表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『超解析の賢者は、難攻不落の鋼鉄の檻(アイゼン・ケージ)で自由を計算する』  作者: 済美 凛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/30

鋼鉄の檻へ

世界は、常に“数字”でできていた。


 人の動き。

 感情の揺れ。

 偶然と呼ばれる出来事。


 それらすべてが、

 俺――アルス・クレイドルの目には、

 計算可能な情報の集合体として映っていた。


 生まれつき備わった異能。

 『超解析オーバー・アナリシス』。


 物理、魔法、人間心理、確率。

 あらゆる現象を光速で演算し、

 “最適解”だけを導き出す、

 異常なまでの思考能力。


 俺はそれで、生き延びてきた。

 少なくとも――

 この日までは。



「アルス・クレイドル。

 貴様を“王都魔術院爆破事件”の首謀者として拘束する」


 剣を突きつけられた瞬間、

 俺の世界は、完全に静止した。


「……待て。

 俺はそんなこと、していない」


 言い逃れではない。

 本当に、やっていない。


 だが――


「証拠はすでに揃っている」


 そう言って差し出されたのは、

 俺の魔力波形と“完全に一致する爆発残留反応”だった。


 あり得ない。


 俺は、

 あの場所にすら、近づいていない。


 だが、

 “数字が示す事実”だけが、

 すべてを押し潰した。



 その場で、

 俺は両腕を地面に押さえつけられ、

 黒い金属製の腕輪を、強制的にはめられた。


 ――その瞬間。


 頭の中から、

 “数式”が消えた。


 思考はできる。

 判断もできる。

 だが――

 あの異様なまでの解析感覚だけが、完全に遮断された。


「な……に、を……」


「“魔力封印の腕輪リストリクター”だ」


 看守が淡々と言う。


「思考型魔術師、賢者系能力者専用の拘束具」


 つまり――

 俺は、その時点で

 **“賢者ではなくなった”**ということだ。



 連行された先で、

 俺は初めて、その名を聞かされた。


「鋼鉄のアイゼン・ケージ


 王都地下に築かれた、

 脱獄者ゼロの難攻不落監獄。


 結界と物理装甲。

 看守と自動迎撃。

 そして、

 “脱獄の発想そのもの”を砕く配置構造。


 賢者も、戦士も、怪物も、

 一度入ったら、二度と外には出られない。


 それが、この監獄だった。



 重たい鉄扉が、

 俺の背後で閉じられる。


 ――ガァン。


 世界から、音が消えたように感じた。



 狭い房。

 冷たい床。

 鉄格子の向こうの、暗闇。


 俺は、座り込んだまま、

 何度も、両腕の腕輪を見つめた。


(……解析できない)


 魔力は流れない。

 確率も見えない。

 未来も読めない。


 俺は今、

 ただの、無力な囚人だった。



 だが――


(冤罪だ)


 それだけは、

 どれだけ計算できなくても、

 はっきりしている。


 俺は、罪を犯していない。


 そして、

 この監獄に入った以上、

 真実を証明する方法は、ただ一つしかない。



 ――外へ出ること。


 それしか、道はなかった。



 暗闇の向こうで、

 誰かの低い笑い声が聞こえた。


「……また一人、賢そうなのが落ちてきたな」


 俺の戦いは、

 この鋼鉄の檻の中から、

 静かに始まった。

鋼鉄の檻へ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ