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〜第6章〜幾千の哀しみを乗り越えて

アタシは気を失ってしまっていたみたいだ。


あまりにも理解出来なさ過ぎて。


アタシが気を失っていた間、皇王と如月はレジスタニアの丘に行っていた。


レジスタニアの丘は普段は誰も近寄らず、入口も“開かずの扉“と化しているらしい。


目が覚めた時アタシの側にいたのは皇后妃だった。


皇后妃がレジスタニアについて話してくれた。


「ワタクシも聞いた話ですので自信はあまりナイのですが…」


と前置きした上で。


琉冠星が消滅した後神楽達の消息は途絶えてしまい、誰も知るコトは無かったらしい。


その後何十年か経って、突然何者かにサルミナ星が攻撃されたらしい。


ソレがレジスタニアらしいんだけど、たった1人で攻め込んできたそのレジスタニアはサルミナ星に立ち向かった後、あのレジスタニアの丘で最期を迎えたらしい。


敵とは言えども1人で闘い抜いた殊勲を讃えて丘にそのまま埋葬されて、そこはそのまま誰も立ち入らなくなってしまったと言うコトだった。


そのレジスタニアが何のために1人で攻め込んできたかは誰も知らないらしい。


アタシは何だかとてつもなく嫌な胸騒ぎを隠せなかった。


『丘に、連れて行ってもらえますか?』


起き上がり、皇后妃を見据えて言った。


行くと如月と皇王はもういなかった。


何とも言い様のない不思議な空気。


静寂


混沌


狂気


憂慮


この世の全てを包み込んでいるかのような空間。


アタシはてっぺんに立ってそのまましばらく目を閉じていた。


ストーンを握りしめて。


何か聴こえて来ないかなと思って。


アタシ、もしかしたらレジスタニアって神楽なんじゃないかって思うの。


だからもしホントにレジスタニアが神楽だとしたら、ココにいれば何か解らないかなと思って。


しばらくすると如月が現れた。


「どうかなさいましたか?妃杏様」


『何か解らないかなと思って。マリアスさんは?』


アタシの問いに、如月は黙ったまま首を横に振った。


ダメか。


神楽・・・。


マリアスさん・・・。


2人のコトだけを考えて、それからどのくらい経っただろうか。


ストーンから一筋の光が放たれた。


光は丘のある場所に延びた。


アタシはすぐさま光の射す場所に走った。


行ってすぐに、ストーンからまた光が放たれた。


『マリアスさん!!』


何故か光からマリアスさんが映し出されている。


「妃杏様?マリアスさんがいるんですか?」


え゛っっっ!?


『見えないの?』


嘘でしょ??


「妃杏様にしか見えません。ワタクシがこの場所にプライベートレターを埋め込みましたから」


ぷらいべーとれたー???


レターってくらいだから手紙だよねぇ。


如月はどうしてイイか分からずに狼狽えている。


「妃杏様…、大お祖母様がコレを見つける頃、ワタクシは過去におります」


コレはリアルタイムじゃないのか。


背景、ここっぽいぞ?


「さぞや皆様大混乱でしょうね」


当たり前だよ。


すぐさま心の中で突っ込む。


「大お祖母様方をお帰しするどころの騒ぎじゃなくなっているかも知れないコトは、謝っても謝りきれません。ただ、先程大お祖母様のお話を聞いて、我々の運命にケリをつける覚悟が出来ました」


“我々の運命”って??


もしかしてやっぱりそうなの?????


アタシの心拍数は限界を迎えそうになっていた。


「ココにいらしたと言うコトは薄々は御気づきだと思いますので、お話し致します」


聞きたくない。


でも聞かなきゃいけないんだと思う。


どんなハードロックよりヘヴィメタルよりも、今のアタシの心拍数の方が速いよきっと。


倒れないように、前もって座った。


「神楽様は…、大お祖父様はココに眠っておられます」


Oh my God!


unbelievable…


気が遠くなるよ。


たまらずアタマを抱えた。


「妃杏様?」


如月が声を掛ける。


とりあえず手を上げて応える。


感情がコントロール出来なくて、涙も出ない。


何も考えられない。


「大お祖父様は御家族と地球に移住なさいました。妃杏様との想い出の地球をお選びになりました。今現在ワタクシの家族も地球におります。トコロがある時お1人でサルミナ星に攻め込んで来ました。妃杏様を喪った哀しみがどうしても癒えなかったようで」


そんな・・・。


涙を出すコトも出来ない程ショック。


神楽がレジスタニアだなんて.....


「家族には告げずに来たそうですが、サルミナ星に何者かが攻めてきたと聞いた時、すぐに分かったそうです。その後我々が子孫だと言うコトもレジスタニアが神楽様だと言うコトも一切知られないまま過ごして参りましたが、ワタクシはどうしても納得がいかず、このサルミナ星の皇家にお仕えし、大お祖父様の気持ちや大お祖母様の護ったこの星を確かめようと思いました。あわよくばいつか大お祖父様の仇をとも考えていました」


マリアス・・・さん。。。


衝撃が強すぎてアタマがガンガンする。


処理し切れないよ。


「ですがあんなに嬉しそうにお話しなさっている大お祖母様を見て、だったら大お祖父様に攻め込むのを留まってもらおうと決めました。ですのでワタクシは神楽様を止めに参ります」


ソコでマリアスさんは消えた。


心拍数はまだMAX。


だけど不思議と苦しさはなかった。


そばに神楽がいるから?


この下に神楽が眠っているのかと思ったら、不謹慎な話だけどモーレツな安心感がわく。


アタシはたまらず寝転がっちゃった。


「妃杏様?御加減が優れませんか!?」


メチャクチャ慌てる如月。


『この下に神楽が眠ってるの。マリアスさんはレジスタニアを止めに向かったわ。皇王に伝えて!!アタシはココにいるから』


空を仰ぎながら如月に伝えた。


如月はさすがにコトバになって無かったケドとりあえず無言のまま皇王の元に向かってくれた。


時空の歪みって、こんなメチャクチャなモノなの?


そりゃ“時の迷子”は戻って来れなくもなるよな。


アタシも今、正直帰りたくないモン。


「妃杏様!!」


皇王が現れた。


「マリアスの居場所を突き止めました。妃杏様も参りますか?それとも元の時代にお戻りになりますか?」


ドキ→→→→→ン!!!


せっかく治まった心臓がまた暴れだす。


どうしよう…。


どうしたらイイの??


アタシが直接神楽を説得?


だけどそんな神楽を見たくない。


だけどマリアスさんや遺されたみんなのコトを思ったら、行くしかないよね…。


神楽、どうしたらイイの?


アタシが行ったら思い止まってくれる?


でもいるハズのないアタシが、しかも過去のアタシが行っても思い止まってくれる?


この下にいる神楽に向かって…。


でもこれでマリアスさんのトコロに行っちゃったらどんだけタイムトラップしまくってんだろう。


元の時代に戻るの怖いなぁ。


!!!!!!!!!!


そうだっっっ、どうせなら行っちゃうか!!


“なりません!!”


んんんんんんんんんん??????????


何今の!!!!!


神楽の声、、、だよねぇ。


神楽?????


どっちの神楽?


この下にいる神楽?


それとも過去の神楽???


『神楽様?????』


アタシは叫んでいた。


“ワタクシは後悔しておりません。1人でいるコトに疲れただけです”


涙が溢れていた。


この下の神楽だね。


“マリアスに説得されても恐らくワタクシは同じコトを言うでしょう。ですからマリアスも直に戻るでしょう。どうぞ妃杏様もお戻り下さい。ワタクシが待ってますよ”


神楽…。


たくさんのアタシの涙が神楽の眠る丘に染みていく。


『何もレジスタニアになる必要は無かったじゃない!アタシのしたコトが無駄になっちゃうでしょ?神楽らしくないコトしないでよ!!だからアタシは神楽を助けに行く。2人の大事な家族に囲まれて暮らしてよ。ねっ?お願い!神楽…』


泣きながら訴えた。


神楽からの答は何も無かった。


『アタシも行きます』


涙を拭いて、皇王の元に向かった。


神楽を助ける為に。










マリアスさんのデータを元に着いたのは、ちょうど修羅場真っ最中の2人の場面だった。


『神楽…』


神楽の顔は鬼気に溢れていた。


足がすくむ。


涙で姿がボヤけて見える。


神楽が2人いるようにしか見えないよ…。


「妃杏さ…、ま?」


かなり驚いている神楽。


そりゃそうなんだけどね。


「妃杏様!皇王様も!!」


マリアスさんも驚愕。


気まずそうな顔して。


神楽はすっかりお祖父ちゃんになっていた。


でも涙が込み上げていた。


さっき、下に眠る神楽に言ったコトバを叫んだ。


すると神楽は絶句。


緊迫した空気が流れる。


「自分のコトしか考えず、申し訳ありませんでした。何ともお恥ずかしい限りです」


神楽は笑顔になっていた。


良かったぁぁぁ。


その場に座り込んでしまった。


「まさかココに来て過去の妃杏様と未来の子孫にお会い出来るとは思いませんでした。それだけで十分です。帰ります」


神楽は穏やかだった。


「神楽様!!」


「如月様!」

『如月?』


いつの間にか如月が来ていた。


「様なんてお止め下さい。神楽様に様呼ばわりされるのは性に合いません」


照れまくりの如月。


そっか、この時には如月は“様”なんだね。


皇女の旦那様だからね。


ちょっと感傷的になる。


「コレ、ワタクシにはもう必要ありませんから。神楽様がお持ち下さい」


そう言って如月はストーンのカケラを神楽に渡した。


『如月…』


ちょっとウルウル。


驚き硬直する神楽。


「御守りです」


如月の笑顔はサイコーに輝いていた。


神楽はその後地球に帰って行った。


「じゃ、ワタクシ達も帰りますか」


如月もアタシもスッキリしていた。


思い残すコトもなく。


帰ったらどんな状態になってるかとか、全く気にならなくなっていた。


むしろ、楽しみだった。


“どんな未来が待っているんだろう”


じゃなくて、


“どんな過去が待っているんだろう”


って、とってもおかしな気分だけど。


神楽、どうしてるかなぁ。


「神楽様、今頃寝込んでんじゃないですか?」


茶化す如月。


神楽に逢いたい。


『帰ろっか』


「ハイ」


『帰ったら如月は如月じゃなくなってるのかなぁ』


アタシ、呟いた。


「妃杏様…」


ちょっと寂しいね。


如月の幸せはもちろん嬉しいよ。


だけど、


“妃杏様がいてマネージャーがいてワタクシがいる。最強ですね。”


ずっと続くと思ってたのにな。


「我々が戻る頃はまだ皇子が継承権をお持ちなんですからまだ大丈夫ですよ。そう簡単に妃杏様のマネージャーは渡しません」


『如月…』


微笑む如月が、頼もしかった。


「でも、神楽様はやっぱり最後まで妃杏“様”なんですね」


如月…。


まさかアタシがそのコトで悩んでたコト、気付いてたの?


モーレツにどぎまぎした。


「だから神楽“様”って呼ぶようになさったんですよね。皇女とお話なさってる時も、切なそうな顔をなさってましたから」


涙が出そうだった。


『神楽は何が起きてもきっと一生アタシは妃杏様なんだろうなって気づいたの。だから開き直るしかないかなと思って、じゃあアタシが同等に見ようと思ったの』


改めて言うのは照れくさかった。


「神楽様の生真面目さにも困ったモノですね。女心がまるで分かってないんですから」


ぷっっっ!!


如月が言うとおかしくて笑っちゃうよ。


でも確かに如月は神楽よりは遥かに分かるかもね。


『神楽にタメ口止めろって方がムリだよ。それこそ寝込むんじゃない?』


2人で顔を見合わせて笑い合った。


敬語でもタメ語でも神楽は神楽だ。


アタシの婚約者だ。


・・・・・・・・・・


イヤ、違うかも…。


やっぱり帰るの止めようかなぁ.........


「でも妃杏様?タイムトラップは、歴史をいじった時に出来るモノですよねぇ。今回ワタクシは歴史をちょっといじりましたが、その後の出来事は歴史ではなく未来のコトですから何も変わらないのではないですか?」


おぅっ???


・・・・・・・・・・、そうだねぇ。


はっっっ!!!!!


『じゃあみんな如月を忘れたままの過去に戻るっての?』


アタシは叫んでしまった。


「ワタクシは皇女と結婚するんですよ?」


・・・・・・・・・・そうだった。。。。。


どう言うコト!?


神楽もアタシの婚約者じゃなくなってるのに2人の子孫は確かにいた。


やっぱり何らかのトラップが発生してるんじゃ…。


「とりあえず帰りましょ!行けば分かりますよ」


ったく!!


そりゃあそうだけどさあ。


何なのよ、人が心配してる隣で!!!


自分は結ばれるって解ってるから早く帰りたいもんだからって…。


顔が尋常じゃない程にほころんでるよ。


確かにアンタの言う通り“行けばわかる”かも知れないけどさぁ。


はぁぁぁぁぁ。


深く大きなため息。


やっぱり歴史はいじっちゃダメなんだね。


つくづく痛感。


約1名浮かれてるヤツはいるケド。


どうせなら神楽のアタシに対する接し方が変わっててくれたらイイのにな。


さっき“敬語でもタメ語でも神楽は神楽だ。”って言ったばっかりなのにね。


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。


また深い大きなため息が出ちゃうよ。


「大丈夫ですよ。きっと大丈夫です」


如月の笑顔が珍しく眩しく見えた。






















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