序・夢
歌が聴こえる。
夢の中でしか聴こえない、少女の歌。
名前も知らない歌。
でもイイ歌だ。
暗闇の中で声の主を探しさ迷うが、少女を見つけられたことはない。
そうしてだんだんと意識は別のことへと向けられる。
ナゼ歌が聴こえるのか。ドコにもいないじゃないか。ワタシは誰だ。アナタは誰だ。他の人間はドコにいる?
疑問が生まれては忘れる。繰り返し、繰り返し。
そしたら不意に気づくのだ。
ああ、そうかこれは夢なのか、と。
だが気づいてしまったら最後だよ。あとは夢から覚めるだけ。
合図はこうだヨ。
落ちろ。
暗闇の中へとまっ逆さま。
アリスみた~い。
下に落ちているのか。
上に落ちているのか。
右に落ちているのか。
左に落ちているのか。
もしかしたら後ろに落ちているのカモ。
前かもしれないよ。
右斜め45度とかドウよ?
上かな? 下かな? 右? 左? 前? 後ろ? 上ダヨネ? 違う? じゃあいいや。
落ち続けていると考える。
そういえばナニをしていたのだろう? この夢でナニをしようとしたのだろう。
人生知らない方がイイことがヤマモリ!
嗚呼そうだ、少女を探していたんだ。
でも歌声だけでどうして少女だとわかったのだろう?
見たこともないクセによォ。
少女を探そうとすると、目の前にアイツが顔を見せにやってくる。
バアッ!
いつもここでだ。そう。いつも決まってこのタイミングで目が覚める。ゆっくりではない。一瞬にしてだ。
しばらく頭が混乱する。だが脳が教えてくれる。いつもと同じ部屋の景色を視覚情報として捉え、即座に伝達する。
身体にも異常は無い。全て正常に動いている。足も、腕も、手も、頭も、中身も。起きたら身体のどこかが無くなっていることなどありえない。
安心しろ。俺はまだ、現実にいる。
夢を見るたびにそう言い聞かせないと、俺は夢から戻れない。




