表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/30

第25話 友情

「見た目……どうしよう……」


 教室の窓から差し込む午後の光が、やけに眩しい。土曜日、陽菜とのデートはすぐそこに迫っているというのに、俺はまだ決まっていなかった。服装も、プランも、告白のタイミングすらも。


「どうしよう……」


 隣の席でシャーペンを回していた海斗が、あきれ顔で俺を見る。


「だからなんで俺に聞くんだよ……」


「親友だろ?助けてくれよ」


「はあ。まあいいけど。今日部活ないし、湊も誘ってショッピングモール行くか。LINE送っとくわ」


「ありがとう、神様……」


「へへ、それほどでもあるぞ」


 海斗がスマホを取り出し、湊にメッセージを送る。数秒で返事がきた。


【今日放課後空いてる?】


【空いてる】


【タクのデート準備手伝ってくんね?】


【仕方ないな、いいよ】


 やっぱり、持つべきものは親友だ。





 放課後。地下鉄に揺られて数駅、そこから少し歩くと、大きなドームの横にショッピングモールが現れた。ここに来ると、なぜか胸が躍る。



 見渡せば、平日でもそれなりに人がいる。制服姿の高校生、買い物袋を抱えた主婦、カップル。どこを見てもリア充っぽい光景で、俺は余計に落ち着かなくなった。


「おい、タク。そんな緊張すんなよ。ただの買い物だろ」


 横を歩く海斗が呆れたように言う。


「いや、ただのじゃないだろ。デートの服だぞ?人生で一番重要な買い物かもしれん」


「大げさすぎ。どうせ陽菜さんなら、タクが着てるTシャツでも笑ってくれるって」


「そう思うけどさ……やっぱちゃんとしたいんだよ」


 そう口にした瞬間、背後から湊がにやにや顔で顔を覗き込んできた。


「お、タクが真面目モードだ。これは期待できるね」


「うるせぇ。お前らに頼んだのは、冷やかしじゃなくてアドバイスだからな」



 三人でエスカレーターに乗り、アパレルフロアへ。壁一面のポスターにはモデルが笑顔でポーズを決め、ショップの中からは店員の明るい声が飛び交っている。


 白を基調にした店内には、秋物の新作が並んでいた。トレーナー、シャツ、ジャケット。どれを見てもオシャレすぎて、庶民感覚の俺にはハードルが高い。


「お、これなんかどうだ?」


 海斗が手に取ったのは、シンプルな黒のジャケット。


「うーん……かっこいいけど、大人っぽすぎない?」


 湊が首を傾げ、次にグレーのカーディガンを取り出す。


「これくらいなら陽菜ちゃんも安心して横に歩けそうじゃない?」


「お前、なんでそんなに女子目線わかるんだよ」


「姉貴の買い物付き合わされてんの、毎週だから」


「あー……それで妙に詳しいのか」


「まあ、湊彼女もいるしな」


 俺は鏡の前に立ち、カーディガンを羽織ってみる。



 普段の姿とは違う自分がそこに映った。


「どう?」


「お、いいじゃん。やっぱり顔がそこそこ良いと、なんでも似合うな」


「うん、清潔感あるし、匠海っぽい」


「そこそこってなんだよ、そこそこって…」


 店員さんまで近づいてきて、「すごく似合ってますよ」なんて言うもんだから、耳が赤くなる。


 結局、カーディガンと白シャツ、そしてワイドデニムを買った。レジを済ませた瞬間、なぜか背筋がシャキッと伸びた気がした。




「まあタクの服も決まったし、少し腹ごしらえするか」


「そうだね、フードコート行こう」


 フードコートに移動すると、放課後の学生や家族連れで賑わっていた。


 俺は無難に和風とんこつラーメンを、海斗はクレープとアイスを、そして湊は


「湊、お前食いすぎじゃね?」


 海斗が呆れたようにアイスを舐めながら言った。

 湊の前には、たこ焼き二舟とポテト、さらにジュースまで。


「お腹空くんだもん」


「たこ焼き二舟って……すごいね」


 俺は思わず笑ってしまう。こんなに食べるのに、なんであんなに細いんだろう。同じオーケストラ部で動いてるはずなのに。


 湊はたこ焼きを頬張りながら、話題を切り替えた。


「そういえば匠海、デートプランは決まったの?」


「いや……というか、告白の場所すら迷ってる」


「え、タク。お前、あれでまだ付き合ってなかったのか?」


 海斗が目を丸くする。文化祭での俺と陽菜の様子を見て、てっきり付き合ってると思ってたらしい。


「うん……」


「ほんと、ヘタレだよねー匠海は」


「うるせ」


 言い返すと、海斗が真顔になった。


「まあ、この辺なら、あそこだろ」


「そうだよね。あそこしかないよね」


 湊も頷きながら話す

「だよなぁー」


 俺はラーメンのスープをすすりながら、心臓がまたドクドクと鳴り始めているのを感じた。

 でも、二人がここまで協力してくれるんだ。決めないと。いや、決めてみせる。





「湊、海斗。今日はありがとう。……決めてくる」


 買い物袋を手に、俺は二人を見据えて言った。


「おう、タクなら行けるから頑張れ」


「俺も応援してるよ」


 笑顔で背中を押してくれる二人に、思わず胸が熱くなった。


 来週の土曜日。

 その日が、俺にとってきっと人生で一番大事な日になる。



最後までお読みいただきありがとうございます!

毎日投稿していますので、よろしければブックマークしていただけると嬉しいです。

アドバイス・感想・評価もお待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ