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Fragment Stories  作者:
2/9

バレンタインデー

とあるバレンタインデーの一日。

かなり昔に某SNSサイトに投稿したものです。

「バッレンタイン、バッレンタイン。今日は楽しいバレンタイン」

 下駄箱の前でこんなことを歌っている男がいる。彼の名は春日井かすがい 春日かすが、何処にでもいるただの(・・・)男子高校生である。

「――気持ち悪っ。

 どうせ、あんたには一個も来ないでしょ」

 そうからかって来たのは幼なじみの綾香あやかだ。

「そういうお前はどうなんだよ、誰かにあげるのか?」

 すると綾香は、ニヤニヤとした顔をし、こう自慢してきた。

「私はあれよ、今年こそ愛の佐藤君にこの想いを伝えるのよ」

 すると彼は少し嫌そうな顔をしたが、綾香は気付いていなかった。

「……まあ、俺は先に教室行ってるから。お前も遅れないようにしろよ」










 放課後、既に教室からはほとんどの人が去り、残っているのは春日一人になっていた。

「……一つも無しとか、最悪」

 帰るか、と一人呟き教室を後にする。

 そのまま真っすぐ帰るつもりだったが、彼は廊下の角、ちょうど人目につかない場所に誰かいるのを感じ、こっそり隠れながら見ることにした。

「――貴方のことが大好きです、付き合ってください!」

 そこにいたのは綾香だった。そしてその相手は、やはり佐藤。だが、

「――済まない。気持ちは嬉しいけど、僕には好きな人がいるんだ」

 返されたのは、非常に残酷な一言だった。

「……わかったわ、ごめんね佐藤君。この事は忘れてちょうだい」

「……ごめん」

 佐藤が、帰ろうとこちらに歩いて来る。春日は咄嗟に隠れ、見つからないようにした。

 佐藤が通り過ぎた後に、綾香のもとにゆっくりと歩く。

「……」

 ぽん、と綾香の頭に俺は無言で手を置いた。

「……春日。えへへ、恥ずかしい所見られちゃった」

 綾香は尚も気丈に振る舞おうとするが、春日がそれを止める。

「我慢しなくていい。他に誰もいないから」

 その言葉で、我慢しきれなくなったのだろう。彼女は塞きを切ったように泣き出した。

「……」

 春日は無言のまま手を置き続けていた。

 そんなとある日の出来事。

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