22、異国から来た人
マーク・ハルトマンという人と対面したとき、不思議な気持ちになった。
初めて会った人なのに、なぜかとても懐かしくなった。
そうだわ。あの人の目が私と似ているからだわ。
彼は淡い金髪で中肉中背、とても穏やかな紳士といった雰囲気だった。
その瞳の色は透き通るような淡いブルーで、私もよく似た色をしている。
ハルトマン様はすごく物腰のやわらかい人だから安心した。
エリオスからカルベラへの旅行を提案されて、実は少し躊躇していたのだけど、彼のような人が一緒なら旅先でも安心だわ。
「お疲れですか? レイラ様」
「サイラスさん」
「体によいお茶です。カルベラの土産にとハルトマン様がくださったのです」
侍女が私の目の前のテーブルでお茶を淹れてくれた。
ふわっと柑橘系の香りが漂う。
「いただきます」
ひと口飲むと少しスパイシーな味がして、芳醇な香りが口いっぱいに広がった。
「カルベラは東の国との貿易も盛んなのです。これは遠い東から伝わったお茶だそうですよ」
「変わった味だわ。でも、すごく美味しい」
「はい。初めて知ることには戸惑いもあるでしょうが、実際に体験してみるとそう悪くないものです」
「ええ、本当にそうね」
ああ、サイラスさんは私の緊張をほぐしてくれようとしている。
私がカルベラに対して抱く不安を取り除こうとしてくれているんだわ。
カルベラ国は、私が生まれた頃はこの国と敵対していたらしい。
国交が結ばれ、人々が行き来するようになって、本場の聖絵師たちも多く入ってきた。
彼らは聖絵師のあらゆる指導をおこなってくれ、この国はその文化が急速に発展していった。
神殿で訓練を受け、その能力に開花した者だけが聖絵師として残れる。
私の唯一の能力だった。
失いたくない。そのために、カルベラに行っていろいろなことを学びたい。
扉がノックされ、侍女に伴われてエリオスが入室した。
サイラスさんが彼の手を引き、私のとなりへと導いて座らせる。
私が慌てて立ち上がろうとしたら、彼がすぐに声をかけた。
「そのままでいい。君に話がある。すまないが、ふたりにしてもらえないか?」
エリオスの言葉に従い、サイラスさんと侍女たちは一礼して退室した。
目の前にはエリオスのためのお茶が置かれている。
彼がカップに手を伸ばしたので、私はそれを手助けすべきかと思った。
そのとき、彼の手と私の指先が当たってしまった。
「あ、ごめんなさい」
「大丈夫だ。俺はすべて自分でできるんだ」
「余計なことをしてしまったわ」
「気遣いはありがたく受けとっておくよ」
エリオスは穏やかに微笑んだ。
私は少し気まずさを覚えながら、先ほどのことを切り出した。
「ハルトマン様はお帰りになったの?」
「ああ。泊まっていくように伝えたが、次の用事が控えているらしい」
「お忙しい方なのね」
「そうだな」
エリオスはお茶をひと口飲んで、わずかに目を見開いた。
「ああ、これは東方の茶だな。俺は大好物なんだが、君の口にも合うか?」
「ええ。とても美味しかったわ」
「そうか。カルベラは異種文化も多く入ってきている。不思議な魅力にあふれる国だ」
「ふふっ、旅行が楽しみだわ」
エリオスも気遣ってくれている。
私が少しでもカルベラに興味が持てるようにしてくれているんだわ。




