問題編⑥
「雲谷先輩なの? ってことは答えは……文芸?」
「うん。まず『学校』の方は地図記号だと『文』って記号じゃない? それから『草のある雨を降らさない雲』。まず『草のある』は草冠、『雨を降らさない雲』は雨がない、つまり『雲』から『雨』を取るってこと。すると『云』って字ができるよね? それを草冠と合わせると『芸』になる。ということは『文芸』が答え。確か文芸部の部長は雲谷先輩でしょ?」
◇
「あ、いたいた。雲谷先輩!」
優里が呼びかけると生徒会の副会長で、文芸部の部長でもある雲谷郁美先輩は振り返る。
「優里ちゃんどうしたの?」
「雲谷先輩は知っていたんじゃないですか? 例の謎のクイズのこと」
いつもより真面目な声で優里は聞いた。雲谷先輩はしばらく何も言わなかったが、やがて観念したように口を開く。
「うん、まあそうよ。確かに知ってたわ。私が今朝学校に来たら手紙が置いてあったの。でも決して誰にも話すなって指示があったから……実はあれ、北坂先生が用意したみたいなのよ。手紙の終わりに名前が書いてあったから」
雲谷先輩は手紙を見せる。今までの人が見せてくれたものではなく、指示の書かれたもののようだ。確かに終わりには『北坂』の文字がある。
「それはまだ分かりませんよ、雲谷先輩」
わたしは思わず言った。驚いた顔で雲谷先輩はわたしの方を向くが、続ける。
「だって、こうなることはなんとなく予想できるでしょ? なのに堂々と名前を書いて、しかも特にこの手紙を見せるなとは書いてない。ってことは北坂先生な可能性はむしろ低いんじゃないですか?」
「……確かにね。ま、とりあえずもう1枚あるのよ。ほらこれ」
雲谷先輩はそう言い『生徒会室の意見箱の中』と書かれた紙を見せた。
「あら、最後は最初と同じ場所で終わるの。ま、行こう理絵花。雲谷先輩、ありがとうございました」
立ち去ろうすると、後ろから雲谷先輩が言った。
「ねぇちょっと待って。もう1つ言っておきたいんだけど……」
「何ですか、雲谷先輩」
「実は今日、学校に来る途中に高沖君に会ったのよ。それで一緒に学校まで行って、私が荷物を教室に置いた時、この手紙を見つけたの。で、私がこれを読んでいる間に彼の方はB組まで入って来たのよ。だからもし、高沖君が横からこれを読んだとしたら高沖君もこのことを知ってたのかも……」
「そうなんですか。覚えておきますよ」
◇
わたしたちは生徒会室へ。あの最初の問題は貼ったままだが、もう誰もいない。わたしは意見箱をひっくり返す。すると1枚の紙がぽろっと落ちてきた。
第6問
鮫棲む府干せ
これから連想される部活動は?
「な、何これ? 意味わかんない文章だけど……」
「でもなんだろ。口に出すとなんかわかりそう……」
「え、そう? 鮫棲む府干せ――全然わかんない!」
そう言い優里はまたクルクル回り始めた。ブツブツこの問題を呟きながら。
わたしも優里に倣って呟く。もちろん、止まりながらだが。ん? もしかして順番を――変えたら?
「あ! わかった! あの部活よ。北坂先生が顧問の――」
優里は足を止めて、大きな目で見つめてきた。