その薔薇の名は 7
遅くなってしまいすみません。
「サラ、ここを開けてください!」
激しく扉を叩くルシカを無視して、サラは与えられた部屋のベッドにもぐり込む。
サラに与えられた部屋は白を基調とした落ち着いた部屋だ。
リオナと話した後、サラは今の部屋に案内された。
その後は今のとおり、引きこもった。
「…理不尽だわ。」
私は大人しくこのまま変態と結婚しなければならない運命なのだろうか。
「それに、喉が渇いてきた…」
これが、リオナさんの言っていたことなのだろうか?
半端なく苦しいんですけど!
どれくらいの時間がたったのか、「カチャリ」と鍵を開ける音が耳に届いた。
「…はぁ、誰?」
「いつまでたっても出てこないので、強行手段を取らせていただきました。」
「…サイテー。」
ドクン、ドクン
鼓動がうるさい。
さっきよりも乾きが酷い。
どうして?ルシカのせい?
「サラ?」
もう駄目、我慢できない!
それは無意識にも近かった。
ルシカに抱きつき、その首元に顔を寄せる。
甘美な薔薇の香りに、自分がこの香りに次第に酔って行くのを朦朧とした頭の端で感じた。
―――欲しくてたまらない―――
後先なんて、もうどうでもいい。
今は、この人の血が欲しくてたまらない…
赤い小さな舌で首を舐め、ゆっくりと、牙を立てて行く。
「…んぅ…っはぁ」
コクリとサラが己の血を吸っている現実にカイルは理性を失わないように必死だった。
「…っ!よほど、飢えていたようですね。まぁ、王都に居れば…それも当り前でしょうね。」
サラの頭を優しく撫で、カイルはその後もサラが満足するまで血を与えた。
…結果…
「ご、ごめんなさい!私、止めらなくて。」
「いいんですよ。あぁ、許してあげる代わりに、俺のことを名前で呼んでください。」
ルシカ、只今貧血中。
自分の血を吸うサラが可愛すぎて、ついつい止めるのを忘れてしまったのだ。
本音を言えばサラの飢えを満たしたかったので、結果は万々歳だ。(ルシカにとっては。)
「…サラちゃん、こいつは自業自得だからさ、そんなに負い目に感じなくていいよ。」
「そうですわ。いくらサラちゃんが飢えていたからと言って、無茶のしすぎですわ。」
「…あなた達はいつまで滞在するつもりですか?」
不機嫌さを隠そうともせず、二人を睨みつけている。
私のせいだよね。
カイルさんもリオナさんも私のことを思って言ってくれてるし、止められなかった私が悪い。
「ルシカ、ごめんなさい。」
「!!!」
素直に名前を呼んだのに、何故そんなにも驚いた顔をするんでしょう。
やはり、変態の思考回路は理解できないわ。
ルシカとカイルの名前がごちゃまぜになってしまいます。