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その1

「攻略情報なしに本気を出すのは無駄な努力」

 それが大友暁雄の信条である。

 小5で天才と凡才の差を見せつけられた結果、人生という長いマゾゲーに挑む上でのプレイスタイルが確立された。

 身の程を知れ。高望みはするな。最小限の労力で最大限の成果を。つねにそう心がけて生きてきたおかげで、この春、無事に高等部への進級を果たした。

「パラメータがリセットできないんじゃ、将来の選択肢なんて無いんだよ」

 このまま順当に高校を卒業し、ほどほどの大学に入って、ほどほどの会社に就職し、ほどほどの老後を迎えることができれば何もいうことはない。

 同級生からは「枯れてるな」と言われるが、暁雄に言わせれば、達成できない夢や目標に執着して時間を無駄にするほうがバカバカしい。時間は金と同じだ。浪費したぶんだけ損をする。

 現に、中学時代の同級生のひとりは、3年間、熱心に部活に励んだはいいが、授業の成績はガタ落ちで高等部への進学を諦めるしかなかった。しかもそれだけの代償を払って打ち込んだ部活のほうも、最後までろくな結果が出せずに終わっている。

 その同級生から高校は別々になると告げられたとき、暁雄は、ほかの友人たちと同じように慰めの言葉をかけたが、心の中では自分の忠告を無視し続けた同級生に毒づいていた。

「わざわざ非効率なルートを選んでおいて、後悔もクソもあるか馬鹿が」

 部活なんて内申書のためにやるものだ。暁雄のように、学業に影響のない範囲で参加しておけばよかったのだ。

「お前はまだ伸びしろがあるぞ? もう少し頑張ってみろ」

 何度か顧問やOBに言われたが、礼儀正しい態度で華麗にスルーした。そんな無責任な言葉を真に受ける必要はない。確実に全国1位になれるならともかく、100位にも届かないランク外の有象無象たちと順位を争って何の意味があるのか。


「なぁ、アキ、部活決めたか?」

 不意に呼びかけられ暁雄は身震いした。一瞬、考え事を口にしていたのかと思ったが、そうではなかった。気がつけば教室の清掃は終わっていて、当番の生徒たちはみな帰り支度を始めている。ホウキを手に突っ立っていた暁雄に話しかけてきたのは幼なじみの征矢だ。

「どした?」

「いや、べつに。あー……、部活は、いや、班活だっけか? まだだなぁ」

 暁雄たちが通う武蔵大附属高では、クラブ活動を運動部と文芸部に大別し、そこからさらに運動部野球班、文芸部美術班という呼び方をする。なぜだかは分からない。一説では、統合される前の高校の伝統を受け継いだらしい。

「なんだよ、もう体験期間終わるぞ? 早く決めないとやべーぞ?」

「いちおう陸上班は見学したんだよ。ただ、生徒会もイイかなって思ってさ。ちょっと考え中」

「そっか。なんならサッカーでもいいんだぜ?」

「そりゃダメだ。俺のサッカー魂は燃え尽きた。サムライジャパンの未来はお前に託すよ」

「託されたらしょうがねぇな。とりあえずU-17で世界を狙うか」

 その後、5分ほどくだらない冗談を言い合ってから征矢は教室を出て行った。その背を見送りながら、暁雄は心の中でうめいた。

(あんな目に遭うのは二度とゴメンだ。あんなムダな時間は……。俺はお前とは違うっ。お前だって、分かってるくせにっ)

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