その薔薇の名は
ふわふわしてて、温かい。
私、どうしたんだっけ?
部屋を出る計画をして、ケイト様とお話しして、変な人に…
「変な人」に?
ぱちっ
目を開けると、昨日の不法侵入者さん(ケイト様以下略)が居られます。
そしてこれは抱きしめられてますか?
しかも、何故ハダカ?!
嫁入り前の純粋な乙女に何をしてくれるんですか!!
「やっと起きたみたいですね。おはよう俺の愛しい人。」
「オハヨウゴザイマス。」
何故にあなたはNoリアクションなんですか?!
もしかして、いろんな女の子に…
「緊張しているんですか?貴女はとてもかわいいですね。」
ちゅっ。
唇に柔らかい感触が一瞬。
これは、世にいう、キス?
反応を示さないサラに再び口づけるルシカ。
先ほどよりも深く、奪いつくすように。
「っん!…ぁ!」
ずっとケイトの屋敷の中で育ったサラはキスはもちろんその先のこともしたことがなかった。
あるのは恋愛小説を読んで知った知識だけ。
そんなサラは、キスの最中の息の仕方を知るはずもなく、絶賛酸欠中。
ちょっとぉ!いつまで続けるつもりなの?い、息が苦しい!
苦しさから逃れるようにルシカの胸を叩くも、止める気配はない。
意識がぼーっとしてきたころ、ようやくルシカはサラの唇からそれを離した。
サラの目に入ったのは、二人が口づけていたことを示す、銀の糸。
いけないことをしてしまったような。
長い口づけに息が乱れ恥ずかしさに頬を赤く染める姿は、庇護欲を掻き立てるとともに、めちゃくちゃに犯し尽くしたくなる。
「ふふっ。誘っているのですか?」
「っやぁ!」
初めてのキスという乙女の憧れを、夕日がきれいな花畑で初めてキスするのを夢見ていたのに。
やりきれなさからか、悔しさからか、サラの瞳からは涙があふれ出した。
さすがにルシカもこれには動揺した。
「サラ?!」
「っぅ…昨日から何なの?!た、確かに私だって部屋から出て、外の世界を知りたかったけど!!っふぅ!変態に連れ去られて、挙句の果てにお、乙女のファーストキスを奪われるなんてぇ!!」
踏んだり蹴ったりだ。