第2話:お仲間ってこんな人
どもどもべべでございます!
序盤ということで、連日投稿させていただきます~。
どうぞ、お楽しみあれ~!
「おかえり、準備できたわけ?」
「は、はいっ、あの、名前つけてもらわないといけないって……」
「うん、理解してるわけ。カード貸すわけ」
少年の家。
今ここは、スモーキン金融に差し押さえられてしまっている。
勝手知ったる我が家ながら、今は他人の所有物。なんとも哀愁を感じるではないか。
なにより、ここにある研究室も使えない。少年の胸に飛来するのは、張り裂けんばかりの悲しみだ。
「ふむふむ……「アルケミスト」と「ドクトル」、純粋な後衛なわけ。うちのお抱えチームにはうってつけなわけ」
スモーキンは少年の冒険者カードを見ながら頷いている。
どうやら、彼のお眼鏡には叶った結果を得られたらしい。
「うん、やはり君の才能、情熱は天性のものだったわけ。この2つなら、君も満足なわけね?」
「は、はいっ! 変なクラスになって、研究ができなくなるかと思ってたので……嬉しいです!」
「結構なわけ。このお家はチームの拠点にしてあげるわけ。だから冒険以外の時間は自由に研究すればいいわけ」
その一言に、少年のメガネは割れんばかりに輝いている。
先程までの絶望が覆され、また研究ができるようになったのだ。今少年の目には、スモーキンが仏様に見えている事だろう。
……少年自身が彼の管理下にある今、少年が作り出した薬の利権が誰にあるのかは……言わないでおこう。
「それじゃあ、君の名前を登録するわけ。けど、その前に君のお仲間を紹介するわけ」
「一緒に冒険してくれる人たち……ですよね?」
「そう。全員うちの商会で管理してる冒険者なわけ。3人しかいなかったから機能してなかったんだけど、君のおかげでようやく動かせるわけ」
スモーキンは、「奥の部屋に待たせてるわけ」と言いながら別の部屋に入っていく。
そこはかつて、両親が客間に使っていた部屋なのだが、そんな前提はもはや必要ない。複数人が入れた部屋ってだけだ。
少年もまた、さほど気にすることなく中に入り……
「…………(フスー……フスー……)」
入ってすぐに、全長2mを超えるであろう、覆面の筋肉ダルマと目が合った。
「ふぎゃああああああ!?」
「…………(シュコッ)?」
覆面……というか、マスクと言ったほうが良いのだろうか。
頭全体を覆う厚手の布には黒のレンズがついており、目元を覆っている。
口元には空気穴として機能しているであろう突起がついており、我々で言う所のガスマスクのようだ。
上半身は裸。筋肉という名の鎧を着込んでおり、丸太のような腕は少年のウエスト程にごん太である。
あんな上腕二頭筋からラリアットなんて受けた日には、完璧に気持ちよくなってしまうこと請け合いだ。
「あわ、あわわわわ……!」
「あははっ! 『あらくれ』ったら、さっそくビビられてやんの!」
「…………(シュン……)」
「も~、『ばくし』ちゃん。『あらくれ』さんが可愛そうだよ~」
腰を抜かした少年と、少し落ち込んでいるように見える筋肉ダルマ。
その背後から、2人の女性が顔を覗かせる。
1人は、赤毛と強気な顔立ちが特徴的な女性。見た目的には10代の後半といったところか。
サイドテールに結わえた髪は、艷やかとは言えないまでもけして見苦しくない程の質を保っており、充分に美しいと言える。
髪の色に合わせたのか、赤を基調としたデザインコーデを着こなしており、活発な愛らしさを兼ね備えた女性であった。
惜しむらくは、胸部装甲の乏しさであると言えるが……まぁ、これはこれでオツというものである。
「あ、あわ……」
「ん~? なにさ。獣人がそんなに珍しい?」
そう、何よりも特徴的なのが、彼女の外見だ。
赤毛から伸びる三角の耳。少し突き出たマズル。全身は体毛で覆われ、ニョロリと尻尾が伸びている。
わかりやすく、昔ながらの、もふもふ獣人という種族で間違いないだろう。種から言って、ネコ科のそれか。
確かに、リネンスタではあまり見ない存在だ。少年が興味を示してしまうのも、無理のない話であった。
「ごめんね~? 驚かせちゃった~?」
そしてもう1人。こちらは金髪の髪を腰元まで伸ばした、のんぽりした雰囲気の女性だ。
歳のほどは先程の女性よりも年上か。質素ながらも落ち着いた服装に身を包んでおり、しかしその地味さを完全に食い殺さんとしているかのような2つの膨らみが激しい自己主張を見せている。
もちろん、下半身もバランスよく相当なものだ。若かりし頃に彼女とお隣さんになっていたりしたならば、確実に性癖は歪む事だろう。
「……フシッ」
そんなワガママごっくんボディの彼女の足元には、一抱えほどの大きさの兎がいた。
特徴的な点と言えば、額から生えた角であろう。わかりやすくモンスターである。
この種は角兎(のそのそ歩いてぴょんぴょん跳ぶ、角の生えた種の兎を指す)と言い、町の外でも見ることができる程度にはポピュラーな存在である。
もう一方でよく発見される、玉兎(ゆちゆちと歩き、ポンポンと転がる種の兎を指す)との関連性は、また後日語るとしよう。
「ん~、まぁ初っ端から『あらくれ』にビビるのはしょうがないわけ。けど、彼は紳士だから心配はいらないわけ」
「え、あ、あう……」
「ねぇねぇスモーキンさん、この子が新しいメンバーなの?」
「そうなわけ。だから、順番に君らを紹介していくわけ」
「ふーん。じゃあじゃあ、私からいくね!」
赤毛のケモ耳女性が挙手し、少年を立たせる。
筋肉ダルマを見つめつつ気もそぞろな少年だが、初めて握る女性の手というものにも反応し、顔を赤らめてしまう。なにより、彼女の肉球がたまらないからしょうがないといえる。
「私は『ばくし』! このパーティーのダンジョン担当! ズバリ、「シーフ」と「ギャンブラー」のクラスを持ったヒロインよ!」
「名前の通り、彼女はギャンブルと宝くじで見事に爆死して借金背負ったわけ。このパーティーで一番のクズなわけ」
「んがッ! そ、そんなこと無いですー! 風水の関係上相性が悪かっただけですー!」
「まぁ、彼女にパーティーの財布は握らせないことをオススメしておくわけ」
先程のドキドキを返して欲しい。
目を釣り上げてスモーキンに怒鳴り散らす『ばくし』を見て、少年は何とも言えない青春の終わりのような気分を味わっていた。
「じゃあじゃあ、次は私ですね~? 私は『けもなー』って言います。「テイマー」と「メイジ」をクラスに持ってるから、後衛魔法職ってやつなのかな~?」
次に話し始めたのは、悩殺ズッキュンボディの淑女。名を『けもなー』。
もう名前からして嫌な予感しかしない。
「そしてそしてぇ! この子が私の相棒でツノちゃんって言います! どうですかこのモフモフ! この肉感! もう顔埋めてハスハスしたくなるでしょう!?」
悲しいことに、予感は寸分違わず的に命中。いわゆる的中してしまっていた。
『けもなー』が抱き上げた角兎は、迷惑そうにうごうごしながら拘束から逃れようとしている。しかし、まったく解放しないと諦めたのか、ため息をついてぐでんとうなだれてしまった。
「きゃー! ツノちゃんかわいい! かわいいよー!」
「『けもなー』は、魔法学校の在校生だったわけ。でも、魔物学以外全ての教科に落第。しまいには飼育されてた魔物を逃してモフモフパラダイスを作ろうとし、退学になったわけ。今は損害分の返済の為にうちで預かったわけ」
思った以上にヤバイやつだった。
好きな事が理性の上をいくタイプに、ろくな奴はいない。
なにより、少年の両親がそうだったのだ。
「んで、彼が『あらくれ』なわけ。名前だけでも威圧的にしようと思ってこんな名前にしたんだけど、基本的に大人しいわけ。鬼とのハーフらしいわけだけど、まったく喋んないからよくわからないわけ」
「…………(スッ)」
「ひゃう! ……よ……よろしく、です……」
差し出されたどでかい手の、指を握って握手する。
けして少年の手が傷まないように配慮された力加減。これだけで、『あらくれ』の人間性が見えてくるというものだ。
「行き場がないらしいから、うちで面倒みてるわけ。彼みたいな存在は競争率が高いから、確保できたのは運が良かったわけ。クラスは「ガード」と「バーバリアン」。前線の要なわけ」
「ハーフオーガさんなんて、最高ですよねぇっ? うぇへへへへ」
「まぁ、よく飲み物持ってきてくれたりするからいい人よねっ!」
……少年がここにくるまでの間、『あらくれ』がこの2人に囲まれてどれだけの苦労をしたのか。想像するだけで涙が止まらない。
読者諸君におかれては、是非とも彼に激動の言葉を投げかけてほしいものである。
「……で?」
ふと、そこまで話したところで『ばくし』が声を上げる。
「君の名前は? クラスは?」
「え? えっと……」
「その子の名前は、君たちに決めてもらうわけ。一緒のパーティーに入るんなら、愛着ある名付をしたほうがいいわけ」
「なるほど~」
「んむむ、そうねぇ……」
スモーキン、ご乱心。
先程の紹介で、彼女たちの人間性は充分に伝わったであろうに。こともあろうにその彼女たちに少年の名付けを任せるというのだ。
「あ、あ、あの、スモーキ……」
「ちなみに、クラスは「アルケミスト」と「ドクトル」なわけ。念願の回復職なわけ」
「ほうほう~」
「つまりは、博士枠ってやつね!?」
そこで、2人の瞳がキラリと光る。
少年の顔はみるみる青ざめ、まるで涼やかなゼリーのようだ。
「ス、スモーキンさん! 僕、名前はスモーキンさんに……」
「「めがね」」
「え?」
ニコニコしながら、『ばくし』と『けもなー』が宣う。
あぁ、なんと、単純な……。
「君は今日から、『めがね』よ!」
「完璧な名前です~」
「博士関係ないですよね!?」
「『めがね』……っと。記入完了なわけ」
「スモーキンさん!?」
ツノちゃんがため息をつき直し、『あらくれ』が哀れみを向けているのがわかる。
こうして、少年は新たに、『めがね』として人生を歩むことになったのであった。
「いやいやいや! もう少しカッコいい名前にしてくださいよー!」
「カッコいいじゃない!?」
「カッコいいですよ~」
「う、うわぁぁぁぁん!?」
……黙祷。
彼女たちのスキルやステータスについては、次に冒険者カードの欄を書きますね~