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学園の中心で「邪魔しないでよ!」と叫ばれた少女 連載版  作者: 千条 悠里
第2章「騒動の中心で『絶対に!』と叫ばれた少女」
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第16話「少女の決意と、見守る者達の事情」

大事なキャラ出し忘れてたので追記しました。

ここでフラグ立てておくつもりなのにうっかりしておりました(汗





 宮子が目を覚ますと、母が顔を覗き込んできていた。

 ベットに横たわる宮子のことを、心配そうな顔で見つめていたが、宮子の瞳が開いたことで安心した様子でほっと息を吐く。


「宮子! ……良かった、目が覚めたのね」

「母さん……?」


 寝起きでぼんやりする頭で、記憶を探る。

 何かとんでなく現実味のない、漫画のような夢を見たような気がして……胸に疼く痛みに、夢ではなかったことを自覚させられる。

 痛みと共に、気絶する前の記憶が鮮明に頭に浮かんでいく。

 突然起きた周囲の異変。現れる魔狼に小人の襲撃。そして――。


「――優菜さんは!?」

「あのお友達のことよね? あの娘なら……」


 その時がちゃりと音がして、部屋のドアが開いた。

 扉の向こうから、宮子が身を案じていた優菜がいて、宮子の様子を見て傍へと駆け寄ってきた。


「宮子さん! よかった……本当によかったです」

「優菜さん! 無事だったんだね、よかった」


 ベットから身を起こしながら宮子は、優菜と手を握り合って互いの無事を喜ぶ。

 優菜の無事な姿に安心すると同時に、先程の出来事が夢ではなかったのだと実感が沸いてくる。


「さっきのあれ、夢じゃないんだよね……一体なんだったんだろう」

「え、ええと。それは……」

「それについては、私から説明しましょうか」


 開いたままになっていた扉の向こうから、聞き覚えのある男性の声が響いた。

 かつかつ、と足音を立てながら部屋に入ってきたのは――学園の理事長である久木野那岐、であった。

 そして那岐の傍には、宮子もよく知る生徒会長、望月高志が連れ添っている。


「望月さん……? 何故、あなたがここに」

「僕も『アルカナ能力』というものに最近目覚めまして。理事長から指導を受けていたのですよ」

「さ、さっき私達を助けに駆けつけてくれたのも望月さんなんですよ!」

「僕の『アルカナ』は微弱ながら索敵能力がありまして。異変を感じて駆けつけた次第です。正直、戦闘はほとんど優菜さんが終わらせてしまいましたけどね」

「そ、そんな……私なんて、無我夢中で必死になってただけで……望月さんが来てくれなかったら、どうなっていたことか」


 仲が良さそうに話合う優菜と高志の姿に、自分が気絶している間に色々とあったのだろうかと宮子は推測した。

 しかし、先程から頻繁に出てくる『アルカナ』という単語については、よく分からない。

 タロットカードにおける大アルカナ、小アルカナなどの用語は聞きかじったことがあるが、それらに不思議な魔法みたいな能力がある、なんて聞いたことはない。

 せいぜい占いで使われる、くらいの認識でしかない宮子にとって、先程の不可思議な現象と『アルカナ』という単語がいまいち結びつかなかった。



「宮子さん。治療は施しましたが、具合はいかがですか? 『アルカナ』を使うのは久々なので、少し不手際があったらすみません」

「は、はい。まだ少し痛みますが、なんとか。それで、先程から話されてる『アルカナ』というのは……? タロット用語で聞き覚えがありますが」

「順を追って説明しましょう。優奈さんも、よろしいですか?」


 宮子と優菜が頷いたのを確認して、那岐は言葉を綴り始めた。

 立ち話もなんですので、と自分も含めてソファへの着席を促す那岐。

 宮子はまだ少し身体が疲労を感じていたので、ベットに腰掛けて聞くことにした。


「まず『アルカナ』。これは、いってしまえば超能力とか魔法みたいなものですね。

 素質ある人間が何らかのきっかけを経て覚醒して、初めて使えることができる能力です。

 能力の内容は人によってそれぞれですが、ゲームに例えるなら攻撃、防御、回復……あとは他の人の力を引き出す補助、なんてものもありますね。

 一般には知られておらず、成り手も少ないため詳細は私達でも分からないことが多いのですが、『人の魂に宿って発動する不思議な力』という認識が主です」


「補足するなら、『アルカナ』を使える人は魂が『アルカナ』である程度守られているって感じね~。こう、膜で覆われてる感じ?」


 宮子の母である杉野颯が補足して喋り、那岐がそれに頷く。

 どうやら両者にとって『アルカナ』の存在は以前から知っていたことのようだ。


「魂が守られているため、先程宮子さん達を襲った『魔物』に襲われてもダメージを負い辛いというのも特徴ですね。

 宮子さんは、掠り傷でしたが負傷したことで微弱ながら魂に傷を負ったため、僅かな負傷でも気絶する程のダメージを負った訳です。

 魂は負傷しても今回のように軽微であれば時間経過と休息で回復するのですが、大事を取って完璧に治療させていただきました」


「た、魂、ですか……そんなのどうやって治療するんですか?」

「主に治療を行うのが私の『アルカナ』の能力でしてね。こういったことは得意なんですよ」

「僕の場合は若干ですが『魔物』の気配を索敵できる能力と、戦闘向けの能力が主ですね」

「ちなみにお母さんは『アルカナ』は使えないんだけど、昔ちょっとあって那岐ちゃん達といっしょに戦ったりしたのよ~」


 なんでもないことのように言うが、母もあのような化け物と戦ったことがあるのかと宮子は驚いた。

 しかも一度や二度ではなく、随分と戦い慣れた様子の口調だった。


「お母さん、一体……」

「私のことは後でちゃんと話すから、今は『アルカナ』について話しましょ、ね?」


 疑問を呟いた宮子だったが、母に諭されて理事長の話の続きを聞くことになった。


「私達『アルカナ能力者』は、数十年前……今の宮子さん達と同じ年齢の頃に、組織的に活動して『魔物』と戦っていたのですよ。

 そして颯さん達の協力もあって、黒幕と言える人物を倒したことで『魔物』は世界から消え去ったはず、だったのです。

 実際、今回の騒動がなければ再び『アルカナ能力』を使う場面なんて、ないと思ってましたから」


「最近は平和そのものだったはずなんだけどね~。『魔物』に新たな『アルカナ能力者』の発現……何か起こってるのかしらね」

「あ、あの……私は結局、どうなるんでしょう」


 優菜は不安そうに手を上げて、質問の言葉を呟いていた。


「宮子さんを守りたいって、夢中で叫んでたらこんなことになっちゃって……私、如何にかなっちゃうんでしょうか?」

「副作用的な心配でしたら、まず大丈夫でしょう。力に酔って暴走する人物もいますが、それは元々の人格や生活環境に問題があるケースばかりです。

 そして……私達の世代なら能力者としてスカウト、というところですが。あの頃は戦力不足で切羽詰ってましたからね。今は、そうでもないですし」

「那岐ちゃん、友人まで無理矢理スカウトされて、ぷっつんしちゃって、お偉い方々にすごい口撃しまくってたものねえ」

「……若気の至り、というのは恐ろしいものですね」


 母の言葉に気まずそうに目を逸らす那岐。

 今の大人然とした姿からは想像もできないが、若い頃は色々とあったようだ。

 内心憧れていた人の意外な過去に少し驚く宮子だったが、何も言わずにそっとしておくことにした。


「ただ、今回のように『魔物』関係の事件に巻き込まれる可能性はあります。

 なので身を守るため、或いは他人を守るために『アルカナ能力者』としての訓練を積みたいというなら、私が請け負いましょう。

 最も、私達の都合で実戦に出すつもりはありません。……戦うのは、大人の役目であるべきですから。

 もちろん、このまま『アルカナ』に関わらず日常に戻ることもできます。……卑怯な言い方かもしれませんが、今後のことは優奈さん次第、ですね」


 そう言われて、優菜は悩むような表情になった。

 宮子にはその胸中を察することは難しい。自分は普通の人間で、特殊な能力に目覚めてなどいないのだから。

 しばらく、考えるように目を閉じていた優菜は……目を開くと、震える声で、けどはっきりと言葉を口にした。


「私、宮子さんが守ってくれている時に、何もできませんでした。

 あんなの、もう嫌です。友達の影で怯えて、自分は何もできないまま、なんて。

 だ、だから……戦うのは怖いです、けど戦えないまま友達を失うなんて、もっと嫌だから……。

 わ、私に『アルカナ』のこと、もっと教えてください!」


 その言葉と瞳には、確かな決意が宿っていた。

 いつも気弱に、人と話すだけで怯えていたような女の子の姿は、そこにはない。

 覚悟を決めて、己の進む道を決めた、そんな少女の姿がそこにあった。


「優菜さん……本当にそれでいいの? きっと、危ないこともいっぱいあるよ」


 宮子はそう言葉をかけずにはいられなかった。

 その意思は固そうであるし、他人がとやかくいうことではないかもしれないが、友達のことが心配だったのだ。

 戦わせる気がない、という那岐のことを信じられないわけではないけど、『アルカナ』のことを何も知らない宮子にとって、ここで止めるべきなのか迷いがあった。

 優菜も、まだ迷いはあるようだったが、それでも宮子をしっかりと見つめ直して。


「またさっきみたいなことになった時、後悔したくないんです。

 だから……こ、怖いですし、まだ迷ってもいるんですけど、頑張ります!」


 そう、はっきりと意思を口にするのだった。





「さて、それじゃあ『アルカナ』についての話が終わったところで、私の番かしらね」


 そう言って、杉野颯は場の雰囲気を変えようとするように、ぱんと自分の両手を合わせて鳴らした。


「まず、そもそも何で母さんがここに? まずここがどこかも分からないんだけど」

「颯さんがここにいるのは、私が連絡したからですね。この場所はかつて『アルカナ能力者』の、謂わば秘密基地だった場所で、学園の地下になります」


 母への問いかけに答えたのは那岐であった。

 学園の地下にそんな場所があったなんて、と内心驚きながらも宮子は母の言葉を待った。


「宮子が倒れたって聞いて、私驚いて飛んできちゃったわ。那岐ちゃんの『アルカナ』があるから大丈夫、とは思ったけど、大事な娘のことだもの。

 『アルカナ』のことを知っているのは、さっきも言ったけど昔『アルカナ』関連の事件に関わったことがあってその時に色々とね。

 いやー懐かしいわー、ここに入るの何年ぶりかしら」


「……お母さんは、『アルカナ能力者』ではないんでしょう?

 事件に関わったなんて、そんな……大丈夫だったの?」


「んー、まあお母さん、自分で言うのもなんだけど強かったからねえ。それも理由があってのことだけど」


 杉野颯は、お茶を口に含んで気持ちを落ち着かせるように深呼吸をしてから。





「お母さん。それとパパと、九条さん夫婦の4人でね。

 異世界で勇者とその仲間達として、戦った経験があるのよ」




 そんな、とんでもないことを話し始めた。


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