〜第3章〜愛は時間をこえて???
如月に休みをあげて数日。
神楽と2人きりの日々が何だかモーレツに照れ臭い。
婚約者なのにアタシのエージェント。
とっても変なカンジ。
神楽が婚約者になってからはずっと如月が神楽の代わりに色々やってくれてたから。
bossと神楽で作ったシステムは今イグアス星に滞在中。
透明で超小型だからバレない(ハズ)。
いくら技術の進歩とは言えスペースシャトルとか探索衛星がこんなに小さくなっちゃうんだから、進化って凄いよね。
しかもエンジンも何も無くて。
コレをアタシがいた時代の地球の人達が見たらどう思うんだろう。
2人の開発したシステムは、この前の“サルミナ星に存在しない性質の物体”を解析するためのモノ。
だからイグアス星の至るところに行けるようにプログラミングしてある。
後はこっちのコントロールブースで逐一チェックするダケ。
でも飛ばしてもう2日くらい経つのに何の結果も出ない。
あの物体…何で解析出来ないんだろう。
“「人為的に出来たモノでしょう。それにしても化合物が判明出来ないのも不思議です」”
boss、かなり困窮してたっけ。
bossと神楽のブレインを持ってしても解析出来ないなんて。
“「念のため宇宙空間内にも幾つか同じモノを飛ばしておきます」”
bossは用心に用心を重ねてくれた。
どうやら如月もあちこち探索に行ってるらしい。
如月のプログラミングテクニックは下手すりゃ神楽以上だからな。
でもアタシには1つ引っ掛かるコトがある。
コレで原因がホントにガイルだったとして、婚約破棄まで持っていけるのだろうか…。
ホントにサルミナ星のみんなが黙認してたとしたら意味がないんじゃないだろうか。
って。
神楽に言うと、神楽は少し考えて答えた。
「確かにそうかも知れませんが仮に過去に戻って攻め込むのを止めさせてもソレはソレで必ず婚約しないとは限りません」
言い返せなかった。
“歴史のタイムラグ”だ。
アカデミアで習った。
だったらどうしたらイイんだろう。
『やるだけやってみようよ!』
もうそれしかなかった。
「妃杏様…」
神楽の顔が複雑な顔になってる。
『神楽なら出来るでしょ?迷子にならないようにする方法。お願い!!』
もう“様”とか敬語とか完全に忘れていた。
とにかく懇願した。
神楽は黙り込んでいた。
「お時間を下さい」
やっと発したと思ったらそう言って出ていった。
アタシは裏庭にいた。
どうしてイイか分からずプラチナムマウンテンに来ていた。
何をするわけでも無いケドただぼんやり。
「どうかしましたか?」
お母様だ。
後ろからお母様がやって来た。
『何でもありません。何となく来たくなりました』
笑顔で応えたモノのお母様にはバレていた。
「妃杏がココにいる時は何かあった時です」
笑顔で言うお母様にアタシはモノの見事にぐうの音も出なかった。
『もし、私が自分の意思にそぐわない方と、国の都合で婚約しなきゃいけなくなったらどうしますか?』
お母様を見ずに尋ねてみた。
「国の都合ですか…。ちょっと軽々しく言える内容ではありませんね」
胸に何かが突き刺さった。
お母様の答えに。
「母として、娘の幸せは願わずにはいられません。ですが、皇妃としては国の幸せも願わずにはいられません」
・・・・・ですよね。
そりゃそーですよね。
やっぱり過去を変えるしかないよね。
「サルミナ星のコトですね」
エッ!?
とっさにお母様を見た。
「以前王妃から聞いたコトがあります」
『そうでしたか』
お母様が王妃様から聞いていたなんて知らなかった。
「王妃様も大変お心を痛めてお出でで、私もお父様もそのコトは気に掛けております」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
今確かにアタシの脳内で、“ガツン”と音がした。
『ご存知なんですか?』
耳を疑った。
「ガイル王子とのコトは存じております」
うわわわ。
『ではサルミナ星の異変のコトは?』
お母様の表情が変わった。
どうやらそれは知らないらしい。
「どうかしたのですか?」
アタシは瞬間的に感じて、お母様に話してみた。
“何とかなるかも知れない”って。
結局お母様も巻き込むコトになっちゃったけどお母様もboss達と同じコト言ってくれた。
「サルミナ星の異変は琉冠星の異変も同然」
って。
翌日、お母様はお母様のエージェントの雅さんとサルミナ星に出向き異変のコトを然り気無く問い詰めてきてくれたようで、やはり気付いてはいるようだ。
だけど黙認するしかないのもまた現実で。
アタシはお母様の報告を涙ぐみながら聞くしかなかった。
イグアス星に問い詰めたトコロでどうなるモノでもないし、それこそまた戦争になんてなるワケにもいかないし。
ガイルもそんなに大事にするつもりはないだろうし、黙認するしかないのだと。
確かに今は宇宙協定があって、何があっても全宇宙内で争いは起きてはいけないって締結がある。
それを知った上でのガイルの行動。
許せない。
「くれぐれもヘンな気を起こしてはいけませんよ」
ドキッッッッッ!!!!!
胸が痛い…。
『はいお母様』
とりあえず返事。
...その日の昼下がり。
「妃杏様!」
部屋で執務をしていたトコロに突然bossがモニターに現れた。
「化合物がようやく解析出来ました。やはり人為的に出来たモノのようです」
神楽と目を合わせる。
送られてきたデータによると、初めて聞くものばかりだった。
「これじゃ時間が掛かりますよ」
落胆の表情の神楽。
『boss、過去に行かせて!お願い』
もういてもたってもいられないよ。
「私が行きます」
エッ!?
如月の声が。
「昨夜、bossと如月と3人で話し合いました。話し合った結果、如月に過去に行かせます」
神楽…。
「1人じゃ力不足なのは重々承知ですが、時の迷子にならない為にもこちらから逐一指示出来るように我々は残ります。もちろん妃杏様もお残り頂きます」
boss・・・。
アタシはたまらずある場所へ移動した。
「妃杏様?」
神楽の声に耳を貸さず、着いたのは裏庭、プラチナムマウンテンの前だった。
“お願いします、ワタシの変わりにプラチナムストーンを如月に持たせたいんです。小さくて構いません。カケラでイイんです。そうそう簡単なモノじゃないコトは承知しています。でもワタシの分身として持たせたいんです。如月を迷子にしたくないんです!如月の幸せはワタシの幸せです。お願いします!!”
ひたすら祈った。
時が経つのも気にせず祈り続けた。
思えば思うほど涙が流れていて。
必死に祈り続けるアタシの脳裏に今までの如月との思い出が浮かんできて余計泣けてきた。
どのくらいの時間が経っただろう。
祈り続けていたアタシの視界に眩い光が見えた。
顔を上げると天から一筋の光がマウンテンに向かって放たれ、マウンテンから光とその中に輝くストーンがアタシに向かって延びてきた。
祈りが通じた。
感動でカラダが動かない。
涙ダケが溢れてる。
『ありがとうございます!!!!!』
硬直したカラダでアタシは何度も何度も叫んだ。
「ありがとうございます」
神楽の声がする。
神楽の声に安心したのか、カラダが動いて神楽が隣にいるのを確認出来た。
隣の神楽はマウンテンに向かって深々とアタマを下げている。
アタシもアタマを下げた。
“ありがとうございます”
何度も言いながら。
.....
「それにしても相変わらず妃杏様はマウンテンに護られてますね」
歩いて部屋に戻る途中、神楽がふと言い出した。
『何?突然』
神楽を見ると、神楽はフッと笑った。
「ワタクシが知る限り、こんなにストーンとシンクロ出来る御方は妃杏様以外おられません」
『そんな…』
照れるよ。
「そんな御方のパートナーに認められるワタクシは何とも身に余る光栄です」
ぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
恥ずかしさマックス!!
顔から火が出そう。
『ありがとう…、ございます』
うつ向いて、呟いた。
『でもいつの間に3人で話してたの?』
顔を上げて尋ねた。
「妃杏様に“時間を下さい”と告げて出ていった後、その足で如月の元へ向かい、如月にある質問を致しました。“迷子になる覚悟で過去に行けるか”と」
『えぇぇぇ??』
ヘンな声出しちゃったよ。
だって、そんな質問をいきなりしたら神楽が如月の気持ちに気付いてるコトがバレバレじゃないのよ。
「ワタクシとしたコトが迂闊でした」
神楽、うっすら照れ笑い。
「即座に反応しましたね、見事に。妃杏様の代わりにと慌てて補足致しましたがムダでした」
プッ。
吹き出して笑っちゃうよ。
「如月は何も言わず、迷うコトなくワタクシを見据えて大きく頷きました」
何だか男同士の友情ってカンジで羨ましいわぁ。
いつものアタシと一緒にいる如月なら、
“「え゛っっっ!!!神楽様???」”
くらいあたふたしながら言いそうなカンジなのに。。。
「その後2人でbossの元に向かい、3人で真剣に、慎重に話し合いました」
アタシはいつもこの3人の関係と繋がりを羨ましく、誇らしく思っている。
部下と上司を越えた男同士の深い絆がこの3人にはある気がして。
他にもエージェントはたくさんいるよ。
アタシが一番見るのがこの3人だからそう思うダケかも知れないケド、この3人は特別な気がする。
少なくともbossと神楽の間には見えない絆が深く刻まれていると思う。
アタシには入ろうにも入れないであろう絆が。
アタシは1人如月の部屋に行った。
神楽はbossの元へ。
『如月…』
アタシの声に驚き激しくバタバタと音を立てて如月は現れた。
「妃杏様!」
メチャクチャ焦ってる。
「モニターイン(モニターに現れてそのまま入室するいつものパターンのコト)して下さればよろしいモノを!!もしくは呼んで下されば参りますのに」
そりゃそうなんだけどね。
しかも如月の部屋にアタシが現れるなんて初めてのコトだから。
『アタシが来たかったの』
ちょっと弱々しい笑顔で。
「は…、ハイ」
アタシはストーンをギュッと握り締めたままドキドキしつつ、如月の部屋に初入室した。
「神楽様、気付いてらしたんですね」
如月はほくそ笑んだ。
『ホントに如月達の関係が羨ましいよ』
「エッ!?」
アタシの発言に如月は容赦なく驚いていた。
初めて言ったからね。
『自分では“もちろん言いません”とか、アタシにだって言うなって言ってたんだけどね。自分で笑ってたよ、“迂闊でした”って。きっとそんなコト忘れちゃうくらいに真剣だったんだね』
何とも不器用な神楽らしいね。
『人間、自分のコトはまるっきり鈍感だけど、人のコトには敏感なんだって言ってた』
「そうでしたか」
照れ臭そうな如月。
『コレ…』
如月の目の前にアタシは握り締めたままの右手を差し出した。
「エッ?」
ポカンとする如月。
『手を出して?』
ポカンとしたまま言われるがまま手を差し出した如月は、アタシが手を開いて、ストーンを如月の手に乗せてアタシの手を引いた瞬間、とてつもなく短く絶句に程近い声で驚いた。
『アタシが行けない代わりに、マウンテンにカケラでもイイからアタシの分身として持たせたいってお願いして頂いたの。大事にしてね』
アタシの目にも、如月の目にも、うっすら涙が浮かんでいた。
「ありがとうございます!!!!!」
アタマを深々と下げて、声にならない声で叫んだ。
たまらずアタシはアタマを下げたままの如月に抱き着いていた。
『大丈夫、こっちにはbossも神楽もいるし、何てったってストーンが一緒なんだから』
そう言って。
如月は翌朝、過去へと1人、旅立った。