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はじめてのドライブ

作者: 安達邦夫

2.

ぼくらは、埼玉県の北のはずれにある上里サービスエリアで、食事をした。僕は名物だという焼そばとおにぎりを食べ、彼女は売店のサンドイッチと小さなワインをボトルで購入した。

彼女は、車で食べると言うので、戻ってきたのだが……。

そいつは、ボサボサの髪の毛で、片方が斜視だった。片足を引きずるようにして歩いている。

身なりはそこそこ小綺麗にしてはいるが、眼に表情がなかった。

しかし、それ以上にまるで暗黒のオーラを身に纏っているように、なにかぞっとするものを発散させていた。

男が言った。「さっさと車に乗れ!」手には鈍色の拳銃が握られ、彼女の脇腹に押し付けられている。

その時、彼女が小さく何か言ったようだったが、聞き取れない。

季節には合わない汗が、じっとりと僕の全身に滲んでいた。

彼女が大人しく助手席に乗ったので、僕の選択肢も限られたものとなった。力では敵いそうもない。しかし、大事な恋人を見殺しには出来ない。

男が言った。

「大人しく従えば、途中で解放するから、心配するな」言葉は優しいが、信用できる筈かない。斜視の男は、ぼくたちを拳銃で脅している。拳銃が、本物かどうかはわからない。だが、彼女が乱暴されたら立ち向かう用意はある。

窮鼠猫を噛むと言うではないか。だが、僕は、気持ち悪い汗が脇腹や背中にも流れるのを感じていた。

ゆっくりと僕は、カローラを発進させた。

警察官が近くにいることを知りながら。


つづく



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