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『超解析の賢者は、難攻不落の鋼鉄の檻(アイゼン・ケージ)で自由を計算する』  作者: 済美 凛


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27/30

クロウ救出

瓦礫の向こうで、

 ゼノンの足音が、再び“意味”を取り戻した。


 速い。

 正確。

 そして、止まらない。


 俺は、クロウの腕を掴んだまま、

 最後の曲がり角へ飛び込む。


 「……ここだ!」


 グラムが、

 壁の継ぎ目に手を当てた。


 見た目は、

 ただの補修跡。


 だが、

 ここは――

 “グラムだけが知っている逃げ道”。


 「三、二――」


 カウントの“一”を待たず、

 俺とクロウは同時に前へ滑り込んだ。


 次の瞬間、

 背後で、

 金属と結界が同時に砕ける音。


 「……ゼノンが、

  “力で”抉じ開けた!」


 グラムが歯を食いしばる。


 本来なら、

 結界と鋼鉄の二重構造。


 それを、

 **“嗅ぎ当てて、壊す”**のが、

 あの男だ。


 狭い通路。

 息が詰まるほど低い天井。


 それでも――

 ここは、ゼノンでも即座に追えない。


 俺たちは、

 いくつもの分岐を抜け、

 ようやく、

 最奥の陰へと転がり込んだ。


 しばらく、

 誰も言葉を発せない。


 呼吸音と、

 自分の心臓の音だけが、

 耳を叩く。


 「……助かった、のか」


 最初に声を出したのは、

 クロウだった。


 かすれているが、

 その声は、

 確かに“生きている人間”のものだ。


 俺は、

 膝に手をつき、

 大きく息を吐いた。


 「……ああ。

  今は、な」


 クロウは、

 一瞬だけ目を閉じ、

 それから、静かに言った。


 「アルス。

  お前、

  わざわざ、

  こんな危ない真似をする必要は、

  なかったんだ」


 「ある」


 俺は、即答した。


 「お前がいないまま外に出ても、

  それは――

  “成功”とは呼べない」


 クロウは、

 ほんのわずかに、

 口元を緩めた。


 「……甘いな」


 「知ってる」


 グラムが、

 乱暴に割って入る。


 「無事なら、それでいいだろ。

  説教は、外に出てからにしろ」


 その言葉に、

 クロウは、

 小さく息を吐いた。


 だが――

 次の瞬間、

 俺の超解析が、

 “嫌な確定”をはじき出した。


 【脱獄ルート:主通路】

 【状態:使用不能】


 【原因:崩落】


 【復旧:不可能】


 頭の中で、

 数字が、

 冷たく並ぶ。


 「……一本、潰れた」


 俺がそう告げると、

 グラムが、

 すぐに理解した。


 「さっきの崩落か」


 「そうだ。

  あれで、

  いちばん安全な脱獄ルートが、完全に塞がれた」


 クロウは、

 状況を飲み込んだのか、

 静かに問いかける。


 「……つまり?」


 俺は、

 新型腕輪の重さを、

 はっきりと感じながら答えた。


 「ここから先は、

  “生きて外に出られる保証がない”ルートだけになる」


 沈黙が落ちた。


 だが、

 後悔の色は、

 誰の顔にも浮かばなかった。


 クロウは、

 しばらく考え――

 それから、

 はっきりと言った。


 「……なら、

  俺が最後尾に回る」


 「無茶だ」


 グラムが、

 即座に否定する。


 クロウは、

 首を横に振った。


 「もう一度捕まれば、

  俺は、次は確実に“処分”される」


 「だが、

  今は違う」


 「今の俺は、

  “捕まえに来る価値のある獲物”じゃない」


 その言葉に、

 俺は、

 何も言えなかった。


 正しい。

 あまりにも、正しい。


 グラムが、

 歯を噛みしめたまま、

 背を向ける。


 「……勝手に死ぬなよ」


 「努力はする」


 クロウは、

 淡々と答えた。


 そのとき――

 遠くで、

 結界が、

  完全に破壊される音が響いた。


 ゼノンが、

 もう一つ、

 壁を越えた。


 俺は、

 目を閉じ――

 そして、

 歪んだ未来の中から、

 次の“進むべき一手”を拾い上げる。


 クロウは、救った。


 だが、

 その代償として、

  俺たちは“安全な逃げ道”を、

  完全に失った。


 ここから先は、

 逃走ではない。


 “生存競争”だ。クロウ救出

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