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『超解析の賢者は、難攻不落の鋼鉄の檻(アイゼン・ケージ)で自由を計算する』  作者: 済美 凛


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集まった解除パーツ


 作業場の空気が、明らかに張りつめていた。


 音はある。

 金属を叩く音も、削る音も、火の爆ぜる音も。


 だがそれらすべてが、

 どこか抑え込まれたような重さを帯びている。


 理由は、誰もが分かっていた。


 巡回の数が、昨日から明らかに増えている。

 通路の交差点ごとに看守が立ち、

 視線の“質”が変わった。


 これはもう、ただの警戒じゃない。


 ――狩りだ。


 その中心にいるのが、

 ゼノンであることは、疑いようもなかった。


 俺は資材を運びながら、

 作業台の奥にいるグラムを見た。


 いつもより前屈みで、

 いつもより無言で、

 鉄と向き合っている。


 「……できたのか?」


 俺が声をかけると、

 グラムはすぐには答えず、

 最後の一打だけ、金槌を振り下ろした。


 ——キン。


 澄んだ音が、短く響く。


 そして、

 ゆっくりと顔を上げた。


 「……ああ。これで、全部だ」


 グラムが差し出したのは、

 小さな金属部品だった。


 最初に拾った欠片。

 二つ目に奪った破片。

 それらを核にして組み上げられた、

 腕輪解除用の最終パーツ。


 見た目はただの歪な金属器具だ。

 だが、これが――

 俺の“檻”をこじ開ける鍵になる。


 「理屈の上では、外せる」


 グラムは、はっきりと言った。


 「理屈の、上では?」


 俺が言い返すと、

 グラムは苦く笑った。


 「実物で試したことはねぇ。

 試す相手も、今までいなかったからな」


 それはつまり――

 一発勝負ということだ。


 失敗すれば、そこで終わり。

 成功しても、

 ゼノンに嗅ぎつかれれば、その瞬間で詰み。


 「……巡回、増えすぎだ」


 俺は通路の方を見た。


 今も、

 二人一組の看守が、

 規則正しく歩いていく。


 その規則正しさが、

 かえって不自然だった。


 「嗅がれてる」


 グラムも、低く言った。


 「もう、隠す段階は終わりだ」


 その日の夕方、

 リオルが、いつも以上に軽い足取りで戻ってきた。


 「いやー、すごいよ。

 どこもかしこも、看守だらけ」


 冗談めいた口調だが、

 目はまったく笑っていない。


 「完全に“囲い込み”に入ってるね」


 「……ゼノンか」


 「たぶん、確定で」


 リオルはそう言ってから、

 ちらりと俺の腕を見た。


 「で?

 ついにそのお飾り、外せる日が来た?」


 俺は、

 グラムの手元にある器具へ視線を移した。


 「準備は整った」


 そう答えた瞬間、

 リオルは一瞬だけ、

 本当に一瞬だけ――

 真顔になった。


 だが、すぐにいつもの調子に戻る。


 「へえ。

 じゃあ今夜は、

 人生で一番デカい賭けになりそうだ」


 その夜、

 房に戻った俺は、

 久しぶりに腕輪を強く握りしめた。


 冷たい金属。

 感情も、魔力も、可能性も遮断してきた檻。


 だが今は――

 その“終わり”が、はっきりと見えている。


(……もう、戻れないな)


 失敗すれば、

 捕まるだけじゃ済まない。


 クロウがどうなったか、

 俺はまだ知らない。


 だが、

 “処分”という言葉が、

 この監獄にとって何を意味するかは、

 嫌というほど知っている。


 それでも。


 俺は、目を閉じた。


 恐怖よりも、

 迷いよりも、

 今は――

 一つの“夜”を越える覚悟の方が重かった。


 解除の夜は、

 もうすぐそこまで来ている。

集まった解除パーツ

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