魔王見習い様と死霊術士さんのお話(1)
【魔王見習い様と呪いの海辺町】編の続きです。
お話してます。 なかよしこよし。
改訂予定です。
ご迷惑をお掛けします。
読まれる場合には、こちらをどうぞ つ【安全ヘルメット】
現在の改定状況:皆無
ぱたん、ぱたん、ぱたん。 私の尻尾が床を定期的なリズムで打っています。
皆様こんにちはこんばんわおはようございます、千尋です。 唐突ではありますが、今の私は半竜でも人間でもありません。 分かりやすく言いますと、三人掛けのソファより少々大きいくらいの鳥系ワイバーンドラゴンに姿を変えています。 角は産毛が生えてるのが二本、後ろに流した前髪がごとく生えてます。
なんで普通の鱗とかあるドラゴンっぽいのじゃないかというと、私の種類だからと答えられました。 少し残念ですが、まあもふもふのほうが好きなので問題はありません。 爬虫類じゃないので、触っただけではサルモネラも移らないでしょうし。 そんなのがないタイプのもいますが、警戒するに越した事はありませんからね。 …え、なんで完全なドラゴンになってるかって? たんなる抗議の一種です。 ええ、抗議ですよ。 ほら、尻尾もぱったんぱったんしてるでしょう?
とにもかくにも、私の姿は厨二病患者が好きそうな漆黒のドラゴンです。 ふっさふっさのながーくてあったかーい、艶やかな羽毛で覆われています。 目は紅ではなく、普通に黒ですけどね。 そうそう、いつも思っていたのですけれど、完全なアルビノでもないのに目が真っ赤ってのは普通ありえないと思うんですよね。 妄想の産物にそんな事をいうほうが無粋かもしれませんが。
そんな事はおいといて、現在の状況です。 私が今いる場所は、ドラゴンさんのお友達である、あの死霊術士さんのお家の客間です。 一応私の縄張り内ではありますが、お家からは遠い位置にあります。 もう少し東に足を伸ばせばアニマ領という所に行く事が可能です。 アニマ領には近々行く予定がありますので、そこの事はその時にお話しますね。 …いえ、もちろん「公式に」ですよ?
客間は結構大きい、木枠とガラスで作られた窓が二つに真っ白なレースのカーテン、中央に高そうなソファーが二つとガラスのコーヒーテーブルが置かれています。 ガラスってまだ高級品のはずなんですが、どこからこんなに手に入れたんでしょう。 そしてオフホワイトの壁に掛かっているのは、いくつかの素朴ながらも職人技な風景画です。 絵の種類は田園や海と砂浜など、けっこうばらばらです。
窓の外は、どこにでもありそうな町の風景。 ビルなんて物はなく、一番高い建物は町の中心にある時計台な一般的な町です。 ここの特徴としては、町の中に大小の個人および公共ガーデンが点在しているので空気が比較的美味しいです。 歩道にも木が一定の間隔で植えられているのですっごく目に優しい町となっています。 さらには海から適度に遠いので、髪を傷める潮風もありません。 近くの山がらみの野生動物および魔物の問題はありますが。
ついでに言いますと、特産品は花や薬草などの植物関係になります。 この地方は川が多く土が良いので、良い品質のものがたっぷり取れるんですよ。 ローテーション技術も発達してますので、その分もあるんでしょうね。 ほかには…そうですね、結構有名なパン屋さんがここに店を構えています。 朝一番に並ぶ焼きたては、高級料理店もかくやというほどの美味さです。 ただ、ケーキもあるっちゃあるんですがね…いいお値段ですし自分で作ったほうが美味しいので、おすすめしません。
ちなみにここは、スヴェランという女神の信仰者が大半という、教会町の一つです。 名前はスズラル。 こういう町は権力者も信仰心が強い場合が多いので、町の名前も似た響きになる傾向があります。 ここも教会町というのの基本に違わず、大きい教会が一つと小さな集会所がそこかしこに設立されてます。
スヴェラン神は14柱からなる【新しい神々】リオス・ディヴェクスの一員であり、長い白の髪の毛と水色の瞳を持ち、高潔と質素を軸にしています。 彼女の与える奇跡には、怠惰や欲に打ち勝つ系統が多いです。 教えの影響かこの町も落ち着いた雰囲気になっていますが、祭りともなると大騒ぎになるんですよね。
今年も春の豊穣祭に対してザ・シャドウハンターズ☆スニーキングミッション!~かわいこちゃんに悪戯しちゃえ(ただしYesロリコンNOタッチは法律だ)~を決行したんですが、例年通り熱気が物凄かったです。 いつもながら逆に悪戯されたりしましたし。
一番凄かったのは、帰って来た時のドラゴンさんだったんですけどね! 極上の笑顔を顔に乗せつつ薔薇鞭で床を打たれた時には、さすがに終わったかと思いました。 書置きは残しておいたんですけどね…。 本格的に就任したら出来なくなるんだから、今ぐらい多めに見てくれてもいいのになぁと最近思ってます。
再び思い通りに動く体を持てたのに、引っ込んでるだけなんてもったいないでしょう。 ね?
それはそれとして、ドラゴンさんとお友達さんは私がせっかく捕まえたあのやろーの魂を持って、秘密の地下室とやらに篭っているそうです。 なぜ伝言形式かといいますと、ドラゴンさんが私を放ってさっさとどっかに行ってしまったからです。
私も参加したかったのですが、メイドさんの一人に「申し訳ないが思いとどまって欲しい」という伝言を貰ったんですよね。 意味わかんないしマジイラつくーみたいなー。 あ、思い返すとさらにイライラしてきました。 私の敵なのだから、私が率先して虐め…もとい、お仕置きするべきだと思うんですが、ね。
バシッ。 バシッ。 バシッ。 バシッ。
ああーもう、床が壊れたらどうするんですか。 私は弁償しませんよ。 悪くないもの。 悪くないったら悪くないんです。 絶対そうなんです。
がちゃり、と客間のドアが開きました。 満足した顔のドラゴンさんとメイドさんが一人、入ってきました。 メイドさんは茶髪に茶色の目をしており、いい香りのお菓子とポット、そして木目のついたカップを三つカートに載せて運んでいます。
尻尾のばしばしはそのままでころりとひっくり返り、ドラゴンさんをにらみつけながら横向きにお腹を見せます。 え? それは服従のポーズじゃないかって? 私の場合は違うんですねこれが。 苛立ちと怒りがマックスですよー! という事を伝えるために、あえてやってるんです。 ドラゴンさんもそれをわかっていらっしゃるので、顔がこわばりました。 どうやって機嫌をとろうか考えてるんでしょうか。 そう簡単に直してやる気はありませんけどね!
あ、意を決したように話しかけてきました。
「…その、」
バシン!
さえぎるように、一つ強く。
あ、黙りました。 顔がちょっと必死になってきましたね。 ようやく、怒ってる理由を探してる最中でしょうか。
「……」
「……」 おや、なにか思いついたようです。
「…あー、悪かったとは思っている。 が、ほら、お前の魔力って強いだろ? あそこにあるのは全部、繊細な物ばかりで…桁違いな物をだな、感知すると、その、壊れる可能性…が…」
ぱったん、ぱったん。
私のしっぽはまだまだ床を打っています。 メイドさんは我関せずとお茶の準備を着々と進めています。 けっこう図太い子ですね、好ましいです。 勧誘してみましょうかね。
「…えーと、怒っているのは、放置された事に関して、だろう? それは本当に悪かった、が」
バシン!
分かってるなら、言い訳は良いわけ。 です。
「…悪かった。」
ドラゴンさんが近づいてきて、私の前に跪きました。 そのまま手を伸ばして、私の頭をわしわしと撫で始めました。 良い気持ち。 …いえ別に、知らない所でほっぽらかされて寂しかったわけじゃ、ないんですからね!
そんな事を言ったら言い訳してるように聞こえると思ったので、くりゅんと彼を抱きこむ形で丸まりました。 アナコンダさながら、締め付けてやりましょうか。 やりませんが。 そんな事をしてたら、彼に軽く笑われました。 …ああ、もう! もう一発、いつの間にかとまっていた尻尾のうち付けを再開しました。 それ以上は、なにもしなかったんですけどね。
少々時間がたった後、誰かが部屋に入ってきました。 誰でしょうか。 ちょっと頭を上げてみてみると、そこには白い仮面と黒いフード付きの上着をすっぽりと被り、同じく真っ黒いシャツとズボンとブーツを身に着けた…つまり、陰気臭い人が立っていました。 彼の右手にはピンク色の水晶玉がついた、これまた真っ黒な杖が握られています。
「ああ…君が、【焔の要石】かな。 はじめまして、さっきは失礼をしたね。 ボクは直樹っていうんだ、よろしくね?」
……イラッ。
「…ふん。 よろしくする気があるようには、見えんがな?」
ドラゴンさんが驚いています。 初対面でここまで警戒したのは初めてですから、しょうがないっちゃしょうがないんですが…なーんか、生理的に嫌なんですよね。 こいつ。なんか言葉の端々に(笑)が含まれてるような声なんですよ。 つーか、焔の要石ってなんですか。 そんなの聞いた事ないですよ。
「あれれ、そんな事ないんだけどな。」
「友好的だと思ってもらいたいのなら、せめて顔ぐらい見せたらどうだ。」
「あ~、そりゃそうだねぇ。 でも、ちょっと無理かなぁ。」
…あああもう! 何でか知りませんが、イッライラしますね。 こいつ。 のっだーりしてる喋り方もそうですが、馬鹿にしてんのかと。 …ああ、尻尾のぱたぱたが再開してしまいました。
「無理っていうのはね? 今はちょっと事情があるからでぇ、」
「おい、直樹、」
ええまあ、我慢するのはやぶさかではないですよ。 私の巣で好き勝手にやっていやがったゴミを引き取ってくれたんですから。 ドラゴンさんいわく、こいつに預けておけば、私の望むようになるって話ですし。 ええ、これぐらいは…
「その事情っていうのもぉ、あ、君には分からないだろうけどねぇ?」
「直樹…?」
「ま、我慢してくださいよ、ね? 僕の大事な下僕を貸してあげてるんですし、これぐらいh」
ガッ。 ぶちぶちぶちっ。
…何の音かといいますと、私がそれに踊りかかって半分に引きちぎった音です。 私の事なら好きなだけ罵倒すればいいですが、さすがに堪忍袋の尾が切れちゃいました。 てへぺろ。 まあいいよね! 私ここで一番偉いもんね! という訳で、租借して飲み込みます。 うーん、デリーシャス! さすがに人間はまだ食べた事がありませんが、皆こんな味なのでしょうか。 お肉なのに、なんか甘いです。 雑食はすっぱくなるって聞いたんですがね。 あと、なんかふわふわでとろとろです、…?
「良くないですよぉ。」
「…む?」
なぜか、今食った物の声が、メイドさんから聞こえてきました。 比較的可愛らしい女の子から、低い男の声。 やけにシュールです。 いつの間にか、眼下にはお肉ではなく人型のケーキが転がってました。 寄代のつもりなんでしょうか。 しかし、これで変な感触の理由が分かりました。 …ずっと止まってるのもあれなので、租借を再開します。 あ、これけっこう美味しいですね。 中のクリームが絶品です。 彼女?はお茶道具を並べ終えたのを見とどけた後すくっと立ち、私達に向き直りました。
「…直樹、お前…」
ドラゴンさんの信じられないという顔を見て、メイドさんはそれはそれは可愛らしく笑いました。
そして、顔をはがしました。 びりびりと。 …ちょっと心臓止まるかと思ってしまいました。 びっくりさせないでほしいです。
「我らが陛下…、真に申し訳ございませんでした。 ああ…、どうか一欠けらの慈悲でもその御身にあるのでしたら、私めの言葉程度ではありますが、申し開きを御耳に入れる事をお許しくださいませ…。」
男の顔で、男の声で、メイド服姿で。 かつ、綺麗な動作で跪いた眼前の青年は、暗い蒼色の瞳と濃い茶髪をしていました。
「…は?」
「ええ、貴方様が戸惑うのも、無理はないでしょう。 実はこの不肖で臆病な人間は、怯えてしまったのでございます。 何せ、貴方様の様な上位種にお目通りなぞ、今まで一度もかなわなかったが故に…。 ですので、失礼かとは思いましたが…少々ばかり、ご性格のほうを試させて頂いたのでございます。」
…というかなんなんですか、このいかにも演技ですよと叫んでいる寸劇は。 私の頭がドサクサ妖精を召還しかけてるんですが、もうゴールしてもいいよね。 しかしまあ、声だけでなく顔もけっこうオーバーリアクションしてますが、納得は行きます。 一応ですが。 それに、ドラゴンさんのお友達です。 悪いヒトではない…と、思います。 そう信じたいです。
「…お前の理屈は理解した、が。」
「は、何でございましょう。」
「試したほうが不興を買うとは考えなかったのか?」
「そこはそれ、そこに在る我が友の言の葉を信じたまででございます。」
わーお。 豪胆なのか臆病なのか、千尋わっかんなーい☆
…失礼、少々ばかり脳内キャパを突破されたようです。 いったいなんですかこの訳の分からない生き物は。 そこまで信じてるなら、最初から全部信じてあげようよ! ほら、ドラゴンさんなんて手で顔を覆ってますよ。 そして彼は、ふかーいため息をついて言いました。
「直樹…お前、それ、他の方にはやるなよ? セン様は話が通じる方であらせられるし、基本的に温厚だから良かったようなものの。」
あ、センっていうのは、外向けの私の名前です。 某ジブリ映画からヒントを得ました。 今だから分かる、某龍さんマジイケメン。 つーか、基本的にってどういう意味ですか。 私はいつも聖人君子そのものじゃないですか常識的に考えて。 まったく。
「やだなー、相手は見てるよ。 ただ、ボクは人間だからねー。 どんな事で怒るか知っておくってのは、とっても大事な自衛方法なんだぁ。」
いきなり口調が砕けたぞこいつ。 なんかでろーって感じになりました。
「…それに見合う成果はあったのか?」
ドラゴンさんが呆れた声音で聞きました。 それは私も知りたいですね。
「うん、よく分かったよー。 ではあるのですが、騙した事については…、心の底より真に申し訳ないと思っております…。」
最後のほうは、私に向けて言いました。 まだ自分に酔いながら、ですが。 …もう、なにもかもが馬鹿らしいので、ふんっと鼻を鳴らして立ち上がりました。
「…セン様?」
心配そうな声でドラゴンさんが問いかけてきます。 それには気も留めず、凝り固まっていた体を丁度いいので伸ばします。 うーん、気持ちいい。 ついでに欠伸も一発。 涙目になるのはどうにかなんないんでしょうかね。
へとけの間のような発音で声を吐き出して、ぶるぶると体を震わしました。 これで完璧に解れました。 さらに、ケーキを全部食べちゃいます。 もったいないので。 という訳で、一つため息をついた後、一番聞きたかった事を口に出しました。
「…別に害意があった訳ではないのだな? ならばもういい。 私が持ってきたあれの処遇について報告しろ。」
「は。 では、こちらにどうぞ。」 ソファを指し示されました。 「ところで貴方様は、『魔術と魔法』について、どれほど理解していらっしゃいますか?」
「一般人程度だが。」
「なら、一応最初から説明させていただきますね。 準備が少々ばかりいりますので、終わるまではお茶会をお楽しみになってくださいませ。」
ちょっとイライラも解けたので、通常状態に戻りました。 手が使えるってすばらしいですよね。 今日のお洋服は黒の袖なしタートルネックの短シャツが一枚。 ぴったりフィットするので気持ち良いし動きやすいです。 例としては、某ネトゲをプレイするゲームの主人公の、1stフォームのあれを想像して頂けると分かりやすいです。 あれのベルトなしのバージョンです。 …え、下はどうしたのかって? 半竜なので必要ありませんとです。
そして持ってきたあれの処遇とその過程を一応最初っから説明してもらったのですが、むずすぎて根本的な事は良くわかりませんでした。 ですが、基本的な事は理解できました。 また、お仕置きそのものはまだ始まってはないってことも。
なんでも、さっき渡されたカード…これがまたタロットカードみたいで、私の中の子供がワクワクしてるんですが…にあれの魂を封印したらしく、いつでも出して使役できるようにした、だそうです。 微妙に不服なんですが、まあいいでしょう。 こき使ってやれば良いだけですし。 個人的には某ギリシャや北欧の神様のように、岩に縛り付けて鳥さん達とかに永劫につんつんされるーとかしてほしかったんですが。
まあ私もね、一応その旨の事は言ったんですが…
◇◆◇◆◇
「お望みならそのように計らわせていただきますが、陛下は苦痛を長引かせるのがお望みなのでございましょう?」
「そうだが、なにか問題でもあるのか? …あ、少し待て。」
「…はい?」
説明しようとし始めた彼をさえぎりました。 だってそろそろ限界なんだもの。 へりくだられる事にはもう慣れましたが、やっぱり長時間話をするとなるとめんどくさいので。
「そう回りくどく話されると分かりにくい。 適当にしてくれ。」
「あ、そういう事なら遠慮なく~」
「おいぃ!?」
おお、なんて珍しい。 ドラゴンさんのつっこみです。 …まあ、家にはボケをかますヒトがいないってだけなんですけどね。 というか、個人的には別に敬語とかいらないんですが。 今はまだ、見習いですし。
んで、なんやかや言い合ってましたが、最終的に適当な敬語って事で両方が手を打ったみたいです。 …あれ、話が脱線してますね。 しょうがないので戻しましょう。 まったく、誰がこんな事をしたんでしょうね。
「で、さっきの話の続きなんだが。」
「あ、そうなんですけどねー、冥界って所の事は知ってるでしょう?」
「冥界か…たしか、
【その地は万年光が差さず、理すら眠りに付かせる永遠が息づいている。
そこでは風精達も静寂を保ち、身焦がす太陽も天より堕ちる。
そこは白き衣を纏う者達の世界。
彼らの灯篭が道を照らし、静かな鈴の音が響くだけの穏やかな世界。】
…だったか。『勇者ヴェルサリスの伝説』という本の受け売りではあるg」
「あ、『聖女ケストラルの章』ですねー。 たしか第二幕の67節目、でしたっけ。 それで大体合ってますぅ。」
なんで節まで一発でわかったんでしょう、ちょっとこの人が怖いです。 私ですらそこまで覚えてない上に、かなりマイナーな物…ドラゴンさんいわく、私のお家にある物を含めて世界に十冊づつ(シリーズ物で、全部で三巻あります)しかないはずの物なんですが。 ちょっと引くと同時に、自分以外にも知ってるヒトを見つけてちょっと嬉しくなっちゃいました。 私のお馬鹿。
「実は、魂だけの存在って、冥界のヒト達にとってはぴかぴか眩しい光の珠みたいに見えるらしくてー、すぐわかっちゃうんですって。 だからそんな風に放置してると、すぐに魂狩りさん達がやってきてもってっちゃうんですー。 そしたら、痛みなんてすーぐなくなっちゃうんですよー。 欠けた部分だってさくっと復元できちゃうしねー、あのヒトたち。」
◇◆◇◆◇
…で、それはたしかに嫌なので、これでいいとしました。 そしてこの後どうやってカードに封印したかとか仕組みとかを説明してもらうのですが、専門的過ぎてぜんぜん分からなかったです。 勉強しても分かるかどうかすら怪しいので、諦める事にしました。
「では、次に『魔術と魔法』についてお話しましょうかー。」
黒板も持ち出してきて、すでに授業のような風体をかもし出してきているこのお茶会。 いや、楽しいんですけどね。 …ん、ちょっとまってください。
「それはかまわないが、なんでその話をする必要があるんだ?」
「先ほど私が陛下の二つ名を呼んだとき、不思議そうな顔をなされたでしょー? ですので、一応説明しようかとも思ったのですがー、基礎を知らずに理解できる話ではありませんので。」
「わかった、続けてくれ。」
「我らが陛下の望みのままにー。 …んー、でもなんでアラ君はこんな事すら教えてないのー?」
「別段急ぎで知るべき事でもないからな。 気が向いたら教えるつもりだった。」
ん? アラくん? え、ドラゴンさんって名前あったんですか? 名づけしてくれって言わないから、なんか変だなーとは思っていましたが。
私が疑問に思っているのを感じたのか、こっちに振り向いて話してくれました。
「…そういえば、まだ言っていなかったな。 すまなかった。 …後で話すのでもいいか?」
そういえば、お外なのに敬語じゃないんですね。 他人が居るのに。 …お友達だからなんでしょうかね。 彼らが信頼しあっているのが見て取れて、ちょっと嬉しくなりました。
「ん? …ああ、話す必要があるならそれでいい。」
「話す必要? …気にならないのか?」
まさかそこに突っ込まれるとは。 そりゃ気になりますよ。 気にはなってますが、ねぇ。
「お前が言わないという事はその必要がないという事だろう。 なれば無理強いなどと面倒くさい事なんぞしたくもないわ。」
「へー、アラ君の事を全面的に信頼してらっしゃるんですねぇ。」
「いや、九割は本当に面倒くさいだけだと…」
「一割めんどくさくて九割信頼してる、が正しいな。」
あれ、ドラゴンさんの顔が真っ赤になりました。 何故に。