず「すみません!」と断りを入れて立ち上がり、慌てて外に出た。
「結良ちゃん!!待たせてごめん!」
僕は結良ちゃんに聴こえる様に、大声を張り上げた。小さい頃からずっと知ってる、優しくも懐かしい声で、その声に驚いた男は手を緩めてしまったのだ、その隙に結良は、好きだった……懐かしい声を辿る様に、その方向へと走っていく。
--この声は、案山子さんだ!間違い無い!ちっちゃい頃からずっと聴いていた声だ、優しくも芯のある、好きだった…ずっと大好きで!聴きたかった声だ!
すると急に腕を掴まれた、あの男達だろうと思い、怖くなった……しかし、聞こえてきたのは優しい声だった。
「結良ちゃん……また、会えたね、久しぶりだね?元気だったかい?」
その高身長のイケメンは親しげに、見るもの全て蕩けさせる様な笑みで、私に懐かしい声で話しかけてきたのだ。
「あの……ごめんなさい!貴方みたいなイケメンに知り合いは居ません!!」
「結良ちゃん……ちっちゃい頃はずっと、畑で話してたのに忘れてしまったの!?じーじと一緒にお昼ご飯を食べながら話したりしたのも、マフラーを僕の為に作ってくれて巻いてくれた事、それから……」
--目の前の彼は、私に思い出して貰おうと必死で、懐かしい思い出を絞り出してくれている。あまりにも一生懸命に言うものだから笑えてきちゃうよ……
私は嬉し涙を流しながら笑顔でこう言った。
「久しぶり……案山子さん、前の身体とは大分変わったね?後、こんな道の往来で昔の話を話さないでよ、恥ずかしいから……」
「ごっ……ごめん!でも、思い出してくれたんだね?結良ちゃん」
と会話をしていると、空気の読めない男達が、割り込んで来た。
「お姉さん、みーつけた!今度は逃がさねぇー!てか!待ち合わせの友達って男かよ!」
コレは荒事になりそうな気配を察知したので、僕は結良ちゃんを前に押すような形で、無視をして進んでいく。
しかし男はそれにキレたのか、案山子に蹴りを入れてきた。
「そこの優男よ!無視してんじゃねぇー!!」
「ゔっ」
蹴られた僕は、変装用に目深に被っていた帽子と眼鏡が飛び、前へ「ずてん!」と転んだ。
そうして立ち上がると周りの人達が、ざわめき出す。
「白河 案山子様だわ!」「マジだ! 案山子だ!」
「本当に実在してたのね……」「目が!潰れる!」
結良ちゃんは心配したように「大丈夫?」と声をかけてくれる、そして僕は……冗談っぽくこう言った。
「僕は大丈夫だよ?烏につつかれる方が痛いから……ね?」
アメリカンジョーク為らぬ、案山子ジョークをかましてみた、それを聞いた結良ちゃんは吹き出す様に、お腹を抱えて笑いだした。
「ぷッ……あはは!案山子さん!ダメッ……ツボって、お腹痛い……あはははは!」
その光景を見た男達は、何とも言えない表情をして、静々と人混みから消えていった。それから僕は結良ちゃんと、友達と待ち合わせ場所に行こうとすると、不意に背後から声をかけられた!
「白河さん!打ち合わせをほっぽり出して、何をしているんですか!行きますよ!」
と言われて、「ちょっと待って下さい」と声をかけてからメモ帳の1枚破り、電話番号を書いて、結良ちゃんに「ごめん、僕……行かなきゃ、コレ良かったら……連絡頂戴、じゃあね?」とポケットに入れる
未だにツボって動けない結良ちゃんは、声にならない声で、返事をするのだ。
それから、結良ちゃんはサイン会の時や、会えるイベントには、来てくれる様になった。それからという物、ちょくちょくやり取りをして、僕の恋人になった。それから、1年後…… 熱愛報道などが有り、僕の人気は前に比べて低迷した、そして僕は芸能事務所を辞めて工事現場で働くようになった。
彼女と2人で過ごす為に……それからまた数年後。
--結良ちゃんが24だ……神様からの予言では、神々の事で何かしら彼女が巻き込まれ、使命を果たすのだと言う。
「結良ちゃん、おはよう……そして、誕生日おめでとう!」
「おはよう、案山子君……ありがとう」
「コレ開けて見て?」
「プレゼント!?嬉しい!何かな〜」
と嬉しそうに、小さな小包を丁寧に開けていく、そして小さな箱が出てきて、蓋を開けた瞬間に結良ちゃんにこう言った……
「僕と……結婚して下さい!」
「え?!……うっ……あれ?涙が……止まんない……よ、嬉しい……な、答えは……はい、です!コレからもよろしくお願いします、案山子君」
「こちらこそよろしくお願いします。結良ちゃん」
こうして僕達は夫婦となった。しかし神様からの予言では何かが起こると言っていたが……3日が過ぎ、1週間が流れ、結局何も無い。すると声が聞こえてきた。
『案山子よ、聞こえるか?』
神様だ……悶々と不安な気持ちで過ごして居たので、安堵もあり、恐怖もあった……結良ちゃんに何かがあるのでは無いか?なんていう思いが脳を過る。
「はっ!はい!聞こえてます、神様……お久しぶりです。結良ちゃんに何が起こるんですか!僕には何も出来ないのでしょうか!?手伝えるのなら何だってします!彼女の為なら命なんて惜しくは無いです!」
『案山子よ!落ち着くのじゃ!話を聞け!』
「すみません……」
『して、話そうか……まずお主の知りたがっている、何かについてじゃが、結果から言うとじゃな?もう終わっておる』
「え?!どういう事ですか!?まさか……結良ちゃんは僕と離れた間に!」
『落ち着かんか!人の話を最後まで聞かぬか!戯け者が!!』
「はい……」
『結良はの?小さい頃からお前さんに挨拶をしておった……返事が返って来ぬのに、毎日じゃ。それを見ていた儂は、試しにお前さんへプレゼントをした、見て、聞いて、話せる様にしてみたんじゃよ?それから、お前さんから助けてもらった後から、儂を祀っておる神社に、お願い事をしに来るようになった……その願いとは、お前さんを人間にして下さいと、毎日、毎日、来る日も来る日も……雨が降ろうが、雪が降ろうが熱心にお願いし続けたんじゃよ……そんな儂は、清く純粋な願いを叶えてやらん訳にもいかんじゃろ?』
「そんな事が……ありがとうございます!」
『礼なら結良ちゃんにしておやり?して、神々の話じゃが、儂は1人の少女に構いすぎた……じゃから他の連中に怒られてしもうてのう!おっほっほっほ!で、説明は終わりじゃ!』
「え……それだけ?!怒られただけ!?天変地異が起こるとか、そういうのじゃないんですか!?」
『そっちの方が良かったかのう?なら今から、1つの県が崩壊する様な、大規模災害を起こすかの?』
「しないで下さい!お願いします」
白けたわ〜みたいなテンションで拗ねるように落ち込む神様。
『つまらんのう……ちっとワクワクしとったのに』
「つまらなくて良いです!ワクワクしないで下さい!」
神様はドヤ顔で言っているのが想像が付く様な感じで。
『ジョークじゃよ?イッツ!神ジョークじゃ!』
「洒落になりませんって!!貴方は神ですよ!?」
『すまん、すまん……おっ、そう言えば忘れとったわい……結婚おめでとう……末永くお幸せにな?』
「はい……ありがとうございます。素敵な出会いを頂きまして、本当にありがとうございます!」
そして、神は用が済むやいなや『じゃあの?』と言って気配が消えていく……そうして僕と結良ちゃんは、子宝にも恵まれ、死が2人を別つまで、共に人生を歩んでいった。
お疲れ様でした!1万文字を超えているので、読まれた方は大変だったと思います!本当にお疲れ様でした!少しでも良かったなと思って頂けたなら、ネタを溜め込んで頑張って書いたかいがあります!
ありがとうございました!