プロローグ
しばらくは主人公のターン
気がついたのは息苦しさからだった。
そして自分が俯せになっていることに気づき腕を立て頭を上げようとするも上がらない。
あれ?昨日呑み過ぎたか、てか昨日何してたっけ
確か課長がしくった案件で謝りに行って後処理をするために残っていたはず…呑んでねぇな
なら何でこんな体が動かねぇんだ
てかマジ苦しい!頭重くて動かねえ!
「ぅぇえええええぇぇぇ!!!???」
泣いた!?
何これなにこれナニコレ!?
確かに苦しかったけど泣くほどじゃなくね!?
全然泣き止まないし!?自分じゃないみてえ
「あ~、ごめんね。はい、もう大丈夫だよ」
声がかけられたかと思ったら体が持ち上げられる。
なに!?齢30過ぎになる男を持ち上げるとかどんな筋力してんだ!?
閉ざされた視界から解放され開けた視界には少女がいた。
少女!?こんな非力そうな子が俺も持ち上げただと!?
どんな筋r…何だこの手は!?
ちっさ!ぷにぷにしてる!まるで赤ちゃんのような…ってまさか!?
やっぱり足もぷにぷにしてる!
「あぁぁぁぁ!!??」
言葉も喋れねえ!?
やっぱりこれって転生してる!?
………
泣き疲れ寝て起きてみれば冷静になれた。
前世といっていいのかこの体になる前には立派なオタリーマンだった身としては納得してしまえばああ、そういうものかと理解してしまった。
しかし神様に合わないパターンのやつか…残念だ。チート能力は期待できなさそう
冷静に状況観察をしてみればこの世界のことも分かってきた。
まず俺がいるのは協会に付随した孤児院。神父やシスターの姿も見たりするし俺と少女の他に多数の子供も見たり声も聞いた。
今俺が寝かされているベットや子供たちの衣服からも裕福とは言えないものの貧しすぎると言う程でもないらしい
何度か散歩の為外に出たのだが、あたりは広い草原で空気が澄んでいて気持ちが良かった
そして空には鳥の代わりにドラゴンが飛んでいた
………そう、ドラゴン。のどかな雰囲気をぶち壊すかのように悠然と飛んでいた
シスターが話すのを聞く限り教会の近くには高位の魔術師が張ってくれた結界があるからドラゴンには見えないらしい
ドラゴンや魔術師がいる世界。テンプレながらも心躍るものだな
それにこの孤児院では大きくなって卒業しても困らないように教育を施している
教育の中には文字や計算、一般常識以外に剣術、魔法など異世界ならではのものもあるらしい
ここまでしっかりとした教育体制が整えられるのも訳がある
まず普通は大人の数が足りない。ここも神父とシスター含め10人程度しかいない
その為ある程度教育課程を済んだ子供が下の子に教える制度があるらしい
また赤ちゃんの世話もそれに含まれるらしく俺の事も少女の他に少年が一人相手をしている
少女の名はユーリ、少年の名はダンという
ユーリが文字や計算、ダンが剣術を教えている
何故赤ちゃんである俺がそんな事を知っているかというと二人が指導している間おんぶや抱っこされているからだ
ユーリに抱かれているときはいい。別に女の子だからというわけではなく、ダンにおんぶされている時はよく動くせいで頭やら首がガクガクしてめちゃくちゃ疲れる
ユーリやダンが俺を育てているように他にも同じような組みがいる
所謂幼馴染というやつだろうか
孤児院を一つの家族として下の子は上の子を兄や姉として接し、神父とシスターを時に父親、母親として接している
まぁこんな感じで天涯孤独の前世からは信じられないくらい賑やかな生活を送っているわけだ
退屈しなくすみそうだ