[調]01/3X:非日常ルートの幕開け
かなり久しぶりに異世界転生・転移メインじゃない話を書いてみます。
途中で更新ガス欠すると思いますが、よろしければ暇つぶしにどうぞ。
期待はさせられませんが、40話以内で完結するように頑張ってみます…
…いきなり目の前に異形の化け物が現れ、腰を抜かす普代雪斗。
このままバケモノの餌食になるのかと思えば…なんと異形のバケモノは
見た目とは裏腹に友好的に話しかけてくる。見た目が人型のバッタみたいなので
物凄く賛否両論ありそうだ。ユキトは虫が苦手では無いが…これは流石に…
まぁ腰を抜かしてるので何を今更という感じだが。
「おー、やっぱり"契約者"だったか~…! そんじゃ、えーと…?」
『ユキト、だけど…』
「おっ、自己紹介もしてくれんのか! お前、人間にしては馬k…良いヤツだな。
ひっひっひ♪ オレ、お前のこと気に入ったんで契約するわ!」
『は…?』
会話が途切れるや否や、バケモノはスマホに吸い込まれていく。
すると削除しようとしたはずのスマホアプリ「AR異界存在」が起動し、
テキストチャットメインのSNS画面が出たかと思えば
「オレ…コホン! 我が名は蝗風魔ファズゥズ…汝の定命の一時…
我は剣となり、盾となろう…んじゃまー、短い間だろうけどヨロシクなッ!」
と、先ほどのバケモノの顔がアイコンで現れ、メッセージを残したのだ。
『何が…どうなって…』
言いつつも習慣なのかメッセージをキチンと「既読」してアプリを終了させる。
終了する少し前のことだが、アプリには「魔力337獲得…現在魔力値337」と
これまたソーシャルゲームなんかで見るポイント的な何かを獲得した云々らしい
通知がポンと出たが、少しばかり目の焦点が合ってない彼は気づかない。
ユキトはポケットに常に忍ばせているガムに手を伸ばし、普段より多く食べた。
『………』
しばらくガムを噛んでいたが、スマホの時計を見れば
そろそろ遅刻が迫ろうとしていたので、ひとまずユキトは
学校への道を急ぐことにした。
>>>
昼休み。ユキトは学生食堂の隅っこで今朝のアプリを起動しようとするのだが、
『何で…?』
起動するには起動するのだが、今朝の「魔力」通知画面が出て
直ぐに終了してしまうのだ。
『………ぬぁぁぁッ……!』
何度タップしようが結果は変わらない。
「あれ…ユキトくん…? 君もそのアプリ入ってたんだ?」
『!?』
ビクリとして声のする方を見れば、そこに居たのは小学校から同級生という
ニアピン幼馴染…とでも言えれば面白かったのかもしれないが、
残念だがずっと同級生だった以外で大して接点の無い女子、
平良依子とその友人たちが彼女合わせて三名居た。
「おや? ユキトは337ポイント?」
「そうなの園田? え、ちょ、普代くん? どうやってポイント貯めたの?」
そう切り出してきたのはヨリコとマジ幼馴染関係らしい、ヨリコを除いた
残り二人の園田真治と三部菜々美である。
『え…あ…kれは…』
まさか今朝の状況をソックリそのままという訳にもいかず、
どうしたものかと懊悩するユキト。
「あー…これ……そっか…ユキトくんは今朝起動したんだね…」
『?!』
思わぬ援護射撃はヨリコからだった。
「え?! どうやって起動したの!」
「折角だから教えてくれヨリコ」
「あー…うーん…これ…キッカケは知らないんだけど、ちゃんと起動するのって
何かオートなんだよね…設定も出来ないから変なタイミングで起動すると
真面目に困る系」
「「まじか」」
シンジとナナミのハモりは妙に堂に入ったモノだった。さすがマジ幼馴染…?
『あ…うん…俺も…今朝…そんな感じで…』
「ふーん…? あー…やっぱダメ。私は全然…この魔力? ポイント0通知だけ」
「自分からは起動できないって…やっぱこれスパムとかそういうヤツか?」
「そういうワケでもないみたいなんだけど…ただ…これ、タップすると
さっきナナミがやったみたいに通知出て終わるだけで…色々やっても
設定どころか削除も出来なくてね…」
「いや、やっぱフツーにスパムとかそういうのだろコレ?
…ってことは店とかに行って相談するしか無いのか…?」
「それも…なんだけどね……ちょっと耳貸して…」
ユキトも手招きされたので彼女たちの輪に入る。
「あのね…ユキトくんはどうなのか知らないけど…私が気づいたのは
半月くらい前のアプリ一括ダウンロードしたすぐ後で…」
最初は彼女もシンジやナナミみたいな通知だけで当然設定どころか削除も不可で
仕方なくスマホショップに行ったのだが…かなり不気味なことに
ショップ店員にはそのアプリが"見えていない"ようなのだ。
「は…?!」
「キモっ…?!」
『嘘だろ…?』
居ても経っても居られず、SNSで話題を探してみれば…
やはり似たような状況の人が居てどうしたものかと話し合うも
堂々巡りの平行線三昧という始末。しかしながらそういう話は
テレビ番組などでは全く話題に上がらず、ますます不気味・不可解さを
不特定のアプリ持ちの人々に深めるばかりなのだ。
「それでさ…ユキトくん………したんでしょ? 契約」
『………ああ』
「何の話だ?」
「なになにー?」
そろそろ昼休憩の時間も終わりそうだったので「続きは放課後…」
という事になった。
>>>
放課後、夕日が視界に眩しくチラつくのに辟易しつつも
ユキト、ヨリコ、シンジ、ナナミの四人はこの時間あまり人気の無い
ガード下に集まった。
「………あっ!」
スマホを見つめていたヨリコが叫ぶので見てみたら…例の「AR異界存在」が
今朝のようにいきなり起動した。ユキトも急いでスマホを確認すると、
やはり彼の方も同じことが起こった。
「や~っと、出られたー☆」
「お…イケそう…って出てるじゃんよ♪」
「「!?」」
ヨリコのスマホからは十人中十人が口を揃えて「…妖精?」と言うであろう
謎の存在が出現し、ユキトのスマホからは今朝名乗ったファズゥズ…
軍隊バッタの悪魔とでも言えばいい感じの異形が現れる。
「お…? おー…妖魔エルシーの…? 元気ィ?」
「おー! 艦隊バッタさんじゃないのー☆ もちもち元気元気ー☆」
体格差は人間と猫レベルだが器用に握手する妖精とファズゥズ。
「およよ? 出やすいと思ったら"契約者"二人に候補二人じゃないのー☆」
「ニャルホド道理で出やすいと思ったらなぁ…そーかそーか♪」
「「………」」
シンジとナナミは開いた口が塞がらない。
『……夢じゃなかったのか』
「…えっと…なんでまた急に…?」
「「宜しければ教えて差し上げようか? 我が契約者よ?」」
『「…ッ!?」』
声色は兎も角、昼のシンジ&ナナミよりもビシリとハモった異形たち。
「なに…なに…?!」
「え、ちょ…しゃべ…?!」
「バッタさんバッタさん?」
「あん? どうした妖魔の?」
「折角だから改めて自己紹介ってどーよ☆?」
「そうだな。見た感じこいつら"クラン"…いや"コミュニティ"っぽいし」
何か話し合ったかと思ったら、四人の前に綺麗に並ぶファズゥズと妖精。
「では改めて…アタシは妖魔エルシー! 見たまんまの妖精だっ☆!
…正式にはダーナ族なんだけども、まー細かいことはとりま置いといて☆」
「んじゃー次オレな……我が名は蝗風魔ファズゥズ…お前達の言うところの
悪魔の一種である…正式には艦隊飛蝗族だが…
今はそこは重要じゃねーから頭の隅っこにでも置いとけや♪」
『「「「………」」」』
反応に困った四人はフリーズしている。
「…ねーバッタさーん…今回の業魔ぞk…おっとっと…ニンゲン族さー…
ちょーっと反応薄くなーい☆?」
「あーん…? ニンゲンの反応なんて古今東西こんなもんだろ?
契約者と候補って言っても二人で各一体とゼロ二人でハイパー初心者くせぇし?」
「えーでもヨリコはアタシと契約したとき結構テンションぴょんアゲだったよ?」
「…ちょ!?」
他の三人の何ともいえない視線に赤面して顔を逸らすヨリコ。
「その辺はユキトの野郎はドライっつかバカ礼儀正しかったぜ?
オレを初見で逃げ出さなかったのは久しぶりだったしな?」
「「「まじか」」」
『……驚く余裕も無かったんだよ』
今度は尊敬交じりの視線に居たたまれなくなったユキトが顔を逸らす。
何気にファズゥズが「腰を抜かした」部分を省いていたのが
功を奏していたのかは定かではない。
「ふーん…んじゃさ、説明はどっちがやる?」
「魔力値が多いほうだな…ほんじゃーユキト、ほれ、その電脳魔導器で
ポチポチと魔力値出してくれよ。おら、右下のトコに出てンだろ?
そこをポチッとやれポチッと」
「ヨリコも早く早くー☆」
促されるがままにヨリコとユキトはアプリを操作する。
すると互いのスマホからAR表示で魔力値が表示された。
「ごほぇ!? 337だとぉ?! ヨリコぉ! アタシらの魔力値56って
高い方なんじゃなかったのー!?」
「えと…ポイント付与って一桁台が普通っぽいからてっきり…」
「当たり前だろ妖魔の…オレとお前の位階差を考えろ位階差を…」
「くふぅ…この格差…!! 現世でも適用かよぉ! ちくそーめ!!」
「はいはい…んじゃーさっきの理由説明してやっから。あーんと…?
そもそもオレらの行動に制限があるのはなー…?」
ファズゥズいわく、アプリ「AR異界存在」の契約者としての資格が
無い者には彼らの存在を認識するための魔力がゼロどころかマイナスであるため、
主に…というか基本的に周辺に無資格者が多数で有資格者が少数である場合…
ほとんどの異形…改め異界存在達は出現するだけでもかなりの負担があるそうだ。
「基本的に…ってことは普段の生活では周りに無資格者だらけなら…」
『いきなり起動して心臓に悪いような展開は無いって事か…』
胸を撫で下ろすユキトとヨリコに対して、なんだか不機嫌なエルシー。
「もー! それはそれで危ないんだかんね!?」
「まーそうだな。オレらの周辺が今すぐ顕現出来ない状況としても…
それがオレらに敵対的な資格者の周りがそうじゃなかったら…
お前ら、魔力ゼロだろうが容赦なく狩られて…食われンぞ?」
『「「「…は?」」」』
「だぁー! もーッ! 敵が狙撃特化とかだったら下手すりゃ死んだことさえ
分からないっていうコトになっちゃうんだぞー!! 契約者が死んだら!!
アタシらだって現世から吹っ飛ばされて無事じゃ済まなくなんだかんね!?
いちれんたくしょーなんだからね!!? あーゆーおーけい!?」
憤慨するエルシーを前にしても、現代日本人なユキトたちには実感が沸かない。
『そうは言われても…』
「オイオイ勘弁してくれやユキト…せっかくの現世に来て一週間も待たずに
現世から吹っ飛ばされたら真面目にオレらも大怪我じゃ済まねーんだぞ…」
他にも「一番最初の契約は異界存在側にも色々メリットがある」とか
「当然初回特典もこれから色々出るはず」などと言ってくるのだが…
いかんせんこんな状況が生まれて初めてな四人なので要領もヘッタクレもない。
なので段々エルシーやファズゥズも怒りが見え隠れしてきた………その時だ。
「…魔力反応からしてまさかと思って来てみれば…妖魔に悪魔が…!!」
「オーウ…! 契約者は四人も居るネー!」
「ランディ…そのワザとらしい喋り方やめてもらえませんか?
僕まで似たような扱いをされそうなんで迷惑です」
「そうですそうです…! 何というか…ニセ外国人的な鬱陶しさです!
そうですよねユーゼス様!!?」
「いや、ユキエちゃん…俺ホンモノの外国人なんだけど…」
「ハーフのわたくしよりも流暢な段階で良くて外国人タレントですわ…!
…ってそんなことよりも!! みなさん! この場に在るべき秩序を!!」
「任せてくれテミス…僕が壁になるよ」
「いい加減彼氏面するのやめてくださいます? すごくウザったいですわ」
「………やっぱりもう終わりなのかい?」
「あの、ユーゼス様? 今はそういう場合じゃないのですよ…?」
『「「「っ!?」」」』
多くの声がしたのでその方を見れば…そこにはユキト達と同じ…
しかしながら彼らよりも個性的であろう契約者らしき面子が四人立っていた。
「くッはー!? ウワサをすればカゲがががががーッ!?!」
「おいユキト! 構えろ!! 雰囲気が敵対的くせぇ契約者どもだ!!」
「か、構えろって…何を…?!」
「んなもん手に持ってる電脳魔導器に決まってんだろ!!」
『……………いきなりなのでこっちもそうしますが…皆さん、どちら様ですか?』
今朝から色々ありすぎてもう半ば投げやりな感じのユキトの言葉に
個性的面子…二人はどう見ても金髪な白人系…話からするにどちらもハーフ、
この中で一番普通っぽい女子高生…服装は三人とも特注の学生服で
最後の一人…ニセ外国人だ外国人タレントがどうのと言われていた方は…
ビシッとしてるが紺色スーツのアフリカ系…アメリカ人? っぽい
体格もガッチリ2mは有りそうな背丈の男が各々スマホを構えるものの
ユキトの見ようによっては肝が据わった態度にそれ以上の動きを見せない。
「…あなた方に名乗る名前…等と言いたい所ですが…可能性を踏まえましょう…
わたくしはテミス…テミス・六法・アークランド…
"天神クラン"序列第八位のテミス・六法・アークランドですわ!!」
『「「「(何で二回もフルネームを言ったんだろう)………」」」』
「「「(何で二回フルネームを言う必要があったんだろう)………」」」
「………」
温いような、寒いような…だがふんわりした風が八人の髪の毛を揺らしていく。
「………ぐ…ぐぬぬ…!!」
『(リアルで素っぽく"ぐぬぬ"って言う人は初めて見た…)…わざわざどうも。
あー、僕も貴方方と同じらしい契約者の者です』
「んなッ!? ちょっとあなた!! わたくしがちゃんと名乗ったのに…!
名乗り返さないなんて…何て無秩序なッ!! 神よ! 我が従者をここに!!
顕現せよッ! 天の代行者ルシトローネ!!」
テミスと名乗った金髪少女が声明と共にスマホを掲げると、
そこから幾重にも連なった聖なる紋章が現れ、そこから眩しさは殆ど無いのに
神秘的な輝きが発現し、輝きの中から…一部機械化した女の天使とでも言えばいい
風貌の異界存在が朝の女児向けアニメみたいな視覚効果で現れる。
『終盤で何だか残念感がッ!?』
「んなぁッ!? あ、貴方今なんて事をッ!! こんなに素敵なのに!!」
「いやぁーだってよぅテミスー…前半からはこう良い意味でオーマイガーな
エフェクトだと思ったら最後に思いっきり朝八時の女児向けアニメの…」
「そこが一番すごくカッコいいんじゃないですの?!!」
「いやしかしですねテミs」
「黙りなさいユーゼス吉岡ッ!」
「ふうううわあああ苗字は出さないでくださいよおおおおおおおお!!!?
超絶売れてなさそうなショウワの芸人みたいに聞こえますからあああああ?!?」
そのまま夫婦漫才じみた口論を始めてしまう金髪ハーフ二人。
一番普通なユキエとその点では一番それっぽいランディがそれぞれ
「あちゃー…」と額に手を当てていた。ちなみに特に一番困惑しているのは
テミスに召喚された異界存在ルシトローネである。
「なんだぁー…これ…?」
「最近のニンゲンって…みんなこんな感じー☆?」
「なぁナナミ…」
「なに? どしたのシンジ?」
「今のうちに場所変えて…逃げても良いんじゃないか?」
「どーするヨリコ?」
「うーん…何だかこの人たち…悪い人ではなさそうなのよね…」
『少なくとも俺らよりマトモでも無さそうだけどな』
「聞こえましたわよ!?」「キミに言われたくは無いですよ!!」
『あっ…チッ…無視してシンジの言う通りにすれば良かった』
「「What did you just say?!(何だとゴルァ!?)」」
「おー、何だか昔の契約者のくいーんずいんぐりっしゅっぽいー☆?」
「いや、ありゃゴールドラッシュ時代の合衆国くせぇぞ」
この後小一時間ほど不毛なディベートがあったが割愛する。
[調]01/3X<END>