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弱い子猫は雨風に吹かれ
…雨だ。
冷たいけど、ほんの少しやさしい雨だ。
傘はない。雨宿りするところもない。
髪から落ちてくる滴に苛立ちを覚えながら歩く。
でも、この雨は嫌いじゃない。
「…あの時と、同じ雨だ」
ぽつりと呟いた独り言。
闇夜に吸い込まれて消えた。
誰にも届くことはない。
…勿論、貴方にも。
同じような雨が降っていた、あの日。
何もかもわからなくなって、雨に濡れ、立ち止まる私に、
傘をさしていた貴方は言った。
「…お前は、捨てられた子猫みたいだな」
私は涙を流しながら言った。
「じゃあ、拾ってくれる?」
貴方はふわりとやさしく笑った。
「もう少し、お前が大人になったらな」
そう言って、貴方は私の前から姿を消した。
私に何も言わずに。
私は、捨てられた子猫。
新しいご主人様を探している子猫。
今はいない、貴方を待ち続ける子猫。
ぼやけた視界が赤から青に変わった。
ハッとして、溢れてきた涙を拭う。
震える足で歩きながら、純粋だったあの頃を反芻する。
私は、いつからこんな人間になってしまったんだろう。




