中2-夏(4)
「余計なことって…」
「赤の他人に何かしてほしくない!」
「あんなこと打ち明けられて、素通り出来るわけないだろ!」
「僕の気持ちなんて分からないくせに!」
壱真は鬱憤を晴らすかのように喋り始めた。
「僕が気が弱そうだと目をつけて、パシリのように扱う。嫌だと言っているのに、その度にお腹や背中を蹴られる。あいつら、人にバレたくないから、上着で隠れる部分に蹴るんだ。卑怯者。学校でも、あいつらのせいで、みんなから避けられるし。今日も届けにいったら、蹴られなくていいってホッとしたけど、また同じような生活を送ると思うとゾッとした。もうこんな思いをしながら生きたくはない。学校にも行きたくない」
壱真は涙を流していた。
翼はなんて言えばいいのか分からなかった。安易なことを言いたくない。
突然、杜都が壱真に抱き着く。驚きつつも安心したのか、壱真は声を出して、泣き始めた。
翼は何か言おうとするも、さくらと諸星に目で止められた。
何分か経った頃、壱真は泣き終わった。
「聞いてもらって、ありがとうございます」
「おぉ、何か行動するのか」
「いえ…出来れば、今話したことを忘れてもらっていいですか」
翼が何を言おうとするも、壱真が遮る。
「赤の他人であるみなさんを巻き込みたくないんです。僕一人で行動しますので…」
「ここまで来たら…」
「お願いします、忘れてください。あの…」
さくらの方を向く。
「傷を手当てしてくださってありがとうございます」
今度は杜都の方を向く。
「クッキー美味しかったです。それでは、僕は帰ります」
「ちょっと待って…」
「お邪魔しました」
壱真は帰っていった。
「何か行動するって…」
「僕たちを巻き込みたくないんだよ」
「気持ちは分かるけど、納得いかねぇ…」
「引き返す?」
「引き返せねえよ」
「同意だね」
「杜都もかっ」
「話しを聞いたからには、引き返せないよ」
翼と杜都はがっちり手を握った。
「どうする?」
「いじめている3年生にやめさせるように言う」
「どうやって?」
「マンションに直接行くか、内藤君の同級生から情報を聞き出すか」
「その役目なら、俺がやろうか」
今まで聞き役に徹していた諸星が口を開いた。
「さっきのマンションに戻って、直接聞いてくる」
「だったら、俺も…」
「これは俺一人で行くよ」
翼は心配した。一人では余計に危ないのでは。
「心配しなくていいよ。こういうのには慣れているし」
慣れているというのはどういう意味なのか。
「連絡先交換した方がいいよね」
諸星は、杜都、翼、さくらとメルアドを交換したあと、先ほどのマンションに向かった。
「諸星さんって、謎だよな…」
「短時間しか一緒にいなかったからね。長く接していれば、分かってくるんじゃない」
「翼ちゃんはどうするの?」
「分からない状態」
「何もしないの?」
「そういうわけじゃないけど…俺、あいつと友達になりたいんだ」
翼は今思っていることを言った。
「学校では避けられると言っていただろ。それを聞いて、そばにいたいなぁと。一人にさせたくない」
「翼君らしいよ」
「せめて、あいつのメルアドが知りたい。聞いとけばよかった」
「僕知ってるよ」
杜都は携帯電話を出した。
「いつ?」
「さっき、メールを見せてもらったとき」
「勝手に…」
「念のためだよ」
翼は呆れ顔で杜都を見た。
「送信してみる?」
「本人の許可がないのにな…非常事態になったら送ろう」
「そうだね」
「今は諸星君の情報を待ちましょ」
諸星からの連絡が来るまで、次に何をすればいいか会議をしていた。
つい、手を貸してしまった…
やらんと決めていたのに…
若さ故の行動を抑えないと…
あの頃の過ちを繰り返す…
あの中学生二人にも教えた方がいいのか…




