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第4話:初めてのイチャモン

どもどもべべでございます!

やっぱり転生チートなしってのはなろうでも結構冒険なのかしら?

いや、僕の表現不足ですね(笑)

というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~

 

 というわけで、一行は冒険者ギルドに足を踏み入れる事となった。

 雑多な雰囲気、汗と酒気の混じる空気。卑猥な雑談に響く大笑。

 『めがね』がここに来たのは二度目だが、お世辞にも良い所だとは言えないのが悲しい所だ。


「えっと、まずは受付でパーティの登録をするんでしたっけ~?」

「『けもなー』、私に聞かないでちょうだいよ」

「え~? 『ばくし』ちゃん知らないんですか~?」

「ちょっ、ドサクサに紛れて尻尾をつかもうとするんじゃないわよ!」


 見てくれだけは良い2人がくっつきあって和気あいあいとしている光景に、周囲から口笛混じりの眼福宣言が響く。

 とはいえ、ここは犯罪ご法度の冒険者ギルド。目の保養はすれど、手を出してくるような間抜けはいない。

 ある意味、リネンスタの町で最も治安が良いのはここなのかもしれない。


「スモーキンさんが言ってたでしょ? 受付でパーティメンバーを登録して、ランクを決めてから初めて依頼をうけられるんですよ」

「…………(うんうん)」


 既に『めがね』は、この2人よりも自分がしっかりしなくてはという気概が芽生えている。パーティの実権を握るのは己であるという変なプレッシャーを感じながら、胃の辺りを抑えつつ受付まで足を運んだ。


「んお? おぃおぃ、えれぇベッピンさんが来てるじゃねぇか! おい『あべる』、一緒に口説いてみねぇか!」

「勘弁してくれ『のれご』。お前みたいな強面が隣にいたんじゃ、成功するナンパも逃しちまわぁ」

「ガハハハハ! 違ぇねぇ!」


 受付に行くまでにも、酔ったおっさん達が『けもなー』を見て鼻下を伸ばしている。

 中には先程のように、臆面もなく呵々大笑する剛の者もいる始末だ。


「……『けもなー』さん、大丈夫ですか?」

「ふふふ~、ご心配なく~。私は人間に興味ないので~」

「それはそれでどうかと思いますよ!?」

「あぁ、でも! 『ばくし』ちゃんのモフモフや、『あらくれ』さんのオーガ筋肉になら抱かれてもいい! あ、あ、違うのよツノちゃん、これは浮気じゃなくて純粋な恋慕なのよ!」

「うわぁ、スイッチが入った瞬間みんなの視線が凄い勢いでソレていく!? け、結果オーライだぁ!」


 入って早々に、「金髪のグラマラス美女」から「ヤベェやつ」にクラスチェンジした『けもなー』をよこしまな視線で見る者はもういない。

 彼女は、既にワンステップ上の存在となったのだ。


「と、とにかく、受付を済ませてしまわないと……」


 これ以上ここに彼女を放置していたら、どんなレッテルに成長進化するのかわからなくなって恐怖を覚えた『めがね』。早いとこおさらばするが吉とばかりに受付に視線を向ける。


「や~、今朝の少年ですねぇ? 早速お仲間と一緒とは幸先が良いじゃないですか~。なんかあれだけど」


 そこには、銅貨30枚くらいの笑顔を浮かべて手を振るお姉さんがいた。

 今朝方、『めがね』を担当していたあのお姉さんだ。少々小生意気な雰囲気で、キツネ目なのが大変愛らしい。


「こ、こんにちはっ! あの、パーティの登録を……」

「はいは~い。でしたら全員の冒険者カードを提示してくださいなん?」


 4人がカードを受付に提出していく。『めがね』、『ばくし』、『けもなー』ときて、最後に『あらくれ』がカードをつまんで取り出した時だ。



「おい! ちょっと待てよデカブツ!」



 不意に、背後から声がかかる。

 呼ばれ慣れていたのだろう。真っ先に反応した『あらくれ』が振り返ると、その先には3人の男性がいた。


「そうだ、お前に用があるのさ。デカブツ」


 先頭を歩いてくる男性が、ニヤリと笑う。見てくれこそワイルドで凛々しいが、その笑顔を見てしまうとなんか一歩引いてしまうような、そんな空気を纏わせていた。

 男性の後ろにいる2名もまた、ニヤニヤしながらついてくる。その様はまさに、「俺様と2人の腰巾着」というタイトルがピッタリの一枚絵のようであった。


「…………」

「武器屋の前で聞いてたぜ。お前、「ガード」と「バーバリアン」なんだってな」


 その言葉に、周囲から「へぇ……」と軽いどよめきが起こる。

 一体それが何を意味するのかがわかっていない3人を置いて、話は勝手に進んでいく。


「俺らはEランクの、「赤の戦技」ってぇパーティだ。デカブツよ、単刀直入に言うぜ? そいつら切って俺らの所に来ちゃくんねぇか。分前は弾むぜ?」

「はぁ!? アンタら何言ってるわけ!?」

「ちょぉっちょちょちょ、『ばくし』さんステイ!?」


 思わず食って掛かりそうになる『ばくし』を止めるべく『めがね』が立ちふさがる。

 しかし、彼の顔にもまた、困惑が色濃く出てしまっていた。


「あ、貴方たちも、一体何のつもりですか?」

「黙ってろよ、俺らはそいつに話してるんだ。なぁデカブツ?」

「…………」

「お前の力は、そんな見るからにへっぽこなパーティじゃ発揮できねぇと思うぜ? 俺らなら、お前に最高の働きを用意してやれる。そいつらよりも良い儲けを出してやろうじゃねぇか。なぁ?」


 男性の視線は、目の前にいる『めがね』に移り、威嚇する『ばくし』、首を傾げる『けもなー』ときて、最後に足元のツノちゃんに移る。その視線と口角のひくつきは、今のメンツを馬鹿にしていると誰しもが理解できた。


「…………」

「おぉい、兄貴が直々にスカウトしてんだぞぉ? なんか言ったらどうなんだぁ、アァ?」

「やめろ『けびん』。……なぁ、どうだい?」

「す、すみません! あの、『あらくれ』さんがいなくなったら、僕たち困……」


 そこまで言って、『めがね』の体が跳ねた。

 理由は至って簡単。腰巾着の1人が、彼を押しただけだ。

 そんなに力はこもっていなかっただろうが、少年の肉体はあっさりとその体幹を崩壊させる。


「いたっ……く、ない?」


 しかし、『めがね』の臀部が硬めの床とこんにちはすることは無かった。


「あ、ありがとうございます! 『あらくれ』さん……」

「…………(こくこく)」

「あ、アンタ達! 何してくれてんのよ! こんなの宣戦布告だわ! やってやろうじゃないの!?」

「冒険者ギルドでこんなこと~、していいんですか~?」


 まるで安心感の塊と言える。『あらくれ』の腕が、少年を受け止め、支えてくれていた。

 その様子に安堵しつつも、『ばくし』は目の前で置きた刃傷沙汰未遂にに我慢が効かず飛び出してしまう。

 『けもなー』もまた、講義の声を上げてくれた。今日会ったばかりの少年に、彼女達は本気になって怒ってくれているのだ。


「ハッ、冒険者ってんなら、今みたいなちょっかい程度で転んでんじゃねぇっての!」

「おいやめろ『とごっと』。俺らは喧嘩しに来たんじゃねぇんだぞ」

「っ……へ、へぇ」

「だが、これでわかっただろう? そいつらとくっついてたって、お前の足を引っ張るだけだ。俺らと来たほうが良い」


 この状況でもスカウトをやめない男に対して、頭からピピプーッと湯気を噴出しつつ『ばくし』が唸る。

 そろそろ本格的に喧嘩か? と周囲の冒険者が立ち上がろうとした、その時だ。


「…………(スッ)」

「ん、は~い。受理しま~す」


 行動したのは、『あらくれ』であった。

 彼は、自分のカードを受付に提出し、一緒にいた3人とのパーティ登録を進めたのである。

 瞳を細める男。表情を輝かせる3人。その両極端な光景でもって、この騒動は収束せしめたのであった。


「あ、『あらくれ』! アンタさすがね! アタシは信じてたわ!」

「素敵です~『あらくれ』さん~」

「あ、ありがとうございます!」

「…………(照れ照れ)」


 3人と1匹の小動物に囲まれているかのような状況で照れくさそうな『あらくれ』。しかし、納得出来ないのは腰巾着だ。

 その額には青筋が浮かび、下から斜め45度の完璧極まりない、もはや芸術とも呼べるべきなテンプレチンピラ睨みで『あらくれ』に迫ってくる。


「おぅおぅおぅ! 兄貴の誘いを断るたぁどういう了見だぁ、アァ!?」

「そんな見るからに雑魚な連中に付くたぁ、頭わいてんのかテメェ!」

「…………(ズイッ)」

「「な、なんだよ……!」」


 腰巾着に対して、『あらくれ』は3人を守るように前に出る。

 筋肉の壁が迫って来たことで、腰巾着は怯んでしまっていた。


「え~、では皆さん良いですか~? 今ここに、Fランクの新パーティが誕生しました~。パーティ契約の破棄は本人の意志が必要となりますので、これ以上の交渉が難しいならそのへんにしたほうが良いと思いますよ?」


 そんな時に、受付のお姉さんから声がかかった。

 もはや体勢は決したと言っていい。『あらくれ』が選んだのはどっちか。それは誰が見ても明白であった。


「……行くぞ、お前ら」

「け、けど兄貴ぃ。次の依頼のための盾役が……」

「仕方ねぇだろ。行くぞ」

「「へ、へいっ!」」


 かくして、Eランクパーティ……え~……名前何だったっけ。まぁいいや。男達は踵を返して出ていった。

 経過を見守っていた冒険者達だが、問題なしと判断したのか、また喧騒が広がっていく。


「さて~、ではでは4人のパーティにも名前が必要だから、今度までに考えといてくださいねん?」

「は、はい!」

「いやぁ、助かったわ。ありがとね!」

「いえいえ~。こういうのも日常茶飯事にちじょうちゃめしごとですから~? ……ところで、依頼を受けに来たんじゃ無いですかぁ?」

「そうでした~。戦闘の必要がない、簡単な依頼ってありますか~?」


 あ~。武器のお金集めですね~とつぶやきながら、受付のお姉さんが書類を漁る。


「初ういしいですねぇ。それじゃあ、常に出てて一番簡単な依頼をプレゼントしちゃいましょ! 冒険者はここからはじまると言っても過言じゃない依頼ですよ!」

「なになに!? なんて依頼なの!?」


 全員が顔を合わせ、目を通す。

 そこには、こんな文字が書かれていた。


【薬草採取】、と。

 

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