13、すべて私がやったのよ(セリス)
レイラ、今頃どうしているかしら?
ベルン男爵に気に入られるといいわね。
大丈夫よ。あのお方は少しお年を召しているけれど、お金持ちだし今の生活よりずっと贅沢な暮らしはできるはずよ。彼は妾にもすごくお優しい方だって有名だもの。
感謝してよね。
私があなたを救ってあげたの。
あなたはずっと伯父様に監禁されて、食事も質素なものしか与えられず、仕事の納期が遅れそうになると暴力まで振るわれて、本当に可哀想だった。
そんなあなたを見ていて、ほんの少しだけ優越感を抱いたけれど、哀れんでいたのは本当よ。
だけど、やっぱりどうしても許せないことってあるの。
私とあなたは同時期から神殿で絵を学び始めたわ。
だけど、あなたは瞬く間に才能を開花させ、子供なのに大人レベルの絵を描くようになった。
その頃の私は純粋に、あなたのことをすごいなって思っていたの。
もちろん尊敬もしていたわ。
だって、あなたは私より年上だから、当然のことだって。
でもね、年齢が上がっていくうちに、歳の差なんて感じなくなっていった。
それなのに、あなたは私を大きく引き離して、品評会で大人に混じってトップ10以内の順位になった。
一方、私は品評会に出展することもできないくらいの実力だった。
子供の中ではトップレベルだったけど、あなたを見ていると自分が情けなくなったわ。
どうして同じ時期に始めたのに、あなたとこんなに差がついてしまったのか。
納得できなくて、あなたが何か不正をしているのではないかと思ったわ。
調べてみたけれど、不審な点はなくて、がっかりした。
やがて、あなたに仕事の依頼が来るようになって焦ったわ。
私は品評会にようやく出せるようになったのに、順位は30位以下。
一方のあなたはすでに1位になっていた。
何かが間違っていると思ったの。
あなただけがこんなにいい思いをするなんて、許せないわ。
でもね、私はお母様と伯父様とみんなで食事をするときが一番心が穏やかになれたの。
だって、伯父様は実の娘のあなたを嫌ってて、私を溺愛してくれるんだもの。
外では凛とした姿勢で堂々と振る舞うあなたが、家庭内では無言で虚ろな表情をしているのが、滑稽でたまらなかった。
それだけが、私の自尊心を満たしてくれた。
やがて、あなたは伯父様が取ってくる仕事の依頼が多すぎて学校を辞めたわ。
おかげで私は学校で華になれたの。
そのことにも感謝している。
だって、アベリオが私だけを見てくれると思ったから。
アベリオと出会ったのも、あなたと一緒にいたときだったわね。
私はアベリオに一目惚れした。
絶対に彼のお嫁さんになりたいと思ったの。
それなのに、アベリオはある日こう言ったの。
「君に報告があるんだ。実は、僕はレイラに縁談を申し込んだ」
驚愕を通り越して絶句したわ。
どうしてなの?
今あなたのそばにいるのは、レイラではなく私なのに!
レイラ、あなたはどこまで私の人生の邪魔をすれば気が済むの?
私のすべてを奪うなんて許せない!
あんたなんか、いなくなればいいのよ!
ある日、私は実行した。
レイラとまったく同じ絵を描いたの。
そして、レイラの絵が仕上がった頃に伯父様の家に行き、私の絵と交換した。
ふふっ、レイラは私が頻繁にあなたの様子を見に差し入れを持って行っていると思っていたんでしょ。
実は、あなたの部屋を訪れて、進捗を確認していたのよ。
そして、私は忠実にあなたの絵を再現してみせた。
多少異なる部分はあったけれど、伯父様はあなたの絵と私の絵の区別なんてできなかったわ。
だって、私もすでに品評会でトップ10入りするくらいの実力になっていたんだもの。
でもね、私には絵の依頼が来ないのよ。
なぜか。それはあなたがいるせいよ。
あなたがいなくなれば、みんな私に依頼してくるわ。
そう思って、私は入念に準備したの。
顧客たちにはレイラの絵と見せかけて私の絵を売った。
そうやって、私の絵をアピールしていくの。
いずれ、あなたが絵を描けなくなった頃に、皆が私の絵を違和感なく求めるようになるからよ。
そう、あなたはいずれ、必ず絵が描けなくなるの。
私は違法薬物を手に入れるために闇取引をする商人と接触した。
もちろん素性は隠して。
手に入れたのは神経を遮断する薬よ。
医療ではそれを薄めて麻酔薬として使われるらしいわ。
でもね、私が手に入れたのは原液。つまり、改良前の毒草を煎じたもの。
触れると大火傷を負い、神経を完全に麻痺させる。
飲み込むと死に至る毒だけど、私は別にあなたを殺したいわけじゃないの。
ただ、あなたに絶望を味わせたいだけ。
何の努力もせずにトップまで登りつめたあなたに、挫折を味わってもらいたいのよ。
計画は順調に進んだわ。




