中2-春(2)
思えば、あのときも杜都に助けてもらったな…
「翼くんは無関係です」
杜都が冷静に言った。
「たまたまここを通って、たまたまあの少年にぶつかって倒れて、そのせいで、翼君が腕時計を持っているというだけです」
「しかし…」
「あと、今はこの場所から離れた方がいいと思います」
翼たちの周囲には、何事かと人が集まっていた。
「…俺に店に行こう…」
おっさんは仕方がないという顔で言った。
顔の怖いおっさんは、ディスカウントショップの店長。全国的に有名ではないが、仙田に住んでいれば、一度は聞いたことがある店だ。
怖い顔で店長は勤まるんだろうか。そういや、あのコンビニの店長の顔もどちらかというと、気が強そうだったな。今はあのコンビニに行ってないから知らないけど。
翼は余計なことを考えつつ、店長と杜都の話しを聞いていた。
「バイト店員から、怪しい動きをしている男子が入ると報告があって、確認してみたら、腕時計を手に店からそのまま出ようとしていた」
「それで急いであの少年を追いかけたんですね」
「俺と報告してきたバイト店員の二人で追いかけたんだが、いつの間にかはぐれたな。諸星は戻ってきてるか?」
近くにいたバイト店員に聞いたが、帰ってきてないようだ。
「まぁ、諸星もそのうち戻ってくるだろう」
「俺たちは帰っていいのか…」
翼は小声で杜都に聞いた。
「君とさっきの万引き少年が関係ないことが証明されたらね」
「どう証明するんだよ」
「少年本人が無関係だといえばいいんだよ」
「…関係ありと言ったら…」
「共犯扱いされ、両親や学校、警察に連絡されるかも」
「冤罪だぞ」
「自分の運命を恨むしかない」
「…他人事みたいに…」
「俺も話ししたいことがあるがいいか?」
ただでさえ顔の怖い店長が、更に怖い顔で翼を見ている。
「僕、万引きした少年と関係ないですからね。たまたま、あの場所にいただけで…」
「無関係だという証拠はあるのか」
「…ありません」
杜都の言ってた通り、万引き少年の証言しかないのか。そもそも、万引き少年はどこへ逃げたのか。自ら自首はしないのか。
翼は心の中でモヤモヤしていた。
そこへタイミング良くアルバイト定員が店長に声をかけた。
「店長、ヒデさんが戻ってきました」
色黒の青年が店長に近づいた。
「店長、ただいま戻りました」
「どこへ行ってたんだ」
「万引きした少年を捕まえに追ってました。今、連れてきます」
「捕まえたのか!?」
「はい」
急な展開に翼だけでなく、杜都も驚いた。




