第5章: 国家建設の始まり
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第5章: 国家建設の始まり
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≪経営(組織論) Lv.35≫:組織を効率的に運営する能力。
≪農業 Lv.20≫:指導により上昇。
「よし、在庫過多だ。……エレナ、明日は一番近い『街』へ行って、これを換金するぞ。商売の始まりだ」
翌朝、直人とエレナは「要塞都市」と化した砦をガレスたちに任せ、一番近い交易都市『ベルン』へと向かった。 もちろん徒歩ではない。直人の**≪レビテーション≫**による超高速飛行で、通常なら馬車で二日の距離をわずか一時間で踏破したのだ。
「……着いたな。あれがベルンか」
空から見下ろす街は、石造りの城壁に囲まれ、そこそこの活気があるように見えた。だが、直人の目は都市計画の甘さや物流の悪さを即座に見抜いていた。
「人目につくと面倒だ。少し手前で降りて歩くぞ」
地上に降り立ち、門へ向かう。門番が槍を交差させて二人を止めた。
「止まれ! 身分証を見せろ。なければ通行税として銀貨2枚だ」 「銀貨はない。……現物払いでいいか?」
直人は懐から、昨日収穫したばかりの巨大な『魔導カボチャ』を取り出した。 子供の頭ほどもある大きさで、ツヤツヤと輝いている。
「なっ……なんだその立派な野菜は!?」 「取れたてだ。市場価格なら銀貨5枚は下らないはずだが?」 「と、通れ! 歓迎する!」
あっさり通過した二人は、そのまま商業ギルドへと直行した。 カウンターで退屈そうにしていた受付嬢に、直人は営業スマイルで告げた。
「素材の買取と、農作物の卸売契約を頼みたい。……量は、トラック……いや、馬車50台分くらいだ」 「は……? 馬車50台? お客様、冗談は……」
直人は無言でカウンターの上に手をかざし、アイテムボックスを少しだけ開放した。 ドササッ! 最高品質のオーク肉のブロックと、宝石のように輝く野菜が雪崩れ落ちる。
「サンプルだ。……支部長を呼んでくれ。大きな商談になるぞ」
元サラリーマンの交渉術が、異世界の経済に風穴を開けようとしていた。
「支部長のゴズだ。……なんだ、この騒ぎは」 奥から現れたのは、立派な髭を蓄えた恰幅の良い男だった。だが、彼の威厳はカウンターの上の「商品」を見た瞬間に崩れ去った。
「こ、これは……オーク肉か? バカな、血の臭みが完全に消えている……! まるで芸術品のような断面だ!」 ゴズは震える手でカボチャを撫で回す。 「こっちの野菜もだ。あふれんばかりの魔力を感じる。王族の食卓に並ぶ『特級品』すら凌駕しているぞ……!」
直人は心の中でガッツポーズをした。**≪解体 Lv.42≫と≪ピュリフィケーション≫**の品質保証は、この世界でもオーバーテクノロジーだったようだ。
「単刀直入に言います。我々は、これと同品質の商品を『トン単位』で定期納入できる」 「ト、トン単位……!? 正気か!?」
「条件は二つ。市場価格より少し色を付けた全量買取。そして、支払いの半分を『建築資材』と『鉄』で現物支給すること」
砦の要塞化をさらに進めるための布石だ。 ゴズは脂汗を拭い、直人の目を覗き込んだ。ただの若者ではない、得体の知れない怪物の目だ。商人の勘が告げている――この男と組まねば損をする、と。
「……商談室へ。最高の上茶を用意させよう」
直人はニヤリと笑い、エレナに耳打ちした。 「第一段階、クリアだ」 「……貴様、戦場より生き生きしていないか?」
商談室に通された直人は、さらに追い打ちをかけるように在庫リスト(手書きのメモ)を提示した。
「オーク肉50トン、魔導野菜30トン、レッドウルフの毛皮100枚……。とりあえず、これが初回納品分です」
「ご、50トン……!? 一体どこの大国から略奪してきたんだ……」
ゴズ支部長は椅子から転げ落ちそうになりながらも、目の前の「宝の山」を逃すまいと必死にそろばんを弾いた。 結果、提示された額は、直人のサラリーマン時代の生涯年収を軽く超えるものだった。
「契約成立ですね」
直人は涼しい顔で、前金の大金貨が詰まった袋と、大量の鉄材・建築資材の引換券を受け取った。 ギルドを出ると、外は既に夕暮れ時だった。
「……信じられん。たった一度の商談で、小国の年間予算並みの金を稼ぐとは」 エレナが金貨袋を抱きしめ、震える声で呟く。
「これはまだ『種銭』だ、エレナ。この金と資材で砦をさらに拡張し、人を集め、経済圏を作る」
直人は夕日に染まる街を見据え、ニヤリと笑った。
「目指すは『難民キャンプ』の維持じゃない。……食と物流を支配した、最強の『独立国家』の樹立だ」
その言葉に、エレナは息を呑んだ。だが、今の彼なら本当にやってのけるかもしれない――そう思わせるだけの圧倒的な説得力が、その背中にはあった。
翌朝。 大量の資材と金貨を砦に持ち帰った直人は、休む間もなく幹部たちを招集した。
「さて、昨日の『肥料』の件だが、放っておけば元の持ち主(ザリア伯爵)が文句を言いに来るだろう。……向こうから来るのを待つのは時間の無駄だ」
直人は地図上のザリア伯爵領に赤いバツ印をつけた。
「だから、こちらから出向いて**『最終的解決(M&A)』**を行う」
「つ、潰しに行くのですか!? 相手は一国の領主、兵力は数千人いますぞ!」 ガレスが驚愕するが、直人は涼しい顔だ。
「数なんて関係ない。『頭』を挿げ替えれば組織は変わる。……少数精鋭で電撃戦を仕掛けるぞ。部隊編成だ」
【遠征部隊:特別監査室(監査チーム)】
室長:ナオト
役割:広域制圧、指揮、物理的・魔法的暴力の行使。
副官:エレナ
役割:対人交渉、および「正義の御旗(元王族)」としての正当性の確保。
実行委員:ガレス以下、幹部10名
役割:制圧、陽動、およびアイテムボックスを活用した物資略奪(資産保全)。
装備:前日回収したフルプレートアーマー、魔剣(直人が適当にエンチャント済み)。
「移動手段は『空輸』だ。全員、俺がまとめて運ぶ」
「は? 空輸……? うわぁぁぁぁッ!?」
直人は**≪テレキネシス Lv.35≫**を全開にし、自分を含む12名全員を巨大な見えないカプセルに包み込むと、弾丸のように空へと射出した。
「目標、ザリア伯爵邸! 所要時間15分! ……これより『強制監査』を開始する!」
空飛ぶ武装集団が、音速に近い速度で伯爵領へと突っ込んでいった。
ザリア伯爵領の中心都市、その中央広場。 空から突如として降下した武装集団(直人たち)の出現に、市民や警備兵たちはパニックに陥っていた。
「な、なんだ貴様らは!? ここをザリア伯爵の居城と知っての狼藉か!」
警報が鳴り響き、数百の兵士が槍を構えて広場を取り囲む。 バルコニーからは、贅沢な服を着た肥満体の男――ザリア伯爵が顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていた。
「ええい、殺せ! その不届き者どもを串刺しにしろ! わしの午後のティータイムを邪魔した罪、万死に値するわ!」
伯爵の命令を受け、兵士たちが動き出そうとする。 だが、直人は一歩も動かず、ただ冷めた目でバルコニーの伯爵を見上げた。
「……うるさいな。会議(処刑)の邪魔だ」
直人は右手を軽く掲げ、クイクイと指を動かした。
(ターゲット・ロック。対象:ザリア伯爵。部位:両手両足)
「……来い(フェッチ)」
**≪テレキネシス≫**発動。 バルコニーにいた伯爵の体が、見えない巨大な手に掴まれたように宙に浮いた。 「ほげっ!? な、なんだこれは!? 体が浮いて……!」 そのまま伯爵は空中で手足をバタつかせながら、広場の中央、直人の目の前へと引きずり下ろされた。
「ひぃっ、貴様、何者だ! 衛兵! 衛兵!!」 伯爵が石畳の上で無様に這いつくばり、悲鳴を上げる。 周囲の兵士たちが主君を助けようと殺到するが、直人の**≪威圧≫**と、ガレスたちの構えた魔剣の殺気に気圧され、足がすくんで動けない。
「市民の皆さん、そして兵士諸君。よく見ておけ」
直人は拡声魔法を使い、広場全体に響き渡る声で告げた。
「これが、お前たちが恐れ、従ってきた『権力』の末路だ」
直人は伯爵に向き直ると、業務的な口調で宣告した。
「ザリア伯爵。貴様には、砦への不当な武力攻撃および難民虐殺未遂の容疑がかかっている。……よって、**『物理的排除』**を執行する」
「な、何を言って……や、やめろ! 金か? 金ならやる! だから……!」
「交渉決裂だ」
直人は無慈悲に、右手を握り込んだ。 そして、ゆっくりと、雑巾を絞るように手首をひねった。
「……まずは右足」
ゴキリッ!!
「ぎゃあああああああッ!!?」
伯爵の絶叫が広場に木霊する。 右足の太ももから下が、ありえない方向にねじ曲がっていた。触れてもいないのに、骨と筋肉が雑巾のように絞り上げられたのだ。
「次は左足」
ベキョッ!!
「あぐっ、あがぁぁぁッ!!」
「右手」
グシャッ!!
「やめ、助け……死、死ぬぅぅッ!」
「最後、左手」
バキバキバキッ!!
四肢すべての骨がねじ切られ、伯爵の体は地面に転がる肉塊と化した。 もはや手足は原形を留めず、奇妙な角度でぶら下がっているだけだ。 広場を埋め尽くす市民と兵士たちは、あまりの凄惨さと、直人の表情一つ変えない冷徹さに、悲鳴を上げることすら忘れて凍りついた。
「仕上げだ」
直人は虫の息となった伯爵の頭上に手をかざした。
「……さよなら」
プチッ。
最後は、指先で小さな虫を弾くような動作だった。 **≪テレキネシス≫**による頸椎への一点集中圧力。 伯爵の首が、コクリと音を立てて折れ、その肥え太った体から力が抜けた。
完全なる静寂。 領主の死。それも、圧倒的な力による、抵抗不可能な一方的な蹂躙。
直人は、血の一滴もついていない手で懐からハンカチ(アイテムボックスから出した)を取り出し、手を拭く仕草をした後、呆然とする兵士たちを見渡した。
「……さて。他に、俺に『ひねられたい』奴はいるか?」
その一言は、死刑宣告よりも重く響いた。 カラン……。 誰かが剣を取り落とした音を皮切りに、兵士たちは次々と武器を捨て、その場に平伏した。
「こ、降参だ……!」 「殺さないでくれぇぇッ!」 「お慈悲を……新領主様、万歳!!」
恐怖による支配。 圧倒的な暴力によるカリスマ。 直人は、たった数分で、数千の兵を持つ伯爵領を**「無血(直人は血を流していない)」**で制圧したのだった。
「……業務完了。エレナ、あとは任せたぞ。領民への演説と、新体制の発表だ」
「……貴様、本当に勇者ではなく魔王なのではないか?」
エレナは青ざめた顔でそう呟きつつも、覚悟を決めて前に出た。 彼女にとっても、これは「国を取り戻す」ための、避けては通れない修羅の道だったのだ。
恐怖と静寂が支配する広場。 直人が一歩下がり、血濡れ(てはいないが)の舞台をエレナに譲った。 彼女は震える足を叱咤し、バルコニーの最前列へと進み出る。かつて王族として育てられた矜持が、彼女の背筋を伸ばさせた。
「面を上げよ、ザリアの民たちよ!」
凛とした声が響く。 怯えていた市民たちが、恐る恐る顔を上げる。そこには、美しくも力強い、真の支配者の瞳があった。
「私はエレナ・フォースター。かつて北の守護を担ったルメリナ王家の正統なる後継者である!」
ザワッ……と広場がどよめく。 「ルメリナの姫様? 生きておられたのか……」 「あの一族なら、腐った伯爵よりマシかもしれない……」
エレナは剣を抜き、高らかに掲げた。
「本日、この地より腐敗した権力は排除された! 私はここに、亡国の復興と、新たな国の樹立を宣言する! 国名は――『新生ルメリナ公国』! 我らは何者にも屈しない。魔物にも、他国にも、そして飢餓にも!」
その演説は、直人の**≪指揮 Lv.55≫**による補正効果もあり、民衆の心に熱狂的な火を灯した。
「新生ルメリナ万歳!」 「エレナ女王陛下万歳!」 「(あと後ろの怖い兄ちゃん万歳!)」
こうして、地図上の小さな領地が、世界を揺るがす「超大国」へと生まれ変わった瞬間だった。
その数時間後。 旧領主の執務室を接収した直人は、ふかふかの椅子(元伯爵のもの)に座り、**≪鑑定≫と≪情報処理≫**スキルを駆使して、この新しい国の「初期ステータス」を算出していた。
「さて、会社の規模を確認するか」
直人は空中にウィンドウを展開した。
【国家ステータス:新生ルメリナ公国】
【元首】 エレナ・フォースター公王
【行政官(黒幕)】 ナオト・カジヤ
【領土】 旧ザリア伯爵領(中規模都市ベルン + 周辺農村部)
【人口統計】
総人口:32,500人
都市部:18,000人
農村部:12,000人
旧砦からの移民(魔法兵):100人
吸収された旧伯爵軍:2,400人(※武装解除済み、再教育待ち)
【経済・資源】
資金:金貨 50,000枚(伯爵の隠し財産を全没収 + 直人の持参金)
主な産業:農業、牧畜、交易
特産品:魔導野菜(New!)、魔物素材(New!)、精製塩(New!)
【食料事情】
食料備蓄:極大(アイテムボックス内の在庫 + 伯爵の備蓄)
食料自給率:450% (測定不能レベル)
※解説:直人が持ち込んだ「魔導農業技術」と「魔物肉」により、人口3万人に対し、およそ15万人分の食料供給能力を有している。
※さらに**≪時間停止ボックス≫**によるロス率0%の物流網により、餓死のリスクは「皆無」となった。
「……ふむ。スタートアップにしては上出来すぎるな」
直人は羊皮紙にさらさらと今後の計画を書き込んでいく。
「人口3万。これを養うだけの食料はある。金もある。……となると、次の課題は『国防』と『教育』だ」
直人は窓の外、夕日に染まる街を見下ろした。
「旧伯爵軍の2,400人……こいつらは今まで甘い汁を吸っていた連中だ。使い物にならん」
そこへ、ノックと共にエレナが入ってきた。演説を終え、少し疲れた様子だが、その表情は晴れやかだ。
「ナオト、民の掌握は順調だ。……して、何をニヤニヤしている?」
「ああ、エレナ。ちょうどよかった。人事の相談だ」
直人は悪い笑顔でリストを提示した。
「降伏した兵士2,400人全員、明日から**『ナオト式・再教育キャンプ』**に放り込む。……彼らにも、農業と魔法と土木工事の楽しさを教えてやらないとな?」
「……貴様、国の人口を増やすそばから、心の壊れた廃人を増やす気か?」
新生ルメリナ公国。 豊富な食料と、謎の超技術、そして絶対的な武力を持つこの新興国家は、周辺諸国にとって、魔物以上に恐ろしい「脅威」となろうとしていた。
翌朝、ベルン郊外の荒野。 そこに集められたのは、武装解除された旧ザリア伯爵軍の兵士、2,400名。 彼らは不安と不満が入り混じった顔で、壇上の直人を見上げていた。
「俺たちは騎士だぞ! なぜこんな場所で土木作業の真似事を……」 「そうだ! 新しい領主に待遇改善を要求する!」
数人の小隊長が声を荒げる。彼らはまだ理解していなかった。自分たちが「捕虜」ではなく「不良在庫」として扱われていることを。
「……静粛に」
直人は眉一つ動かさずに言った。 だが、興奮した兵士たちの怒号は止まらない。
「なめやがって! 数で押せば勝てるぞ!」 「囲め! 武器はなくとも拳で……」
「……やれやれ。物理法則を教える必要があるな」
直人はため息をつくと、空を見上げた。 物を動かすのが**≪テレキネシス≫。 空を飛ぶ(重力に逆らう)のが≪レビテーション≫**。 ならば、その逆――「重力を増幅させる」ことも可能なはずだ。
直人はイメージする。 大気の上から、見えない巨大な鉛の蓋を落とす感覚。あるいは、星の引力そのものを、この一点に集中させる感覚。
「……地に伏せろ。『重力』」
直人が指を下ろした、その瞬間だった。
ズドォォォォォンッ!!
「ぐ、がぁぁぁッ!?」 「か、体が……地面に……メリ込むッ!?」
2,400人全員が、突然背中に数トンの岩を乗せられたかのように、一斉に地面に叩きつけられた。 見えないプレス機。 立っていられないどころか、指一本動かすことすら許されない。鎧がミシミシと悲鳴を上げ、地面には人型の亀裂が走る。
『ピロリン♪』 『特定行動を確認。以下のスキルを習得しました』
≪グラビティ≫:重力操作。対象にかかる重力を自在に操る。範囲指定可。
「今は**『5G(5倍重力)』**だ。騎士ならこれくらい耐えてみろ」
直人は冷ややかな目で見下ろした。
「選択肢をやる。 A:このまま自重で圧死して肥料になる。 B:俺の『教育』を受けて、死ぬ気で働く。 ……3秒で決めろ」
「び、B!! Bですぅぅッ!!」 「働きます! 重くで、息がぁぁッ!」
プライドは圧倒的な重力の前にへし折れた。
【ナオト式・超圧縮再教育プログラム(地獄)】
そこから先は、研修という名の「改造」だった。
「脳を開け。知識を流し込む」
直人は重力で彼らを縫い留めたまま、**≪教育 Lv.135≫**を行使。 2,400人の脳内に、土魔法による整地、石材加工、連携魔法の術式を強制インストールする。
「ギャアアアアッ! 頭が、頭が熱いッ!」 「知識が……勝手に……!」
白目を剥いて泡を吹く兵士たち。だが、直人は**≪ヒーリング≫**で即座に意識を回復させ、休ませない。
「休憩時間は終わりだ。次は実技。……その荒野を『国道』に変えろ。舗装完了まで夕飯はなしだ」
「「「イエス・ボス!!」」」
死んだ魚のような、しかし異様に集中した目をした2,400人が動き出した。 彼らは一糸乱れぬ動きで魔法を行使する。
第一班:**≪地属性魔法≫**で地面を掘削・転圧。
第二班:**≪錬金術(簡易)≫**で土をアスファルトのような硬度へ変質。
第三班:**≪風魔法≫**で瓦礫を吹き飛ばし、清掃。
第四班:**≪グラビティ(軽量化)≫**で巨大な岩を羽根のように運び、配置。
見る見るうちに、荒野に定規で引いたような、美しく強固な「石畳の大道路」が伸びていく。
「……信じられん」
視察に来たエレナが、戦慄の表情で呟いた。
「あれほど怠惰で有名だったザリア軍が……まるで精密機械のようだ。しかも、工期が早すぎる。これでは帝国の工兵団など赤子同然ではないか」
「人間、死ぬ気になれば変われるもんさ」
直人は満足げに頷いた。 こうして、新生ルメリナ公国は、一夜にして大陸最強の**「魔法工兵団」**を手に入れたのである。
【ステータス更新】
【ナオト・カジヤ】
【新規習得スキル】
≪グラビティ Lv.1≫:重力操作。
※応用:敵の拘束、建材の軽量化運搬、建物の強度試験など。
【称号】
≪ブラック企業の覇王≫ (NEW!)
※効果:配下の作業効率 +200%、労働基準法無効化。
【既存スキル更新】
≪教育 Lv.135≫:数千人単位への強制指導により、限界を知らず上昇中。
【旧ザリア軍(2,400名)】
【職業】 敗残兵 → ルメリナ魔法工兵
【習得スキル】
≪土木魔法 Lv.5≫:戦闘よりも工事に特化した魔法。
≪不眠不休 Lv.3≫:直人の「社畜耐性」が伝染。
≪絶対服従≫:ボス(直人)への恐怖による統率。
「道路の次は『食料生産プラント』の建設だ。……昼休みは終わりだぞ、総員配置につけ!」
直人の無慈悲な号令で、国道整備を終えたばかりの2,400人の魔法工兵団が、今度は北部の広大な未開拓の森へと投入された。 彼らの目は死んでいるが、動きは完全に統率されていた。
「目標:この広大な森を、日没までに『大農園』へ作り変える」
「森を……一日で……?」 「木を切り倒すだけで数ヶ月はかかりますぞ……」
工兵たちがざわめくが、直人は冷徹に切り捨てた。
「斧など使うな。物理と魔法を使え。……手本を見せる」
直人は森の最前列に立つと、右手を水平に構えた。 イメージするのは**≪解体≫の応用による「切断」と、≪テレキネシス≫**による「搬出」。
「……伐採」
直人が手を薙ぐと、不可視のカマイタチが森を駆け抜けた。
ズババババババッ!!
轟音と共に、視界いっぱいの巨木数百本が、根元から一斉に切断された。 さらに、倒れる前に**≪テレキネシス≫**が作動。幹、枝、葉が空中で瞬時に選別され、アイテムボックス(直人用)へと吸い込まれていく。 数秒後。そこには木一本ない、更地だけが残っていた。
「……え?」 「森が……消えた?」
「さあ、続け! お前らならできる!」
【プロジェクト:超高速農地造成】
直人の**≪指揮 Lv.65≫**によるバフを受けた工兵団が、森を蹂躙していく。
工程1:整地 「切り株が邪魔だ! 重力をかけろ!」 「イエス・ボス! ≪グラビティ≫!!」 ズドンッ! 抜け残った切り株や岩が、数倍の重力によって地中深くへ押し込まれ、地面が平らに均されていく。
工程2:耕起 「土を掘り返せ! 空気を含ませろ!」 「≪地属性魔法≫!!」 ドッ、ドッ、ドッ! 数千人の魔法が一斉に放たれ、硬い荒地が一瞬でふかふかの黒土へと変わる。そこに、先日作った「特製肥料(元敵兵)」を混ぜ込む。
工程3:灌漑(水路建設) 「水路を引くぞ! 川の流れを変えろ!」 「≪土木魔法≫!!」 近くの川から畑まで、U字溝のような水路が魔法で形成され、水がとうとうと流れ込む。
「グルォォォォ……ッ!!」
その時、森の奥から地響きと共に、巨大な樹木の怪物――**『エルダー・トレント』**が現れた。 樹齢数千年、森の守り神とも言われる災害級モンスターだ。
「き、貴様らァ……! 我が森を荒らす小僧どもめェェ……!」 「ひ、ひぃぃッ! トレントの主だ! 踏み潰されるぞ!」
工兵たちがパニックになる。だが、直人はキラキラした目でそれを見上げた。
「……おい、見たかエレナ。あれ、最高級の『建材』だぞ」
「貴様にはあれが資材にしか見えんのか!? あれは神話級の魔物だぞ!」
「神話だろうが何だろうが、俺の農場の邪魔をするなら『雑草』だ」
直人は一歩前に出ると、右手を握りしめた。 燃やしてはもったいない。あくまで「収穫」だ。
「……圧縮」
**≪グラビティ≫と≪テレキネシス≫**の複合技。 数千トンの圧力が、四方八方からトレントを襲う。
「グ、ギャァァァァ……ッ!? か、体が……ミシミシと……!?」
「暴れるな。乾燥させて、角材に加工してやる」
バキバキバキッ! シュパパパッ! 直人は生きたままのトレントを、空中で強制的に製材した。 水分を絞り出し、枝を払い、四角い柱へと成形していく。
「バ、バカなァァァ……! 人間ごときがァァァ……!」
断末魔と共に、森の主は**「最高級建材(乾燥済み):100本」**へと姿を変え、直人のアイテムボックスへと収納された。
夕刻。 ベルンの北には、地平線まで続く広大な**「国営農場」**が完成していた。 植えられたのは、成長速度の早い魔導野菜と小麦。直人の魔力と肥料の効果で、明日には収穫できるだろう。
「……終わった」 「俺たち、一日で地図を書き換えたぞ……」
泥だらけの工兵たちが、呆然と成果を見つめる。 彼らの目には、強制労働の辛さよりも、成し遂げたことへの奇妙な達成感が宿り始めていた。
「よくやった。今日の夕飯は、収穫祭だ。肉も野菜も食い放題にしてやる」
直人の言葉に、2,400人の野太い歓声が上がった。 「「「新領主様、万歳!! ブラック企業、万歳!!」」」
「……最後のは聞き捨てならんな」
【ステータス更新】
【ナオト・カジヤ】
【スキル】
≪開拓 Lv.58≫:自然を破壊し、文明圏を広げる能力。
≪林業 Lv.45≫:伐採、製材技術。
【ルメリナ魔法工兵団(2,400名)】
【新規習得スキル】
≪テラフォーミング Lv.8≫:地形そのものを変える大規模土木魔法。




