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異世界転生したら調味料が最強武器でした  作者: 慈架太子


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第6章: 建国記念大焼肉祭

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第6章: 建国記念大焼肉祭


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≪集団農法 Lv.12≫:数千人で一斉に農業を行う効率化スキル。


【新生ルメリナ公国】


【食料自給率】 450% → 1200% (輸出可能なレベルへ)


【特産品】 エルダー・トレント材(超高級品)


「業務連絡。……本日、残業なし」


夕闇が迫る中、直人の声が**≪拡声魔法≫**でベルン全域、および新農場に響き渡った。


「国道開通、および農場完成を記念し、これより**『建国記念・大焼肉フェスティバル』**を開催する! 全国民、ナイフとフォークを持って広場へ集まれ!」


「「「うおおおおおおおおッ!!!」」」


2,400人の工兵団と、3万人の市民の歓声が地響きとなって空気を震わせた。


【プロジェクト:超規模・焼肉大会】


直人の指揮の下、ベルン中央広場から大通りにかけて、前代未聞の宴会場が設営された。


1. 燃料:神話級の贅沢 「火種はどうしますか、ボス?」 「さっき狩った**『エルダー・トレント』**があるだろ。あれを炭にする」


「ええっ!? 神木の素材を……ただの炭に!?」 工兵が絶句するが、直人は**≪パイロキネシス≫**で乾燥・炭化させた最高級の「神木備長炭」を惜しげもなく大量生産した。 この炭、火力が安定している上に、燻製のような極上の香りを肉に移す効果があった。


2. 設備:石板グリル 「≪地属性魔法≫、展開!」 地面から数千個の石造りのグリル台が隆起する。


3. 食材:まずはホルモンから ドササササッ! アイテムボックスから、真っ白に下処理されたオークのシマチョウ、鮮やかなレバー、ハツなどが山のように積み上げられた。


「では、新生ルメリナ公国の輝かしい未来と……俺たちの胃袋に!」


直人がジョッキ(中身は錬金術でキンキンに冷やした極上のエール)を掲げた。


乾杯プロージット!!」


「「「乾杯ァァァァァッ!!!」」」


「よし、まずは**『ホルモン』**からだ! 脂の美味さを知れ!」


直人の号令で、一斉に数万個のホルモンが熱せられた石板や網に乗せられた。


ジュウウウウウウウウウウッ!!


凄まじい音が響き、真っ白な脂が溶け出して炭に落ち、ボッ、ボッ、と炎が上がる。


「こ、これは……魔物の臓物ですか?」 「見た目は白いが、本当に食えるのか……?」


市民たちはフォークを手に戸惑っていた。この世界では内臓は廃棄するか、貧民が煮込んで食べる程度のものだ。焼いて食べる習慣はない。


「騙されたと思って食ってみろ。味付けは、この**『精製塩』**のみだ!」


直人は山盛りの純白の塩を指差した。タレなどという高度な調味料はまだない。だが、素材が最高なら塩だけで十分だ。 市民たちは恐る恐る、カリッと焼けたシマチョウに塩を振って口に運んだ。


「……んぐッ!?」


咀嚼した瞬間、彼らの目がカッと見開かれた。


「な、なんだこれは……ッ!!」


パリッとした皮目の弾力。その後に口の中で炸裂する、濃厚で甘美な脂の奔流。 臭みは一切ない。**≪ピュリフィケーション≫**で磨き上げられた純粋な旨味を、鋭い塩気が強烈に引き立てている。


「あ、あまい……! 脂が甘いぞ!」 「噛みごたえがたまらん! 噛めば噛むほど味が湧き出してくる!」 「エールだ! エールを持ってこい! この脂を酒で流し込むのが最高なんだ!」


広場のあちこちで絶叫に近い歓声が上がる。 初めて知る「ホルモン焼き」という食文化の衝撃に、市民たちは理性を吹き飛ばされた。


「ひ、姫様……! こんな……こんな美味いものが、この世にあったとは……」 ある老人が、脂で口をテカテカにしながらエレナにすがりついて泣いた。


「……ああ。存分に食え。これが、我が国の『日常』だ」


エレナもまた、フォークで刺したハツ(心臓)のプリプリとした食感を楽しみながら、感無量の表情を浮かべていた。


「……サクサクとした歯切れの良さ。そして血の味がしない、純粋な肉の味。塩だけでこれほどとはな……」


一方、2,400人の元兵士(現・工兵)たちは、直人の周りに集まっていた。


「ボス! シマチョウのおかわりを!」 「このレバー、全然パサパサしてません! トロトロです!」


彼らは完全に「餌付け」されていた。 過酷な労働の後の、脂っこいホルモンと冷えたビール。その悪魔的な快感ドーパミンを知ってしまった彼らは、もう元の怠惰な兵士には戻れない。


「ははは、食え食え。ホルモンが終わったら、次は厚切りの赤身肉だぞ!」


直人の言葉に、さらなる歓声が沸き起こった。


その夜、ベルンの街から立ち上る「神木で焼くホルモンの香ばしい煙」は、風に乗って隣国まで届いたという。 後に歴史書に記される**『ルメリナ焼肉事変』**。 それは、周辺諸国に「あの国にはとんでもない食糧事情がある」という情報を知らしめ、同時に多くの流民を引き寄せるきっかけとなった。


【ステータス更新】


【ナオト・カジヤ】


【レベル】 28 → 30


【職業】 救世主(仮) → 【建国王(CEO)】


【新規習得スキル】


≪宴会芸 Lv.98≫:場を盛り上げ、集団の結束力を極限まで高める。一晩で数万人を熱狂させたため、習得と同時に爆上がりした。


≪超調理 Lv.45≫:数万人分の料理を一瞬で味付け・管理する能力。塩振りの精度が神の領域へ。


【新生ルメリナ公国】


【国民幸福度】 100,000pt (測定不能)


【国民忠誠度】 絶対服従(Fanatic)


【国家状態】 確変フィーバーモード突入


「さて……腹も満ちたし、次は『外交』でも仕掛けるか」


「業務連絡。……昨日の焼肉は最高だったが、俺は重大な欠陥に気づいた」


翌朝。 執務室(旧伯爵の寝室)に幹部たちを招集した直人は、深刻な顔でテーブルを叩いた。


「**『米』と『味噌』と『甘味』**がない」


「こ、コメ……? ミソ……?」 エレナやガレスが顔を見合わせる。 この地域はパン食文化であり、米や大豆を知らない。甘味(砂糖)に至っては、蜂蜜がわずかにある程度の超高級品だ。


「肉だけじゃ栄養バランスが悪い。それに、真の幸福とは『炊きたての白米』と『熱々の味噌汁』、そして食後の『甘いデザート』にあってこそ完成する」


直人はホワイトボード(石板)に、新たな生産目標を書き殴った。


米(ジャポニカ種):主食。ソウルフード。


大豆:味噌、醤油、豆腐の原料。


サトウキビ:砂糖。士気向上と輸出品。


サツマイモ:甘味、および荒地でも育つ保存食。


ジャガイモ:食料安保の要。


「そこで質問だ、エレナ。……この近くに**『海』**はあるか?」


直人の問いに、エレナは首を横に振った。


「ないぞ。ここは内陸だ。海に出るには、南の敵対国を抜けて馬車で一月はかかる」


「……一ヶ月か。遠すぎるな」


直人は舌打ちした。 海がないということは、**「鰹節かつおぶし」も「昆布」**もないということだ。和食の命である「出汁だし」が取れない。


「(……いや、待てよ。出汁がないなら、動物性タンパク質と野菜の旨味で勝負すればいい。『豚汁』スタイルだ)」


直人は瞬時に献立を切り替えた。 鰹節がなくとも、肉の脂と野菜の甘味が溶け込んだ味噌汁は、それだけでご馳走になる。


「総員、野郎どもを叩き起こせ! 今日は**『農業革命アグリ・レボリューション』**だ!」


【プロジェクト:魔導品種改良&大量生産】


直人は**≪鑑定 Lv.150≫と≪索敵 Lv.120≫**を全開にし、広大な領内、および未開の森をスキャンした。


「……あった。原種だ」


湿地帯に生えていた雑草のような「野生の稲」。 森のツル植物として自生していた「野生の豆」。 これらを採取し、直人の魔力と**≪錬金術≫**で強制的に品種改良を行う。


「……品種改良ブリーディング。実を大きく、病気に強く、成長を早く!」


『ピロリン♪』


≪品種改良 Lv.98≫:野生種を数千年の時を超えて、一瞬で「現代農業品種」へと進化させる。


1. 水田の造成(米) 「第一工兵団! 川沿いの湿地帯を区画整理しろ! 水を引け!」 ズズズズッ! 荒地が一瞬で整然とした「水田」に変わる。 「苗を植えろ! **≪水属性魔法≫**で水温管理! ≪成長促進≫!」 黄金色の稲穂が、植えたそばから実っていく。


2. 畑の拡張(芋・豆・キビ) 「第二工兵団! 乾燥地には豆と芋だ!」 魔法で耕された黒土から、丸々と太ったサツマイモとジャガイモが顔を出す。 その奥では、高さ3メートルを超えるサトウキビの壁がジャングルのように形成された。


【プロジェクト:失われた「菌」を求めて】


「食材は揃った。だが、これだけじゃ美味い飯にはならない」


直人は収穫されたばかりの大豆を前に、真剣な眼差しになった。


「醤油と砂糖だけじゃ、味が平坦なんだよ。……『酒』と『みりん』、そして**『酢』**。これを作って初めて、和食の五大調味料『さ・し・す・せ・そ』が完成する!」


直人は水田で刈り取ったばかりの「稲わら」を束ね、**≪鑑定≫**の解像度を極限まで上げた。


「(探せ……顕微鏡モード……。雑菌は除外。……タンパク質をアミノ酸に変える、愛すべき緑色のアイツを……!)」


数万の菌をスキャンし続けること数十分。 「……確保キャプチャ!!」 稲わらの奥深くに潜む、**『ニホンコウジカビ』**に近い有用菌を特定し、魔力で隔離した。


【工程:魔導醸造&蒸留連鎖】


直人は**≪時間加速タイム・アクセル≫と≪環境制御≫**をフル稼働させ、一気に醸造工程を進める。


1. 米麹こめこうじの作成 蒸した米に菌を撒き、温度管理。数時間で真っ白な菌糸が米を覆う。


2. 清酒(Sake)の醸造 「まずは酒だ! 肉の臭みを消し、旨味を足す!」 米、麹、水をタンクへ。糖化と発酵を一気に進め、濾過して**「純米酒」**を抽出。


3. 焼酎&本みりん(Mirin)の作成 「次はみりんだ! これがないとテリが出ない!」 酒を**≪錬金術≫で蒸留して「焼酎」を作成。 そこにもち米と麹を仕込み、甘みを引き出す。琥珀色に輝く「本みりん」**の完成。


4. 酢(Vinegar)と醤油・味噌 酒をさらに発酵させて**「米酢」へ。 大豆と小麦と麹で「醤油」と「味噌」**へ。


「……揃った。これでようやく、スタートラインだ」


直人の目の前には、5つの瓶が並んでいる。 砂糖、塩、酢、醤油、味噌。そして酒とみりん。


合成開始ミキシング。……黄金比率は、醤油2:酒1:みりん1:砂糖1だ」


鍋に調味料を投入し、一煮立ちさせる。 アルコール分を飛ばすと、鍋の中の液体は細かい泡を立て、美しい飴色の光沢を帯び始めた。


「……これだ。この香り、このテリ!」


【実食:真・豚丼定食】


夕刻。 直人は完成した調味料と食材を使い、夕食を作り直した。


真・豚丼(オーク丼):酒で下味をつけ、片栗粉をまぶしたオーク肉を焼き、特製ダレ(醤油・みりん・酒・砂糖)を絡めて煮詰めたもの。


豚汁(オーク汁):出汁なし。ごま油でオーク肉と根菜を炒め、素材の旨味を脂に移してから煮込み、味噌を溶いたもの。


大学芋:サツマイモの飴がけ。


酢の物:ウリと海藻(川苔)の三杯酢和え。


「……いただきます」


エレナは、フォークとスプーンを手に、目の前の丼を見た。 肉の一枚一枚が、鏡のように美しい琥珀色の照りを纏っている。


肉を一切れ、白米と一緒にスプーンですくい、口へ運ぶ。


「……んぐッ!?」


カッ!!(目が見開く音)


「な、なんだこの深みは……ッ!!」


ただ甘くてしょっぱいだけではない。 みりんが生み出す上品で奥深い甘み。酒が消し去った肉の獣臭さ。 そして、鼻に抜ける芳醇な香り。


「肉が……飲み物のように柔らかい! そしてこのタレ……これだけで白米が何杯でもいけるぞ!?」


次に、豚汁をすする。


「……ッ!! 魚も使っていないのに、なぜこれほど濃厚な味がする!?」


「炒めた肉と野菜の旨味だ。それを味噌が包み込んでいる。海がなくたって、大地には大地の旨味があるんだよ」


「はぁぁぁ……。落ち着く……。体が芯から温まる……」


最後に酢の物を食べる。 「酸っぱい……! だが、脂っこくなった口の中が、一瞬で清流のように洗い流される! なんだこの爽快感は! 永遠に肉が食える永久機関ではないか!」


ガレスたち工兵幹部も、涙を流して貪り食っていた。 彼らにとって、それは単なる食事ではなく、新たな「文明」との遭遇だった。


【ステータス更新】


【新生ルメリナ公国】


【特産品追加】


ルメリナ米


魔導醤油・味噌


清酒「直人」


本みりん「琥珀」


【食料自給率】 45,000% (天文学的数字へ)


【食文化レベル】 Sランク(異世界オーパーツ級)


【ナオト・カジヤ】


【新規習得スキル】


≪調合(黄金比) Lv.88≫:あらゆる調味料を最適なバランスで配合し、味覚の快楽物質を最大化する。


≪醸造マイスター Lv.95≫:発酵食品の作成において、失敗判定がほぼ消滅する。


「ふぅ……ようやく納得のいく味ができた」


直人は空になった丼を置き、満足げに緑茶(野生の茶葉を蒸して揉んだもの)を啜った。


「さてエレナ。この『酒』と『みりん』だが……これらは依存性が高い。特に酒は、ドワーフや貴族たちを高値で釣る最高の餌になる」


直人は徳利を揺らし、悪代官のような顔で笑った。


「食で民を満たし、酒で他国の富を吸い上げる。……これが俺たちの『平和的侵略』だ」


「……待て。まだだ。まだ何かが足りない」


豚汁を一口飲んだ直人は、眉間に皺を寄せてスプーンを置いた。 美味しい。確かに美味しいが、これは「素材の味が濃いスープ」であって、和食特有の「染み渡るような奥深さ」が足りない。


「ナオト? 十分に美味ではないか。これ以上何を……」 エレナが不思議そうにするが、直人は首を横に振った。


「**『出汁(Dashi)』**だ。今のスープには、和食の魂である出汁が入っていない」


直人はホワイトボードに化学式のような図を描き始めた。


海がない = 昆布(グルタミン酸)と鰹節(イノシン酸)が使えない。


現状 = 豚肉(イノシン酸)+ 野菜(グルタミン酸)。


※これでも相乗効果はあるが、パンチが弱い。


「海がないなら、森を使えばいい。……この世界には、**『第三の旨味成分』**が眠っている」


直人は窓の外、広大な森を指差した。


「キノコだ。それも、乾燥させて旨味を凝縮させた**『干しキノコ(グアニル酸)』**だ!」


【プロジェクト:森の旨味爆弾マッシュルーム・ボム


「第一狩猟班、出動! 肉じゃない、キノコを狩れ! 倒木に生えている地味な茶色いヤツだ!」


直人の号令で、ガレスたちが森へ走る。 数時間後、大量の「異世界シイタケ(フォレスト・ファンガス)」が持ち込まれた。


「ボス、こんな木片みたいなのが食えるんですか?」 「生のままじゃダメだ。……見てろ」


直人はキノコの山に手をかざし、**≪鑑定 Lv.200≫**を発動して成分構造を解析した。 グアニル酸は、生のキノコにはほとんど含まれていない。細胞を破壊し、乾燥させる過程で酵素が働き、生成されるのだ。


「……細胞壁破壊。酵素活性化。そして――≪瞬間乾燥ドライ≫」


シュウウウウッ……!


キノコから水分が一気に抜け、カサカサに縮んだ「干しキノコ」が出来上がった。 見た目は悪い。だが、その香りは――。


「……ん? なんとも言えない、土の香りというか……香ばしい匂いがするぞ?」


「これこそが『グアニル酸』の結晶だ。こいつを水で戻した『戻し汁』こそが、最強の出汁になる!」


【調合:旨味のトライアングル】


直人は鍋に水を張り、干しキノコを投入して加熱。黄金色の出汁を抽出した。 それを、先ほどの豚汁のベースに加える。


豚肉(イノシン酸)


野菜・味噌(グルタミン酸)


干しキノコ(グアニル酸) ← NEW!!


「旨味成分は、単独だと『1』だ。だが、二つ合わせると『7』になる。……そして三つ合わせれば、それは**『100』**になる!」


直人が仕上げに醤油をひと回し入れた瞬間、鍋から立ち上る湯気の香りが劇的に変化した。 それはもはや食欲をそそるレベルを超え、脳髄を直接刺激する「暴力的な香り」だった。


【実食:完全体・豚汁定食】


「……完成だ。これが、海を使わない『陸の最強出汁』で作った豚汁だ」


直人はエレナの前に、湯気を立てるお椀を置いた。 見た目は先ほどと変わらない。だが、漂う香気が段違いだ。


「……い、いただきます」


エレナは震える手で、汁を一口すすった。


「……ッ!!!!!!」


カッ!!!!(脳内で何かが弾ける音)


エレナの動きが止まった。 箸(直人が削り出したもの)が手から滑り落ちる。


「あ……あぁ……」


「どうした、エレナ?」


「……味が……味が、波状攻撃を仕掛けてくる……!」


エレナは涙目で訴えた。


「最初に味噌と野菜の優しさが来て……その直後、肉の旨味が押し寄せ……最後に、森の奥深くから響くような、強烈で香ばしい『コク』が全てを包み込む! 飲み込んだ後も、舌の上に幸せが残り続けているぞ!?」


これがグアニル酸の力。 他の旨味成分の働きを数倍から数十倍に増幅させる、天然のブースト剤。


「米だ! 米をくれ! この汁だけで、米俵一俵は食える!」


エレナは理性を失い、豚汁をおかずに白米をかっこんだ。 ガレスたちも同様だ。 「なんだこの汁はぁぁッ! 体中の細胞が喜んでやがる!」 「干したキノコが、肉以上の御馳走になるなんて……!」


【ステータス更新】


【新生ルメリナ公国】


【特産品追加】


魔法干しシイタケ:水で戻すだけで、料理のレベルが3段階上がる魔法の食材。


【食文化】 深淵アビスランクへ到達


【ナオト・カジヤ】


【新規習得スキル】


旨味操作ウマミ・コントロール Lv.120≫:成分の相乗効果を完全に理解し、脳をハックするレベルの味を作り出す。青天井に上昇中。


「ふっ……勝ったな」


直人は空になった鍋を見てニヤリと笑った。 鰹節がなくとも、昆布がなくとも、知恵と魔法があれば「和食」は再現できる。 いや、異世界素材のポテンシャルを引き出したこの味は、もはや日本を超えたかもしれない。


「よしエレナ。次はこの『干しキノコ』を粉末にして、『魔法の調味料(だしの素)』として売り出すぞ。……これで近隣諸国の料理人は、我々の虜だ」


胃袋支配計画は、盤石のものとなりつつあった。


「飯は美味くなった。だが出汁(グアニル酸)を発見して気づいたことがある」


翌朝。 豚汁と白米、そしてキノコ出汁の旨味で肌艶が良くなったエレナと、ガレスたち幹部を前に、直人は鬼気迫る表情でホワイトボード(石板)に向かっていた。


「食卓に**『彩り(ビタミン)』と『酔い(アルコール)』、『こってり(洋食)』、そして『乳と麺』**が足りない」


「……コッテリ? 注文が多いな、貴様は」 エレナが呆れるが、直人は止まらない。


「いいか、今の我々には醤油や味噌がある。だが、揚げ物を彩る**『三色のソース』がない。食後の『デザート』がない。そして何より、男のロマンである『ラーメン』**がない!」


直人は石板に次々とプロジェクトを書き殴った。


果樹園計画:柑橘、リンゴ、ブドウ。


畜産革命:養鶏(卵・肉)、酪農(乳製品)。


洋食三神器:ケチャップ、マヨネーズ、ソース。


製麺革命:うどん、パスタ、そして中華麺。


「総員、配置につけ! 今日は**『食の産業革命インダストリアル・フード』**だ!」


【第1段階:果実と美酒の楽園】


直人は**≪索敵 Lv.185≫で原種を確保し、≪品種改良 Lv.115≫**で進化させた。


1. 果樹園セクター


柑橘:ユズ、レモン、ミカン。


ブドウ:皮ごと食えるシャインマスカット(改)。


リンゴ:蜜入り完熟ふじ。


2. 魔導蒸留所


清酒&焼酎:米と麹で大量生産。


ワイン&シードル:特にリンゴの発泡酒**「シードル」**は、フルーティーで女性に大人気。


【第2段階:雷鳥を地鶏へ(養鶏革命)】


「次は『卵』と『鶏肉』だ。これがないと洋食もラーメンも始まらない」


直人は森の**『サンダー・グラウス(雷鳥)』**を制圧。魔力による強制家畜化を行う。


1. ルメリナ地鶏 「飛ぶな、卵を産め」 毎日卵を産み、肉は弾力と旨味に溢れる**「ルメリナ地鶏」が誕生した。 これで「鶏ガラ(スープ)」と「卵(麺・マヨネーズ用)」**が確保された。


【第3段階:鋼鉄牛を乳牛へ(酪農革命)】


「卵の次は『乳』だ!」


草原の**『アイアン・バイソン』を「魔導乳牛」**へ改造。


乳製品:バター、チーズ、生クリームを精製。これでカルボナーラもスイーツも作れる。


【第4段階:製麺革命(かんすいの錬金)】


「ここが最重要だ。うどんやパスタは小麦と水で作れる。だが、ラーメン(中華麺)には決定的に『魔法の粉』が必要だ」


直人は**≪錬金術≫**を発動した。 「塩湖の成分、あるいは草木の灰……。炭酸ナトリウムと炭酸カリウムを黄金比で合成する!」


シュウウウッ……。 生成されたのは、白い粉末――**『かんすい』**だ。


「これを小麦粉に混ぜることで、麺は黄色く色づき、独特のコシとアンモニア臭にも似た食欲をそそる香りを纏う!」


1. 中華麺ラーメン 「縮れさせろ! スープを絡め取るために!」 **≪風魔法≫**で麺を躍らせ、絶妙なウェーブをかける。


2. うどん&パスタ 「うどんは踏んでコシを出せ! パスタはデュラムセモリナ粉だ!」


【第5段階:洋食の三神器(調味料)】


「食材は揃った。仕上げはソースだ!」


① マヨネーズ(白の悪魔) 新鮮な卵黄、酢、塩、油を高速乳化。「酸味とコクの塊!」 ② ケチャップ(赤の旨味) 完熟トマト、玉ねぎ、香辛料、酢、砂糖を煮詰める。「リコピンの爆弾!」 ③ ウスターソース(黒のスパイス) 野菜・果実、スパイス、醤油、干しキノコ粉末を熟成。「揚げ物のための黒い宝石!」


【実食:ルメリナ大試食会】


夕刻。 直人の目の前には、これまでの成果を結集させた「人類の叡智・フルコース」が並んでいた。


1. 前菜:洋食プレート(チキン南蛮&串カツ) 「まずは揚げ物だ!」 ルメリナ地鶏の唐揚げに、特製タルタルソース(マヨネーズたっぷり)をかけたチキン南蛮。 そして、オーク肉の串カツをウスターソースに浸す。


エレナが頬張る。 「……サクッ、ジュワッ! ……んんんッ!? タルタルの濃厚なコクが、鶏肉の脂と混ざり合って……理性が飛ぶぞ!」 「串カツのソースもだ! スパイシーで甘辛くて、酒が進んで仕方がない!」


2. パスタ:特製カルボナーラ 生パスタに、濃厚な生クリーム、チーズ、卵黄、ベーコンを絡める。 「クリームの海だ! モチモチした麺がソースを吸って、口の中が幸福で満たされる!」


3. メインディッシュ:特製・ルメリナ醤油ラーメン 「真打ち登場だ。……『全部乗せラーメン』」


ドンッ! 目の前に置かれたのは、湯気を立てる丼。 スープは**「鶏ガラ(地鶏)」と「豚骨オーク」、そして「干しキノコ(グアニル酸)」と「野菜」から取ったカルテット・スープ。 そこに「特製醤油ダレ」と、たっぷりの「ラード」と「焦がしニンニク」が浮いている。 具材は、トロトロの煮卵**、チャーシュー、ネギ、海苔(川苔)。


エレナが震える手で、黄色く縮れた麺をすくい上げる。


「……ズルッ、ズルズルッ!!」


カッ!!!!(脳天直撃)


「な……なんだこの麺はぁぁぁッ!!」


うどんともパスタとも違う。 プリプリとした弾力。ツルツルとした喉越し。 そして縮れた麺が、濃厚で脂っこいスープをこれでもかと口内へ運んでくる。


「スープが……悪魔的だ! 鶏と豚の脂が、醤油のキレとニンニクの香りと混ざり合って……! 飲み込んだ後も、舌が『次のひと口』を要求してくる!」


「麺だけじゃないぞ。この煮卵を見ろ」


直人が箸で煮卵を割る。 トロォ……。半熟の黄身がスープに溶け出す。


「黄身のコクとスープが混ざった部分を、麺に絡めて食うんだ」 「……んぐッ! ……はぁぁぁぁ。幸せだ……。私はこの一杯のために生きてきたのかもしれん……」


4. デザート:アップルパイ & シードル 食後は、焼きたての蜜入りアップルパイと、冷えたリンゴ酒。 「ラーメンの脂っこさを、リンゴの酸味と炭酸が洗い流す……。完璧な円環ループだ……」

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