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幻想依存症  作者: 甲殻るい
幻想依存症例患者
2/5

幻想依存症例患者 1

──少女は目を覚ました。

ボンヤリと天井を見つめながら、頭を働かせる。学校に行く支度をしないと遅刻してしまうと考え、時計を探した。

でも見つからない。

それどころか私が今寝ているのは、私のベッドではない。勉強机も、本棚も、好きなミュージシャンのポスターも、枕元に置いておいたスマホもない。ここは私の部屋ではない。

彼女は気づいた。ここは病室であると。

よく見れば腕に点滴のチューブがついている。ナゼだ。というか真っ先に気づけよ、と彼女は自分に言い聞かせた。

だんだんと頭が働いてきた。

私が病院にいるということはつまりはアレだ。

それを確認するために彼女は点滴をしている腕とは反対の、すなわち左腕を上げて見た。

「……ハァー……」

あまりにも予想通り過ぎて、思わず彼女はため息を吐いた。

その腕には真新しい注射痕。と、古い注射痕がたくさん。

彼女は腕で目を覆い、そして泣いた。

私はまた誘惑に負けたのだ。もう2度と使わないと決めたのに、使ってしまった。

あのドラッグを、DayDream(デイドリーム)を。

このドラッグを使えば、超能力が使える。だからどうした。私の場合は、普段見えないモノが見えるようになるだけで、マンガやアニメみたいなことは出来ない。たったそれだけのことなのに、私はアノ感覚の素晴らしさに取りつかれてしまっている。

友人Aは少しだけ宙に浮くことが出来るようになった。

友人Bは光を自在に操ることが出来るようになった。

だが彼女が出来ることは、X線や紫外線を視覚で捉えることが出来る。彼女にとってはくだらない力だ。

そう何度も言い聞かせた。言い聞かせたのに。使ってしまったのだ。アノ感覚をもう一度感じる為に。

彼女は考えれば考えるほど悲しくなっていき、涙が止まらないことに嫌気が差し、また寝ようと試みた。

だがその時、誰かが扉をノックした。

すぐに入って来ない所をみると医者や看護士ではないと、彼女は考えた。ならば両親か。

会いたくなかったので狸寝入りをきめこんだ。そもそも両親ならば娘の返事など待たずに入ってこい、と思った。

しかし入って来たのは彼女が思い描いた人物ではなかった。

見知らぬ、会ったことも見たこともない、一人の男。

「誰」

彼女は反射的にそう言った。そして男が答える前に続けざまに問う。

「警察の人……」

「いや、俺がそんなに年上に見えるのか?」

そう答えた男はうろたえる彼女など気にも止めない様子で、彼女のベッドの横に立った。

「千賀ナキ……でいいんだよな?」

「私の名前、どうして……」

不意に名前を呼ばれたことに戸惑いを隠せず、ナキは思ったことをそのまま口にした。

「誰なの……」

警戒心をあらわに再び問うと、男は少し困ったような表情を見せた。どうしてそんな顔をするのか、ナキには理解出来なかった。

そうして男は答えた。

「俺は……そうだな……君の味方に、なる為に来た」

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