中2-夏(3)
「諸星君って、同じ大学なんだ」
「学年は俺の方が一つ下ですけど」
「私は、文学部だけど、諸星君は?」
「法学部です」
「弁護士とかになりたいとか」
「それは全くないです」
「ないんだ」
「ただ、学んだことが生かせる職業に就きたいとは考えてます」
さくらが壱真を手当てしながら、諸星にあれこれ質問していた。翼は、横に座っている杜都をチラチラ見ている。
「…チラチラ見てきて、気持ち悪いよ。言いたいことがあるならはっきり言えば?」
「何で、さくらちゃん家に?」
「さくらさんに呼ばれたんだよ。狭くはないマンションに住んでいるから、僕が増えても平気だって」
「断れよ」
「熱心に誘ってくるから、断れなかったんだ。クッキー持ってきたんだけど食べる?」
「話しをそらすなよ」
着いたとき、翼は杜都がいることに驚き、少しさくらを睨んだ。さくらは、そんなことお構いなしに出迎える。翼はその時から、むかむかしていた。
「…これで手当ては終わり」
「…ありがとうございます」
翼は気になっていたことを聞いた。
「あのマンションの6階で何をしてたんだ?」
いきなり聞く翼に、杜都たちは呆れ顔。
「そんなド直球に聞くか」
「聞かれる側も困るよねぇ」
「僕が持ってきたクッキーを食べながら、ゆっくり話そうよ」
「…お気遣いありがとうございます」
少々むくれる翼。
「早く話しを聞いた方がいいと思うけど…」
「無理やり話しを聞くのもどうかと思うけど」
「むぅ…」
翼の意見を否定する杜都。
「このクッキー、美味しい」
「東京にいる親戚が送ってくれたものです」
「有名なメーカーのか…」
和気あいあいとクッキーを食べる一同。そんな雰囲気に緊張がほぐれたのか、壱真が6階での出来事を話す。
「皆さんは、口が堅いですか?」
「翼ちゃん以外は堅いと思う」
「翼君は口が軽いからね」
「俺って意外に口が堅いんだぞ」
「…みんな口が堅いみたいです」
壱真は携帯電話を出し、受信したメールを見せた。受信日は今日だ。
『○○のお好み焼きパン、13時までによろしく』
「これは…」
「頼まれた商品を、13時までに、メールの送り主に届けることになってまして…他にも」
同様のメールが30件ぐらいあった。中には、4月に万引きした諸星がアルバイトをしている店のもあった。
「一週間に一度は送られてきます」
「何で、内藤君にそんなメールが届くんだ?」
「…それは…僕が手ごろで歯向かいそうにないからだと…」
「これって、どう購入してるの?」
「お金を払って、さっきのマンションの届ける。ただ、メールの送り主はいないですが…」
「いないのか…」
「ただ、僕の同級生が待っていて、その人に渡すようになってまして…」
「中には払えないようなものもあるけど…」
「…その時は…」
「万引きしてるんだろ」
杜都が遮るように行った。
「万引きって、あの4月での店のように」
「…そうです」
「何で…」
「…万引きしても、購入するように言われているので…」
杜都と翼は顔を見合わせた。
「4月のときは、失敗したけど、その場合は…」
「…恥ずかしいですが…」
壱真が上着をめくった。
腹や背中には青あざやタバコの跡が複数あった。
言葉が出ない杜都と翼。
今まで聞き役になっていたさくらと諸星が口を開く。
「いじめか…酷いな…」
「担任の先生には言った?」
「言いましだけど、いじめられているのは気のせいだと言われました」
「あざとか見せた?」
「見せても、同じことを…」
翼は怒りを感じた。
「アホかよっ。いじめに決まっているだろ」
「メールの送り主は?」
「3年の先輩です」
「後輩にこんなことをして恥ずかしくないのかよっ」
「恥ずかしくないからやってるんだろ」
「こうなったら、俺が担任の先生に、内藤君がいじめられていることを…」
「余計なことをしないでください!」
壱真が大声を上げた。




