その場所は時に置き去りにされたかのような静けさに満ちていた。
遠く見える樹木は凍てついている。
わずかに触れる氷の粒が、
ここは現実に存在すると訴えかける。
この先に、あのひとはいるだろうか。
足跡は無い、ただ白だけが存在する地面に降りていく。
サクッと微かな音が聞こえた。
雪に足を下ろしたからだろうか、
あるいは春に咲くだろう草花の悲鳴だったかもしれない。
もしこの先にいるのなら、
同じように春を踏み歩いたのだろうか。
あのひとは誰よりも春を待っていただろうに。
足元を見つめ、一度瞬きをしてからまた一歩踏みしめる。
