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第4話 懐かしの記憶

夏の日差しが照りつける中、海斗は立ちすくんでいた。

目の前に立つのは、どこからどう見ても美人な女の子。

どうやら目が合った瞬間から、海斗の頭は真っ白になったらしい。


「お、俺、用事思い出した!」


それだけ言い残すと、逃げるように人混みの中へ消えていった。


「ふふっ、面白い友達だね」


陽菜が小さく笑う。その仕草が妙に自然で、俺は軽くため息をついた。


「ところで、たくみくん。お昼はもう食べた?」


「いや、まだだけど」


「なら、一緒に行こうよ!駅の中にカフェあったよね?」


陽菜の瞳が期待で輝いている。強引じゃないけど、断れる雰囲気じゃない。


「わかった、わかった」


押しに負けたふりをしながら答えると、陽菜はぱっと花が咲くように笑った。

二人で並んで歩き、駅ビルの中のガラス張りのカフェに入る。

木目調の落ち着いた空間。昼下がりの光が窓際の席をやわらかく照らしていた。

席につくなり、陽菜はメニューを広げて「懐かしいなぁ」とつぶやく。


「こうやって、たくみくんと並んで座ってるの。小学校ぶりかも」


「確かに。けど、陽菜結構変わったよね」


「え? 私?」


「うん。前よりずっと大人っぽい」


少し驚いたように目を瞬かせ、それから恥ずかしそうに笑う。


「高校に入ってからかな。制服着ると、見た目とかなんか気になっちゃって」


髪を指先でくるくる弄びながらそう言う姿に、無邪気さと大人っぽさが同居している気がした。

俺の頭にはランドセルを背負った陽菜がよぎった。

けれどその記憶を深く辿る前に、目の前の陽菜が問いかけてくる。


「最近どう? 学校生活は」


「男子校だから、気楽だよ。異性との関わりは、ほぼゼロだけど」


「そっか。でも楽しそうだね」


陽菜はにこやかに微笑む。押し付けがましくないのに、人の話をきちんと聞いてくれる。昔からそうだった。


「でもね」


ストローで氷をかき混ぜながら、彼女はふっと目を細めた。


「たくみくんは、やっぱり真面目だなって思った」


「そうかな」


「うん。だってさ、小学生のときあったじゃん。クラスで誰かが悪口言われてて、みんな笑ってたのに…たくみくんだけ本気で止めてた。『そんなの良くない』って。あれ、私めっちゃ覚えてるよ。」


彼女の声は柔らかい。けれど、筋のある声だ。


「そんなこと、あったっけ」


「覚えてないの? 私、あの時すごく安心したんだよ」


少しだけ唇を尖らせる陽菜。その仕草が昔と同じで、思わず笑ってしまった。

そのタイミングで、テーブルに料理が運ばれてくる。

美味しそうな匂いが漂い、二人の会話は自然に食事へと溶け込んでいった。

窓の外では駅前の喧騒が続いている。

けれど、この席だけは別世界のように落ち着く。

小さな会話と笑顔。


陽菜と過ごすそのひとときが、妙に心に沁みていくのを感じていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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