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幻想依存症  作者: 甲殻るい
幻想依存症例患者
1/5

序・夢

歌が聴こえる。


夢の中でしか聴こえない、少女の歌。


名前も知らない歌。


でもイイ歌だ。


暗闇の中で声の主を探しさ迷うが、少女を見つけられたことはない。


そうしてだんだんと意識は別のことへと向けられる。


ナゼ歌が聴こえるのか。ドコにもいないじゃないか。ワタシは誰だ。アナタは誰だ。他の人間はドコにいる?


疑問が生まれては忘れる。繰り返し、繰り返し。


そしたら不意に気づくのだ。


ああ、そうかこれは夢なのか、と。


だが気づいてしまったら最後だよ。あとは夢から覚めるだけ。


合図はこうだヨ。


落ちろ。


暗闇の中へとまっ逆さま。


アリスみた~い。


下に落ちているのか。


上に落ちているのか。


右に落ちているのか。


左に落ちているのか。


もしかしたら後ろに落ちているのカモ。


前かもしれないよ。


右斜め45度とかドウよ?


上かな? 下かな? 右? 左? 前? 後ろ? 上ダヨネ? 違う? じゃあいいや。


落ち続けていると考える。


そういえばナニをしていたのだろう? この夢でナニをしようとしたのだろう。


人生知らない方がイイことがヤマモリ!


嗚呼そうだ、少女を探していたんだ。


でも歌声だけでどうして少女だとわかったのだろう?


見たこともないクセによォ。


少女を探そうとすると、目の前にアイツが顔を見せにやってくる。


バアッ!




いつもここでだ。そう。いつも決まってこのタイミングで目が覚める。ゆっくりではない。一瞬にしてだ。

しばらく頭が混乱する。だが脳が教えてくれる。いつもと同じ部屋の景色を視覚情報として捉え、即座に伝達する。

身体にも異常は無い。全て正常に動いている。足も、腕も、手も、頭も、中身も。起きたら身体のどこかが無くなっていることなどありえない。

安心しろ。俺はまだ、現実にいる。

夢を見るたびにそう言い聞かせないと、俺は夢から戻れない。

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