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〜第4章〜with out you

皇女に正体不明の物質のコトを話せたのは、判明した翌日の夜だった。


と言ってもアタシの口からでは無く。


お母様に言われたの。


“「今回、皇女からの御依頼で妃杏達が調べたコトはワタクシから皇妃に話します。その上で結果は皇妃から皇女に話してもらうようにワタクシが伝えますから、妃杏は皇女が言ってくるまで黙ってなさい」”


って。


アタシは何も言わず受け入れた。


だって下手にアタシが話して皇女の気持ちを逆撫でなんてしちゃったらと思うととてもじゃないケド言えないよ。


“皇女の言う通り、実はみんな気付いていた”


なんてデリケートなコト、アタシには言えるワケ無いよ。


だからお母様の言う通りにしてお母様にお任せするコトにしたの。


アタシはただひたすら如月の無事を祈って。


もちろん、如月が過去にいるコトはウチらダケの秘密だよ。


あくまでも如月はまだ休暇中。


そりゃいくらなんでも言えないよ。


そう言えば、bossに如月の気持ちがバレちゃった時、真っ先に弁明したのは神楽だったそうで。


“「上司のワタクシが手本になっておりませんのでこれは完全にワタクシの責任です!!」”


って深々とアタマを下げたらしく、さすがにbossも笑うしかなかったって。


如月が言ってた。


“「ホントに神楽様にはどこまでもアタマが上がりません」”


って目を細めながら話す如月もまた、カッコよかったな。


アタシまで嬉しくなったしね。


ホントに部下想いなんだね、神楽は。


アタシはどこまでも周りに恵まれてんだなって思う。


神楽の言う通り、確かにアタシは誰よりも護られてるのかも知れない。


「如月は無事に到着したようですよ」


神楽が現れた。


空いてる時間はずっとPPで如月のコトを見守ってあげてる神楽。


アタシと神楽とbossのPPから逐一如月の行動をチェック出来るようにプログラムしてくれたみたいで、アタシも気になって、暇さえあれば見ている。


今は公務でずっと見れなかったから気にはなっていたんだ。


ソレを見計らってか、神楽が教えてくれた。


「アイツには強力過ぎる御守があるから大丈夫ですよ。ご安心下さい」


うわぁぁぁぁぁ。


久しぶりだワ、神楽の“ご安心下さい”光線!!


神憑り的なパワーは未だ衰えず。


地球にいた時はしょっちゅうこの光線にヤラレてたケド、こっちに来てからはご無沙汰だったから、久しぶりに見ると通常の何万倍も強力に見えるワ。


『皇女の為って言う、目には見えない凄まじいパワーも如月にはあるからね』


アタシは微笑ましくなっていた。


“誰かの為に”ってパワーは、計り知れない力を産み出すコトがあるって、何かで聞いたコトがあるから。


羨ましくもあるけどね…。


「それよりも心配なのは皇女です。それとなくマールス様にはお伝えしておきましたが」


一転、暗い空気が漂う。


『アタシも心配です。如月が間に合えばイイんだケド、まさかそれはさすがにナイですよね』


「ハイ…。1人ですからね。イントルードも何も使わないで1人で、と言うのは時間を要しますからね」


神楽の表情が神妙だ。


リスクを最小限に抑える為、何も技術は使わない方がイイってコトになったの。


だから、如月の直接交渉しか頼れない。


“「それでもイイ。無事に戻って来られて、皇女の記憶から消えない為なら」”


って、覚悟を決めてたよ。


今までの如月とは思えない程カッコよくて男らしくて、何よりも潔かった。


ほんの一瞬だけドキッとしちゃったもん。


「マールス様がおられますから大丈夫だとは思いますが」


もう頼れるのはソコしか無い。


アタシと神楽や如月と違って、皇女とマールスさんは皇女が産まれた時からの付き合いだ。


皇女のコトを誰よりも知ってるのはマールスさんだ。


だからマールスさんを信じるしかナイのだケド…。


気掛かり、2つ・・・。










「妃杏、今から行ってもイイかなぁ」


夜、皇女のコトを思いながらぼんやり月を眺めていたら、皇女がモニターに現れた。


ドキッとしてしまった。


『どうぞ。お待ちしております』


暗い雰囲気の皇女につられてアタシまで暗くなってしまっていた。


「boss達も呼べるかな。あと妃杏ママも」


ドキッ!!


如月は、、、、、


『かしこまりました』


まさか休暇中とは言えないよな。


皇女の依頼の真っ最中にノンキに休暇中ですなんて、言えるワケが無い。


仕方無い、出張とでも言っておくか。


お母様とbossはすぐに現れた。


神楽は遅れて登場。


如月のコトが気にはなるケド。


こっそりPPはONにしたまま。


「色々迷惑掛けてゴメンね。ママから話は聞いたよ。妃杏ママにまで迷惑掛けてしまって申し訳ありませんでした」


いつになく弱々しい皇女に、アタシは身が引き裂かれそうになる。


「とんでもありません。お役に立てず何とも申し訳ありません」


お母様も恐縮気味。


「ママに言われました。“皇家の人間である以上、まずは国のコトをお考えなさい”と」


アタシはイッキに涙が溢れた。


ダムが決壊したように涙が溢れた。


と同時にお兄様のコトや自分のコトがアタマに浮かんだ。


皇家の人間だと言うコトを忘れて地球で何不自由なくアタシが暮らしている間、お兄様は皇家の人間であるにも関わらず継承権がなくてもがき苦しんでいたコト。


当時のお兄様のお気持ちと今の皇女のお気持ちが、違うようで同じなんじゃないかと思って胸が苦しくなって。


すぐに嗚咽に変わった。


「妃杏?」


「妃杏様、こちらへ」


お母様や皇女が声を掛けてくれる中、神楽がアタシの肩を抱き寄せて部屋から出るように促してくれた。


「失礼致します。皇妃様、boss、お願いします」


「分かりました。妃杏をお願いします」


アタシはうつ向いたままでみんなの様子を伺い知るコトは出来なかったけど、皇女の声がヤケにツラかった。


アタシは神楽の部屋にいた。


シンプルと言うか殺風景な部屋。


でもコーヒーの薫りが染み付いていて、何だかとっても落ち着く空間だった。


「大丈夫ですか?」


大きなため息をついて、アタシは落ち着かせながらゆっくり話し始めた。


『“皇家の人間”ってコトバがどうしようもなく胸に突き刺さったの。アタシがいない間のお兄様のお気持ちを考えてしまって…』


「そのお返しは十分過ぎる程になさったではありませんか」


神楽の声がいつもに増して胸に響いた。


「しかも妃杏様はツラい別れと決断を経験なさったんです。ご自身を責めるのはお止め下さい」


“ツラい別れと決断”


確かにソレはそうだけど。


「大丈夫です。涙をお拭き下さい。皇女が心配なさってますよ」


顔を上げると神楽の眩しい笑顔があった。


『皇女の気持ちはアタシには分からないけど、同じ皇家の人間なんだと思うと自分が情けなくて…。お兄様のコトも』


涙はもう無かった。


「大丈夫ですよ。ご安心下さい。」


ちゅど→→→→→ん!!


“ご安心下さい”パワー、恐るべし…。


涙がまた溢れたよ。


何も言ってないのに神楽はジェルシートを差し出してきてくれた。


『ありがとう…、ございます』


「後は如月に全てを託すまでです」


そうだね、確かにそうだ。


気を落ち着かせて、部屋へ戻った。


『失礼致しました』


皇女はすっかり笑顔に変わっていた。


「ではワタクシは失礼します。皇女、ごゆっくり」


お母様はアタシの表情を確認して退室した。


「ありがとうございました」


皇女の表情は清々しかった。


「ではワタクシもこれで。ごゆっくりどうぞ」


bossも出ていった。


「では妃杏様、皇女とベランダへでも出られては?我々はコチラで待機しておりますから」


神楽まで…。


マールスさんも笑顔で頷いてくれて、オンナ2人のトークは、明け方まで続いたのだった。










如月のコトは気になってたケド、皇女とのトークも楽しくて。


こんなにゆっくり話したコトなんて無かったし。


アタシが地球にいた時の思い出話にもなって、皇女が璃音に似てるって話もしたら皇女も凄く喜んでくれて。


「妃杏はステキな経験をしたんだね」


って言った時の皇女の顔が印象的だった。


どことなく切なそうで…。


でもアタシだって皇女が羨ましいですよ。


“恋してる”んだから。



「妃杏様!妃杏様!!」


ん?


ンンン??


ひゃぁ!!?


神楽が目の前に!


「おはようございます。お食事のお時間です」


『え゛っっっ』


飛び起きちゃったよ。


「お休みになっておきますか?」


うわっっっ!!もうこんな時間なんだ…。


気が付いたらベランダで座ったまま寝てたよ。


『今日の予定は?』


寝ぼけ眼、全開爆裂!


「本日はアカデミアと執務です」


ふぅ。


ため息をついてみる。


『すぐ参ります』


ゆっくり立ち上がる。


「かしこまりました」


神楽は出ていった。


それにしてもビックリしたぁ。


まさか目の前にいるなんて。


ってコトは何度も呼ばれたんだろうな。


ひやぁぁぁぁぁ。


ヘンな汗かいちゃったよ。


『遅くなりまして申し訳ありません』


動揺を隠してみんなの元へ行った。


そう言えば昨夜から全然如月の様子見てないや。


後でチェックしないと。


まぁ逐一チェックしているbossや神楽から何も言われないから何もないってコトなんだろうけどね。


食後、さっそくアカデミアまでの間に如月に連絡してみた。


『おはよう如月』


「おはようございます妃杏様」


元気そうね。


安心。


「どうやら今はまだ侵攻前のようです。皇大王様にはまだ会えておりません」


ふぅ。


道のりは長いな。


相手は皇女のお祖父様の現皇大王なんだから、当然アタシも神楽もbossもまだ生まれてない。


つまり如月は誰も味方がいない。


やっぱり条件、キツ過ぎたかなぁ。


「イグアス星にも行ってみますね」


とってもイイ顔の如月にひと安心。


じゃ、アカデミアに行きますか。


..........


ん?


ストーンが光ってる。


どうしたの??


心臓が自然と速くなる。


何だろう…。


『失礼します』


一旦退席。


「如月に何かあったんでしょうか…」


神楽も不安そう。


PPで状況をチェックしてみよう。


ん?


ンンン???


繋がらない…。


如月をキャッチ出来ないよ?・・・。


どういうコト!?


神楽の表情にも緊張が走る。


アタシはアカデミアを早退して神楽とbossルームに急いだ。


当然気付いたbossは懸命に対応をしてくれてるんだけど。


突然光が点滅に変わった。


イッキにイヤな空気が漂う。


如月に何か起きてる?


まさか身に危険!?


『行かなきゃ!!』


黙っていられなくなった。


「妃杏様はいけません」


bossに止められる。


『行きます!!』


アタシは突っぱねた。


bossに突っぱねたのなんて初めてだった。


「妃杏様!!」


神楽の声が荒々しかった。


『じゃあどうすればイイのよ!!!』


神楽の表情が曇った。


神楽に噛みついたのも、琉冠星に来てからは初めてだった。


「現在原因解明と復旧を急いでおります。お待ち下さい。妃杏様はお部屋で待機なさっていて下さい」


険しい表情のbossに、アタシはおとなしく従うしか無かった。


神楽に促され部屋に向かっていたけど、アタシは裏庭に進路を変えた。


部屋で待機なんて、今は無理だった。


神楽はbossルームに戻り、bossと原因解明に努めてくれている。


アタシはただひたすら祈っていた。


如月の、朝のあの笑顔を思いながら、


如月の無事を。


イグアス星に行ったハズの如月なんだけど。


“お願いします!如月の居場所をお導き下さい”


ひたすら祈った。


祈って祈って祈り続けた。






「妃杏様、ココにお出ででしたか。お身体に障ります、戻りましょう」


神楽が迎えに来てくれた。


『如月が心配で、つい』


「如月?それはどなたですか」


ぁん??????????


耳を疑った。


たまらず超変顔になる。


「どうかなさいましたか?御部屋に戻りましょう。」


いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!


夢よコレは!!


アタシは悪い夢を見てんのよ、きっと。


でもアタシ、裏庭にいたよねぇ。


今もいるよ。


まさかアタシ、裏庭で寝てんの!?


『どなたですかって、アタシのマネージャー』


恐る恐る言った。


「何を仰っておいでですか?妃杏様のマネージャーはワタクシではありませんか」


とても冗談を言ってる雰囲気じゃ無かった。


ダメだ、気を失いそう…。









どうやら夢じゃなさそうだ。


bossさえも如月を忘れている。


どうなってんのよ一体。


まさか完全に迷子になっちゃったっての??


アタシはまたしても裏庭にいた。


ココしか居場所がない気がして。


『如月…』


涙が止まらなかった。


ストーンは点滅したまま。


如月、ドコにいるの?


PPで如月の位置を改めて確認してみても、やっぱりサーチ出来ない。


気がおかしくなりそうだよ…、如月。


このストーンの点滅はきっと如月の異常を示しているんだと思う。


だけどどうも出来ない。


どうしたらイイの?


プラチナムマウンテンに祈るしかないよ、もう。


“妃杏様”


『如月!!!』


如月の声だ。


ストーンの点滅が眩い光に変わった。


『如月ぃぃぃ!!』


とにかく叫んだ。


『ドコにいるの!?』


姿が見えない如月に向かって。


「申し訳ありません、迷子になっちゃいました。もう戻れないです」


如月の声が笑っていた。


『何言ってんのよ、帰ってくるって言ったじゃない。ストーンもあるんだから諦めないで!ストーンに祈って!!アタシも祈るから』


泣きながら叫んだ。


如月の顔が焼き付いて離れない。


「皇女とガイルが婚約しなきゃソレでイイです」


!!!!!!!!!!


如月…。


『ふざけないで!。それでもアタシのエージェントなの?そんな弱っちいエージェント、認めないわよ』


考えるより口が先だった。


「でも侵攻は防げましたよ。防いだと思ったら、時空の歪みにハマっちゃってドコにいるのか分かんなくなっちゃいました。お恥ずかしい限りです」


『ちょっと待ってて』


アタシは猛ダッシュで部屋に戻り皇女にコンタクトを取った。


「どうしたの?妃杏」


様子は至って普通だ。


『皇女って婚約者いましたっけ』


息を切らすアタシにヒキ気味の皇女。


「いないよ、んなもん。何言ってんの!?」


笑い飛ばされた。


・・・良かったぁ。


『失礼致しました』


再び裏庭に走った。


『如月ぃぃぃ!!アンタは無事、任務を遂行したよ。皇女に婚約者はいなくなってるよ』


「良かった。ソレだけで十分です」


『ふざけんじゃないわよぉぉぉぉぉ!!!!!』


涙が止まらない。


力の限り叫んだ。


その瞬間、マウンテンが神々しい光を放った…。




















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