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異世界転生したら調味料が最強武器でした  作者: 慈架太子


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第2章: 砦での出会い

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第2章: 砦での出会い


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直人が何事もなかったかのように振り返ると、そこには剣を構えたまま彫像のように固まったエレナがいた。 彼女の顔色は、爆殺された時よりもさらに悪いように見えた。


「あ……あ、貴様……」


彼女の声が震える。


「派手な魔法ならまだ分かる……。だが、指先一つ動かさず、無音で魔物の首をねじ切るとは……。貴様、本当に人間か? まさか、人の形をした魔王軍の幹部では……」


どうやら、きれいに殺したことで、逆に「底知れない不気味さ」を与えてしまったようだった。



直人は積み上がったレッドウルフとポイズンバットの死骸を見下ろし、腕を組んだ。


「さて、食料確保まではよかったが……これ、どうやって運ぶんだ?」


牛ほどの大きさの狼が5匹に、怪鳥が数羽。どう考えても素手で運べる量ではない。 エレナに持たせるわけにもいかないし、ここに置いていけば腐るか、他の魔物に食われるだけだ。


「……異世界なら、アレがあるはずだよな」


直人は虚空に手を伸ばした。 現代知識(主にゲームやラノベ)によれば、魔法がある世界には便利な収納システムが存在することが多い。 無から炎を生み出し、物を動かせる今の自分なら、空間の一つや二つ、いじれるのではないか。


「イメージしろ……。机の引き出し、あるいはパソコンのフォルダ。質量を無視してデータを格納する、亜空間倉庫ストレージ


直人は残ったMPを意識し、空間そのものに干渉するイメージを練り上げる。 (開け。俺だけの保管庫)


「……アイテムボックス!」


ズズズッ……。


直人の指先が触れた空間に、黒い『亀裂』が走った。 それは見る見るうちに広がり、向こう側が見えない漆黒の穴となる。


「で、できた……」


直人は試しに、足元の小石を放り込んでみた。小石は闇に吸い込まれ、消滅する。 次に取り出すイメージを持つと、小石は直人の手元にポロリと落ちてきた。


「よし、成功だ。あとはこれを……」


直人は**≪テレキネシス≫**で魔物の死骸を浮かせると、次々とその黒い穴へ放り込んでいった。巨大な狼がブラックホールに吸い込まれるように消えていく。


『ピロリン♪』 お馴染みの通知音。


『特定行動を確認。スキル**≪アイテムボックス Lv.1≫を習得しました』 『空間魔法の初歩的行使を確認。称号≪理を曲げる者≫**を獲得しました』


「よし、これで手ぶらで移動できるな」


直人は満足げに黒い穴を閉じた。 振り返ると、エレナが完全に虚ろな目で天を仰いでいた。


「時空魔法……。古代文明と共に失われたはずの、伝説の系統……。それを、荷物運びのために……?」


彼女のキャパシティは、とっくに限界を超えていたようだ。


「さて、ステータスはどうなったかな」


【名前】 ナオト・カジヤ 【レベル】 8 (UP! 群れ討伐により上昇) 【職業】 なし(無職)


【パラメータ】


HP: 250 / 250 (+40)


MP: 380 / 510 (最大値+60 / 消費あり)


【ステータス】


筋力:D+


敏捷:C


耐久:E+


魔力:A- (成長中)


【残りSP】:10


【スキル】


≪格闘 Lv.2≫


≪剣術 Lv.1≫


≪解体 Lv.1≫


≪冷徹≫


≪魔力感知 Lv.MAX≫


≪生活魔法≫


≪パイロキネシス Lv.2≫ (UP!)


≪テレキネシス Lv.2≫ (UP!)


≪アイテムボックス Lv.1≫ (NEW!)


※亜空間収納。時間の流れが停止するため、腐敗しない。容量は魔力に依存。


【称号】


≪理を曲げる者≫ (NEW!)


※魔法の発動補正(大)。常識外の魔法を行使しやすくなる。


「……『時間停止』機能付きか。冷蔵庫いらずだな」


直人は便利すぎる機能に感心しつつ、とりあえずの方針を決めた。 まずは情報の確保だ。


「よし、エレナ。移動しよう。人のいる場所へ案内してくれるか?」


直人が声をかけると、エレナはビクリと震え、まだ力の入らない足でどうにか立ち上がった。 その顔には冷や汗が浮かんでいるが、瞳にある光――騎士としての矜持だけは失われていない。


「……ふ、ふん。勘違いするなよ、貴様」


彼女は震える声で、それでも精一杯の虚勢を張って直人を指差した。


「貴様のそのデタラメな力……認めたくはないが、今の私一人では到底太刀打ちできん。それに、貴様には一度命を救われた借りもある」


エレナは剣をガチャリと鳴らして鞘に納めると、ツンと顔を背けた。


「案内してやる。……だが! 決して貴様に屈したわけではないからな! あくまで『一時的な協力関係』だ。そこを履き違えるでないぞ、この……化け物が!」


「はいはい。頼りにしてるよ、姫騎士様」


「貴様、人を馬鹿にしているのか!?」


こうして、規格外の元サラリーマンと、亡国の姫騎士による奇妙な旅が始まった。


「……そういえば、アンタいくつなんだ?」


並んで歩きながら、直人はふと気になって尋ねた。 透き通るような肌は若々しいが、騎士として部隊を率いていたような統率力や、その古風で偉そうな話し方。ただの少女ではない、相応の修羅場をくぐってきた貫禄がある。


「女性に年齢を尋ねるとは、貴様の国の男はデリカシーというものを母の胎内に忘れてきたのか?」


エレナは心底軽蔑したような目で直人を見たが、しぶしぶといった様子で答えた。


「……23だ」


「23歳?」


直人は少し意外そうに眉を上げた。 (今の俺の肉体年齢(18)よりは年上で、中身(32)から見れば一回り近く下か……。いや、新卒社会人くらいだと考えると、あの修羅場での覚悟の決まり方は凄まじいな)


「なんだその反応は。『その歳で行き遅れのオールドミスか』とでも言いたいのか?」 エレナが眼光鋭く睨んでくる。どうやら気にしているポイントらしい。


「いや、違うって。若くして国を背負って戦ってたんだなと思って、素直に感心しただけだよ」


「……ふん。口の上手い男だ」


エレナはそっぽを向いたが、まんざらでもないのか、その耳がほんのりと赤くなっているのを、直人の強化された視力は見逃さなかった。


「……お、いたいた」


街道沿いの林を抜けた先、直人は**≪魔力感知 Lv.8≫**で捉えた反応の方角を指差した。 そこには、豚のような鼻を持つ巨漢の魔物――『オーク』の集団がたむろしていた。数は10体ほど。


「オークの小隊か……。奴らは皮膚が厚く、生半可な剣撃では通らんぞ。迂回すべきだ」


エレナが慎重に提案するが、直人は首を横に振った。


「いや、今の俺には『経験値』が必要だ。それに、皮膚が厚かろうが何だろうが、関節の構造は生物である以上、変わらないだろう?」


「は? 関節……?」


直人は一歩前に出ると、オーケストラの指揮者のように両手を広げた。 燃やす必要もない。埋める必要もない。 今の直人にある膨大なMPと、Aランクの魔力。これを**≪テレキネシス≫**に乗せれば、物理的な接触など不要だ。


直人はオークたち一頭一頭の「頸椎けいつい」に、見えない魔力の手を絡みつかせた。


(掴んで……一斉に、回す)


直人は、ペットボトルのキャップを開けるような気軽さで、両手首をクルリとひねった。


ゴキィッ、ベキョッ、グリュン!!


「ブ……ッ!?」


10体のオークたちの首が、一斉にありえない方向――真後ろ、あるいは1回転して真横へとねじ曲がった。 断末魔の悲鳴すら上がらない。神経を瞬時に断裂された巨漢たちは、糸が切れた人形のようにドサドサと地面に崩れ落ちた。


「……よし。やっぱりこれが一番早いな」


直人は残身もそこそこに、手を払った。 消費MPはわずか。効率的かつ、慈悲のない即死攻撃。


「あ、あぅ……」


エレナが口元を押さえ、真っ青な顔で後ずさる。 魔法で焼かれるよりも、泥に沈められるよりも、何倍も生理的嫌悪感を催す光景。 「指先一つ動かさず、集団の首をへし折る」という行為は、彼女の目には完全に悪魔の所業に映っていた。


『ピロリン♪』 『多数の敵を同時撃破。経験値ボーナスを獲得。レベルが大幅に上昇しました』


直人は気にせず、ステータスを確認する。


【名前】 ナオト・カジヤ 【レベル】 8 → 15 【職業】 なし(無職)


【パラメータ】


HP: 450 / 450 (+200)


MP: 850 / 850 (+340)


【ステータス】


筋力:C


敏捷:C+


耐久:D+


魔力:A+


【残りSP】:35


【スキル】


≪格闘 Lv.4≫


≪剣術 Lv.2≫


≪解体 Lv.3≫


≪冷徹 Lv.5≫


≪魔力感知 Lv.12≫


≪生活魔法 Lv.3≫


≪パイロキネシス Lv.4≫


≪テレキネシス Lv.18≫ (↑↑ 殺傷への転用により爆上がり)


≪アイテムボックス Lv.3≫


「お、上限カンストなしか」


直人はスキルのレベル表記を見てニヤリとした。 通常、ゲームなどではLv.10あたりで「MAX」となりそうなものだが、この世界には限界がないらしい。 テレキネシスのレベルが上がったことで、今ならもっと重いもの、あるいはもっと遠くのものを「ひねれる」気がした。


「おい、エレナ。次行くぞ。日が暮れるまでにレベル20は行きたい」


「……貴様、本当に人間か? そのうち、ドラゴンの首まで素手でねじ切りそうで怖いのだが……」


エレナの戦慄をよそに、直人の「首ひねりレベリング」は続行された。


「せっかくの資源リソースだ。放置する手はないな」


直人は地面に転がる10体のオークの死骸を見回すと、再び虚空に『亀裂』を開いた。


収納インポート


**≪テレキネシス≫**で数トンはあるであろう肉の山を一斉に浮かせ、次々と亜空間の闇の中へ放り込んでいく。 もはや手慣れたものだ。ブラックホールのような吸引力であっという間にオークたちが消えていく。


「……貴様、そのうち城ひとつ丸ごと持ち運びそうだな」


エレナが呆れたように呟くが、直人は真剣な顔で顎に手を当てた。


「さて、問題はここからだ。これだけの肉、いちいちナイフで皮を剥いで肉を切り分けてたら、何日かかるか分からない」


残業はしたくない。効率化が必要だ。 直人はステータス画面を開き、今回獲得した SPステータスポイント35 の使い道を決定した。


「今回は魔力じゃない。……『解体』に全振りだ!」


今の圧倒的な魔力とテレキネシスがあれば、戦闘は何とかなる。今のボトルネックは「戦利品の処理速度」だ。 直人は迷わず、全てのポイントを**≪解体≫**スキルへと注ぎ込んだ。


『ピロリロリンッ!』 脳内で激しい通知音が鳴り響く。 直人の脳裏に、あらゆる生物の骨格、筋肉の繊維、急所の位置、皮の継ぎ目といった膨大な解剖学的知識が奔流となって流れ込んでくる。


「……なるほど。構造が『見える』」


直人はニヤリと笑い、ステータスを確認した。


【名前】 ナオト・カジヤ 【レベル】 15 【職業】 なし(無職)


【パラメータ】


HP: 450 / 450


MP: 850 / 850


【ステータス】


筋力:C


敏捷:C+


耐久:D+


魔力:A+


【残りSP】:0


【スキル】


≪格闘 Lv.4≫


≪剣術 Lv.2≫


≪冷徹 Lv.5≫


≪魔力感知 Lv.12≫


≪生活魔法 Lv.3≫


≪パイロキネシス Lv.4≫


≪テレキネシス Lv.18≫


≪アイテムボックス Lv.3≫


≪解体 Lv.42≫ (↑↑ SP全投入により爆増)


※補足:対象を一目見るだけで素材ごとの境界線を視認可能。刃物を使わずとも、魔力干渉による「分解」が可能になる領域。


「レベル42……。これなら、いけるか?」


直人はアイテムボックスの中から、先ほど収納したばかりのオークを1体、実験的に取り出した。 ナイフは持たない。ただ、右手をかざすだけだ。


「……解体プロセス


直人の脳内イメージに従い、不可視の刃がオークの死体を駆け巡った。


シュパパパパッ!!


一瞬だった。 皮がきれいに剥がれ、肉は部位ごとにブロック状に切り分けられ、骨は素材として選別され、内臓は廃棄部分と食用部分に分かれた。 まるで工場にある精肉加工マシーンが、0.1秒で作業を完了させたような光景。


「す、すごい……! 血の一滴も無駄に飛び散っていない……!」


エレナが目を見開いて感嘆の声を上げる。


「よし、品質も最高だ。これなら高く売れるし、美味い飯も食える」


直人はきれいに処理された素材を再びアイテムボックスへ収納した。 戦闘は『首ひねり』、処理は『瞬間解体』。 この世界に来てわずか数時間で、直人は異常なまでの「効率的ハンター」へと進化を遂げていた。


「……待てよ。こいつは捨てちゃもったいないな」


直人は解体によって仕分けられた「廃棄予定」の山の中から、湯気を立てる内臓類――小腸、大腸、レバー、ハツなどを**≪テレキネシス≫**で浮かせた。 オークは豚に近い。ならば、その内臓ホルモンも脂が乗っていて絶品のはずだ。


「貴様、正気か? 魔物の内臓など、臭みが酷くて食えたものではないぞ。それに寄生虫や毒だって……」 エレナが汚物を見るような目で顔をしかめる。


「普通ならな。だが、下処理さえ完璧なら『至高のツマミ』に化けるんだよ」


直人は浮かせたホルモンを見据える。 今の**≪解体 Lv.42≫**で物理的な分離は完璧だ。だが、腸壁についた汚れや独特の獣臭、そして魔物特有の不浄な成分までは取り切れていない。水洗い程度では落ちないレベルだ。


「……イメージしろ。洗浄、殺菌、消臭。あらゆる不純物を除去し、純粋な食材へと還元する」


直人はありったけの魔力を込め、生活魔法の概念を拡張した。


「……浄化クリーン!」


眩い光がホルモンを包み込む。 シュワワワ……という音と共に、黒ずんだ汚れやドス黒い魔素が霧となって消えていく。


『ピロリン♪ ピロリン♪』 通知音が連続して鳴る。


『特定行動を確認。以下のスキルを習得しました』


≪ピュリフィケーション≫:浄化・精製。対象から毒、汚れ、細菌、不純物を取り除く。


≪ピュリファイ≫:聖浄。対象の邪悪な気、呪い、アンデッド属性を祓い清める。


「よし、完璧だ!」


光が収まると、そこには白く輝くシマチョウ、鮮やかなルビー色のレバー、プリプリのハツが浮かんでいた。 あの強烈な獣臭は完全に消え、ほのかに甘い脂の香りすら漂っている。


「これが……オークの内臓だと?」 エレナが目を丸くして、その美しくさえある肉塊を見つめる。


「『ピュリフィケーション』で物理的な汚れと毒を抜き、『ピュリファイ』で魔物特有の邪気も飛ばした。これなら生でもいけるレベルだぞ(※加熱はします)」


直人は満足げに頷き、ピカピカのホルモンをアイテムボックスの『冷蔵エリア(時間停止)』へと収納した。


「今夜は焼肉だな。……塩はあるか?」


「……貴様、聖職者クレリックの高位魔法である『ピュリファイ』を、もつ焼きの下処理のために習得したのか……?」


エレナは頭を抱えた。 数千の民を救うための聖なる光が、まさかホルモンの臭み取りに使われるとは、教会の神官が知れば卒倒するに違いない。


「塩……? そのような貴重品、野営の道具に入っているわけがなかろう。街で買えば小袋一つで銀貨数枚はするぞ」


エレナが呆れたように言った。どうやらこの世界では、塩は地球の中世同様、あるいはそれ以上に高価な嗜好品のようだ。


「マジか。塩がない焼肉なんて、タレのない残業みたいなもんだぞ……」


直人は絶望しかけたが、ふと足元の地面を見て思いついた。 ここは内陸の草原だが、かつて海だった場所や、ミネラル豊富な土壌なら、微量な塩分が含まれているかもしれない。


「……探してみるか」


直人は**≪鑑定≫と≪魔力感知≫**を全開にし、地面をスキャンし始めた。 (成分分析。ナトリウム、塩素、ミネラル……塩分を含んだ土壌を特定)


「……あった。この辺りだ」


直人は特定の箇所の土を**≪地属性魔法≫**で盛り上げ、バスケットボール大の土塊を空中に浮かせた。 エレナが怪訝な顔をする。 「土をどうするつもりだ? まさか、泥団子で味付けをする気ではあるまいな」


「見てろって。……ここからが化学ケミストリーの時間だ」


直人は空中の土塊に、持てる全てのスキルを動員した。


≪解体(分解)≫:土塊を構成する物質レベルまで分解。土、有機物、水分、そしてミネラルへ。


≪テレキネシス(選別)≫:必要な成分(塩化ナトリウム)のみを抽出・分離。


≪ピュリフィケーション(精製)≫:不純物、毒素、泥の雑味を完全除去し、純度100%へ。


≪パイロキネシス(乾燥)≫:余分な水分を蒸発させ、結晶化させる。


「……抽出エクストラクト!」


シュゥゥゥッ……!


土塊が砂となって崩れ落ち、その中心に残ったのは、キラキラと太陽光を反射して輝く、白い結晶の山だった。


「で、できた……!」


直人は掌に落ちてきた白い粉を少し舐めた。 ガツンとくる塩気、その後に広がるほのかな甘み。不純物が一切ない、最高級の精製塩だ。


「う、嘘だろう……? 土から……『白い黄金』を精製したというのか!?」


エレナが目を剥いて驚愕する。 塩を無限に生み出せるとなれば、それだけで国家予算が動くレベルの偉業だ。それを直人は、ただ「ホルモンを食いたい」という一心でやってのけた。


『ピロリン♪』


『物質の分解と再構築を確認。以下のスキルを習得しました』


≪錬金術 Lv.1≫:物質の組成を理解し、変成・生成する技術。


【名前】 ナオト・カジヤ 【レベル】 15 【スキル追加】


≪錬金術 Lv.1≫ (NEW!)


≪ピュリフィケーション≫


≪ピュリファイ≫


「よし、塩も確保した。エレナ、火を熾すぞ! 宴だ!」


「……貴様、本当に国を傾ける気か?」


直人は手に入れた塩と、ピカピカのホルモンを持って、上機嫌で野営の準備を始めた。 直人にとっての「異世界サバイバル」は、どうやら「異世界グルメツアー」へと変貌しつつあるようだ。


平らな岩を**≪地属性魔法≫で隆起させ、即席の鉄板(石板)を作成。その下から≪パイロキネシス≫**で絶妙な火加減を加える。 直人の手によって、草原の一角が極上の焼肉店へと変貌した。


「ジュウウウウゥッ……!」


石板の上で、真っ白なオークのホルモンが踊る。 余分な脂が弾け、香ばしい煙が立ち上る。**≪錬金術≫**で精製した純白の塩をパラリと振ると、黄金色の焼き目がさらに食欲をそそる輝きを帯びた。


「さあ、焼けたぞ。まずはシマチョウからだ」


直人は木の枝を削って作った即席の「箸」を器用に使い、アツアツの切れ端をひょいとつまみ上げた。


「……なんだその、二本の棒は? 器用なものだな」


エレナが不思議そうに見つめる。 彼女の手元にはフォークなどない。直人は「ああ、そうか」と気づき、焼けた肉を木の串に刺して、彼女の皿(これも土魔法で作った)に置いてやった。


「串焼きスタイルで頼む。熱いから気をつけろよ」


「むぅ……。見た目は美しいが、やはり魔物の臓器だぞ……」


エレナはまだ疑いの目を向けていたが、漂ってくる暴力的なまでの「美味そうな匂い」に喉をゴクリと鳴らした。 意を決し、串を手に取って、恐る恐るその先端を口に運ぶ。


「……んッ!?」


咀嚼した瞬間、彼女の碧眼が見開かれた。


クニッ、とした心地よい弾力。 歯を押し返すような強いコシがあるのに、決して硬くはない。そして、噛みしめるたびに「ジュワッ、ジュワッ」と、濃厚で甘美な脂の奔流が口いっぱいに炸裂する。


「な、なんだこれは……! 噛めば噛むほど、旨味が湧き出てくる……!?」


臭みなど微塵もない。精製塩の鋭い塩気が脂の甘みを極限まで引き立てており、いつまでも噛み続けていたい誘惑に駆られる。


「これが、あの汚らわしいオークだというのか!? この弾力、この脂の甘み……まるで最上級の霜降り肉を濃縮したようではないか!」


下処理ピュリフィケーションの勝利だな。美味いだろ?」


直人も箸で肉を口に放り込み、冷えたビールがないことを嘆きつつも、その味に舌鼓を打った。 極上の食事は、頑なな騎士の心をも解きほぐす。二人は肉をつつきながら、焚き火を囲んで語り始めた。


「……私は、3年前に滅びた『ルメリナ王国』の騎士だ」


エレナは串を持った手を止め、ポツリと語り出した。


「我が国は、北の魔境からの侵攻を防ぐ『防波堤』だった。だが、大魔潮スタンピードの際、背後の同盟国が裏切ったのだ。援軍を送るふりをして、手薄になった王都を火事場泥棒のように略奪し……国は焼かれた」


彼女の手が悔しさに震える。


「私は王族の血を引く最後の生き残りとして、散り散りになった民を導こうとした。だが、諸国は私を『正統なる王位継承権を持つ便利な道具』としてしか見ない。今日の連中も、私を捕らえて傀儡にするために帝国が放った傭兵崩れだ」


500の国が争うこの世界では、魔物の脅威さえも、隣国を出し抜くための駒にすぎない。そんな腐敗した現実を、彼女は一人で背負って逃げ続けてきたのだ。


「……そうか。大変だったな」


直人は短く答え、焼けたレバーを串に刺して彼女の皿に追加した。 重い沈黙。それを破るように、今度は直人が口を開いた。


「俺も、事情を話しておくべきか」


直人は夜空を見上げ、どこか遠い場所を懐かしむように語り始めた。


「俺は、この世界の人間じゃないんだ」


「……なに?」


「『異世界転生』……って言えばわかるか? いや、わかんないよな。俺は別の世界で、毎日朝から晩まで働いて、死んで、気づいたらここの草原にいた。32歳のおっさんが、18歳の体になってな」


直人は、自分が「ニホン」という平和だが忙しい国のサラリーマンだったこと。トラックに轢かれて死んだこと。そして、目覚めたらゲームのような能力が備わっていたことを淡々と説明した。


「別の世界……。死してなお、新たな生を受けたというのか」


エレナは手元の串を見つめたまま、直人の言葉を反芻する。 普通なら狂人の妄言だ。だが、彼女は目の前で、常識を覆す魔法スキルの数々を見せつけられている。


「……信じよう」

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