コードナンバー:666
「はぁ、はぁ」
勇者は逃げていた。
パーティーは壊滅し、散り散りになっている。
魔王討伐。人類の総力をかけて挑んだ。だが、勝てなかった。
勇者の胸には後悔や、怒りなどなかった。
ただ、逃げたかった。生きたかった。勇者ですらそうなのだ。他のものが耐えられるはずがない。
「くそ、」
逃げ続けて、数刻。もはや体力が残っていない。
だが、逃げなければならない。逃げなければ、追いつかれる。追いつかれれば死んでしまう。
そうして、走っていると前方が暗くなっていた。
いや、暗い。なんてものじゃない。夜よりも洞窟よりも暗い。全ての光を吸い込み、何もないと思わされる無限の闇。
それが近づいてくると気づいた時には遅かった。
「ま、」
その一言を言うより早く、闇へと飲み込まれる。
『………これで、99,822か。』
その刹那、聞こえたのは旅の先々で出会った吟遊詩人の声だった。
「変な……走馬灯だな」
そして、全てが闇へと消える。魔王も、勇者も、街も星も、世界も、全てが無限の闇へと消えていった。
「お疲れ」
そう言ってコーヒーの入ったカップを手渡してくる。机に広がるクッキーを見るに、おやつタイム。というやつなのだろう。
「どうも」
受け取り、一口飲む。相変わらずのコーヒーに苦笑しつつ、デスクで休む。
「今回でいくつだっけ?」
「99,822です」
問いかけに答える。
「……暗記してるの?」
「えぇ、彼らも同じ人間ですから」
「ふーん、そうなんだ。あんまり背負いすぎないでね」
「大丈夫ですよ。強いので」
久しぶりの元の世界。世界に良し悪しはあまりないと思ってはいるが、やはりこの世界が1番だ。
ただ、世界を滅ぼすというのはあまり気分の良いものではない。
「666。1週間の休暇後、新たな任務だ。」
「了解です。ボス。」
俺はエレベート多次元宇宙局から家に帰る。
「1週間の休暇か、何しよっかな」
次の任務も終盤に差し掛かる。
「お前、何する気だ」
「この世界の厄災。それは他の世界にも呪いをかける。それが目覚める前にこの世界を滅ぼす。それだけだ」
「ふざけるな」
「ふざけてるのはお前だ。世界は大樹の枝のように複雑にそして多様に広がっている。だが、その大樹は一つの枝がかかった病気によって枯れるかもしれない。そうなったら、どうする?枝を切るだろ。それと同じだ」
「………………」
「大丈夫だ、苦しむことはない。幸せに死ねるよ」
装置を起動し、世界にあるすべての生命体を寝かす。彼らは夢の中で最良の人生を歩み、死んでいく。
「じゃあな」
世界を後にする。
設定
世界には厄災が眠っていることがある。その厄災には他の世界にも影響を及ぼすものもある。
なので、その厄災が目覚める前にその世界を滅ぼす。というのがこの作品の設定です。
考えた時は行けそうだと思ったんですけど、予想以上に話しを作るのが難しくて、ボツになりました。




