表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宙の彷徨者  作者: Isel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/198

第88話 居場所

セラがアルシェンの後を追いかけていくと、大きな木の下で体育座りをしているアルシェンの姿を見つけた。涙こそ流してはいないものの、その顔は廃墟に行った時よりずっと暗くなっている。


「アルシェン…」

「…」

「隣…良い?」

「…はい」


空は鈍い色になっており、今にも雨が降り出しそうだ。セラは何か話さなければと思い、アルシェンに話題を振る。


「やっぱり、辞めたくないんだね」

「…はい。先程もお話ししましたが…送魂はわたしの生きる理由だったので」

「…何か分かるな、その気持ち。自分語りになっちゃうんだけど…あたしも最近、大切な人が…突然殺されちゃってさ。たまたま蘇生出来たから良かったけど…君はそうもいかないんだもんね」

「…じゃあ、わたしも1つ…身の上話をしていいですか?」

「うん。君が楽になるなら、聞くよ」


アルシェンは深呼吸して心を落ち着かせてから、セラに『身の上話』を始める。


「…わたしの能力で…魂から見る事が出来るその人の情報は沢山あります。その中の1つに…『死期』があるんです」

「いつその人が死ぬかって事?」

「はい。具体的な判別方法は長くなるので言いませんが…おおよそセラちゃんの認識で正しいです」

「素人目線だと便利に聞こえるけど…」

「確かに、便利ではあります。ですが…幼い頃のわたしの周りの人達は皆、他人の死期を予知出来るわたしを気味悪がりました」


アルシェンは過去を懐かしみ、同時にその時の悲しみを思い出すかのような表情を浮かべる。


「でも…1人だけ、わたしを気味悪がらずに普通に接してくれた子が居たんです」

「…うん」


セラも余計な事は言わずに、頷きながら話を聞いている。


「そしてある日、その子に死相が見えました。わたしはその子に『危ない』って伝えたんですが……結局その子は、わたしの力を信じずに行動して…階段から落ちて死んでしまいました。その事故の様子は…少し刺激的なので伏せますが」

「…そうなんだ」

「そんな事があったからこそ、わたしは送魂士の立場を…かけがえのない居場所だと思っていたんです。なのに、いきなり生きる理由も居場所も失う事になって…」


そこまで喋って、アルシェンは言葉を途切れさせた。改めて直視した現実が辛かったのだろうか。


「…辛いよね。あの子(リーヴ)も…あたしの生きる理由だったから、その気持ちはよく分かるよ」


セラはアルシェンの背中を撫でながら、優しく声をかけ続ける。


「辛かったら、泣いた方が良いんだよ?ここには…君とあたししか居ないから」

「……うっ…ひくっ…」


セラに慰められたのが引き金になったのか、アルシェンの目の端にどんどん涙が浮かんでくる。今にもそれが溢れ落ちそうになった時…


「…!いた!」


リーヴが息を切らしながら走って来た。


「リーちゃん…?」

「あ…アルシェン、に…つた…伝え……なきゃ、いけない…ことが…」

「…息を整えてからで良いよ?」


リーヴはこのまま死ぬんじゃないかという勢いで地面に伏し、数分ほどかけて息を整えた。どんだけ走ったんだ。


「ふぅ…よし、大丈夫」

「何を言いに来たの?」

「サンサーラが、アルシェンに思ってたこと」

「先生が…?」


それから、アルシェンは先程サンサーラから聞いた全てを話した。サンサーラは送魂士を辞めさせる事を申し訳なく思っている事、サンサーラは送魂士の事を愛している事、愛しているが故に…未来を大切にしてほしいと願っている事。それを聞いたアルシェンは何も言わずに、ただ涙を流していたと言う。


「先生…」


しばらくしてアルシェンは涙を拭い、何とか話せるようになった。


「…わたし…恥ずかしいですね。先生の真意を知らずに、勝手に1人で拗ねて…」

「あの言い方は真意を悟らせるつもり無かったと思うよ…」

「…とりあえず、帰ろうよ。サンサーラとクオンがまってる」


3人は来た道を引き返し、サンサーラ達の待つ荒屋へ帰っていった。戻ると、いつもと変わらない様子のサンサーラが挨拶をした。


「おかえりなさい」

「…先生」

「はい?」

「…すみませんでした!先生の気遣いに気づかないまま拗ねて、迷惑をかけて…!」

「気遣いなどではありません。単なるワタシの現実逃避…自己中心的な決断に過ぎません」


真相を知っていた事もあって、2人は無事に仲直りした。しかし、問題はまだ残っている。


「さて…アナタの住居をどうしましょうか」

「あ、そっか。サンサーラの家ってそんなに広くないし、新しい送魂士の人と一緒に住む訳にも、いかないもんね」


残る『アルシェンの新居問題』について、その場の全員で頭を捻ってみる。が、資金の問題がどうしても立ちはだかるのだ。アルシェンもサンサーラもある程度の貯金はあるが、家を買えるほどではない。旅団に関しては論外だ。その時、ふとセラが思い立って口を開いた。


「…じゃあさ、いっそあたし達と一緒に旅に出ない?それなら野宿も出来るし、家を探す必要も無いかなって」

「おお…いいね、それ。アルシェンはどう?」

「いい…んですか?」

「うん。拒む理由は無いよ」

「なら…よろしくお願いします!皆さん!」


こうして、星間旅団に新たな仲間が加入した。いつになっても、仲間が増えると気分が高揚するものである。リーヴとセラとクオンが嬉しそうに雑談している間、アルシェンとサンサーラは少し真剣そうな話をしていた。


「…アルシェン」

「はい、何でしょうか?」

「『送魂士を辞めろ』とは言いましたが……送魂自体は辞めなくて良いです。この意味は分かりますか?」

「…はい。『彼女』の送魂だけは…今後も諦めなくて良い、って事ですよね」

「その通りです。というか、アナタが送魂士を辞めたくなかった理由の何割かは…彼女の件も絡んでいるのでしょう?」

「…はい。いつか…彼女も必ず救ってみせます」

「ですが、今のアナタは一度送魂を行う事でも死ぬ可能性があるという事も…忘れてはなりませんよ」

「それも…分かっています」


そして、サンサーラと旅団は荒屋の中で夜を明かした。ちなみに寝る時間になると、クオンがサンサーラを連れて外に出ていったという。

キャラクタープロフィール

【曇天を晴らす虹】アルシェン

種族 人間

所属 浮月→星間旅団

好きなもの わたあめ 虹 

嫌いなもの 蛇 蜘蛛 血

異能 魂を知覚し、魂に干渉する力

作者コメント

ふわふわツインテールかつ白タイツ(未描写)という私の癖が詰め込まれた子。後々分かると思うがこいつはめっちゃ有能。ちなみに魂関連の魔法やサンサーラに習った魔法以外にも風を操る事が出来、多少であれば飛行も出来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ