中2-夏(7)
壱真から「報告したい」と連絡があったのは、9月中旬。先輩の家に乗り込んだ日から、壱か月が経った頃だ。日程を考えたものの、大学の授業が再開したさくらや諸星とは予定が合わず。杜都の家に、翼、壱真が来ることになった。
互いに近況報告をしてから、壱真が本題に入る。
「学校が今回の件で色々動いてくれまして…」
「そりゃ、証拠の動画もあるからな。これで動いてくれなかったら、俺が乗り込んで教師を殴っているところだ」
「殴るのはいけないからね…。色々動いたっていうけど、何をしたの?」
「学校側が独自に事情聴取をしまして…」
「ほう」
「僕をいじめないように注意したんです」
「…それだけ」
「あとは、謝らせたり…」
「謝るのは当たり前だろ」
翼は憤ってきた。
「つか、学校からじゃなく、自分から謝れっつーの」
「内藤君は、納得してるの?」
杜都が壱真に聞いた。
「…納得はしてないです。いじめている側は、『謝ったんだからこれまでのことは許してあげろ』というのが見えてましたし…学校側は『謝ったんだから、この件は終わり』と…」
「納得いかんわ、そんなもん」
「僕自身、謝ったからって、許す気にはなれません。あれだけのことをしておいて、謝ったから許してというのは、被害者側に寄り添ってないと思いまして」
「結局、加害者側の言い分だからね」
杜都が半ば呆れたように言った。
「ただ、僕をいじめていた同級生とは、来年は別のクラスにすると言ってました」
「当然だろ。そんなもん」
「あと、今回の件で、先輩にいじめられて人たちが名乗り出てきて、学校側もいじめについて何か対策を立てるようです。それに…」
「それに…」
「僕、みんなから避けられていると言ってたじゃないですか。いじめが明るみになってから、声をかけられるようになりまして…」
良かったな、と言おうとして、翼は口をふさいだ。いじめられることがなくなってから、声をかけるなんて、都合が良すぎじゃねえか。
「内藤君はそれでいいの?」
杜都も同じ考えなのか、壱真に聞いた。
「いいわけじゃないですけど、何も変わらないよりマシです」
「まぁ、内藤君がいいというのなら…」
「もし、何かあったら、連絡しろよ」
「翼君って、内藤君の連絡先知ってるんだっけ?」
「知らん。だから、交換するの」
そのあとは、ゲームをしながら、諸星の話題になった。
「何者なんだろうね、諸星さんって?」
「ただの大学生じゃないですよね?」
「翼君、『何者ですか?』ってメールしてみたら」
「杜都、それは失礼だろ」
「気になるくせに」
「…送るか?」
「送りましょう」
「全員、賛成みたいだね」
翼は、諸星に早速メールを送った。
『何者ですか?』
バイト終わりに携帯電話を確認すると、メールが1件届いていた。
何者とは何なのか。
自分自身分かってない。
普通なら出来ないことを経験したことは分かる。
また、人と繋がりを持ってしまった。現に、メールが来てる。
あまり人と関わりを持ちたくないが、今回はしょうがない。
ほっとけるほど、俺も冷たくはない。
ただ、これ以上は関わりたくない…
急いで返信をして携帯電話をしまった。




