第82話 ただいま
豆知識
流離の刀には「彼願」という名前が付いています
セラとクオンが滞在許可を貰ったり、サンサーラが噂の人斬りと戦ったりした日から2日後。セラは朝から妙にソワソワしており、いつもより落ち着かない様子だった。それも当然だろう、サンサーラが告げたリーヴの蘇生完了までの期間は『長くて』今日までなのだから。
「では2人とも。最後の仕上げをしてきますので、少し外で待っていてください」
サンサーラの言う通りに、セラとクオンは荒屋の外に出る。
「…いざ再会するとなると……何故か少し緊張しますね」
「うん……思えば、クオンが居なかったら…リーヴは助からなかったんだね。改めて…ありがとう、クオン。あたし達の旅について来てくれて」
「いえ、そんな…私はただ、友人を紹介しただけで…」
「謙遜するなぁ…」
緊張からか、2人が若干震えた声で話していると、中からサンサーラが出て来た。
「さぁ、お待たせ致しました。皆さん入り口にご注目ください…」
何故かショーの司会者のような口調で話すサンサーラは、入り口の横に立って戸を軽く叩く。戸がゆっくりと開き始めた瞬間、セラの心拍が跳ね上がる。
そして、戸が開ききった時…
「…み、みんな……その…ただいま」
少し気恥ずかしそうに、無事に蘇ったリーヴが顔を覗かせた。久しぶりに浴びる日差しが眩しいのか、少し目を細めている。
「リーヴ…!」
セラはその姿を見た瞬間、反射的にリーヴの方へ駆け出して思いっきり抱きついた。
「わ……セラも、久しぶりだね」
「うっ…うぅ……生きてる…!よかった…また会えて…!」
セラはここ数日間どうにかして抑えてきた感情のダムが決壊し、リーヴに抱きついたまま大粒の涙を流し始める。
「ごめんね…あの廃星で…せっかく差し伸べてくれた君の手を…乱暴に振り払っちゃって…!君を守るって言った側から…守れなくて…ごめんね…!」
堰を切ったように謝り続けるセラを見て、リーヴは困惑する。
「え、えぇ…大丈夫だよ、平気だから、泣かないで…?」
リーヴがふとクオンに目を向けると、クオンも静かに涙を流している。
(わたし…結構大切に思われてたのかな……ふふ、うれしい)
そして、リーヴも未だ泣き続けているセラの頭を優しく撫で始める。
「ごめん……もう絶対…君を死なせないから…ずっと、ずっと一緒に居るよ…!」
「うん…うん。ありがとう、セラ。サンサーラから聞いた、よ。セラは知らない人と話すの苦手なのに、わたしの為にサンサーラにお願いしてくれたんだよね。ありがとう、また…2人に会えてうれしい、よ」
リーヴは、セラが泣き止むまで頭を優しく撫で続けた。そしてセラの涙が収まった頃…
「リーヴさん、体調はいかがですか?何しろ、蘇生を行ったのは久しぶりですので…何か不調があれば遠慮なく言ってください」
「うん、大丈夫。あなたも、ありがとう。セラのお願い、聞いてくれて」
「友人の友人ですから。頼みを聞かない道理はありませんよ。それより…」
サンサーラはリーヴの右半身に目を向ける。
「その…気にならないんですか?セラさん…くっついてますが」
サンサーラの視線の先には、リーヴの右半身にしがみつくセラの姿があった。
「たしかに。セラ、あんまり自分からわたしに触れに来る事なかった、よね」
「…たくない」
「え?」
「離したくない」
「そっか」
「…エタナクス、これは…この方達の日常なんですか?」
「はい。普段は立場が逆ですが」
「…百合」
ボソッと呟いたサンサーラを、クオンはノールックで殴り飛ばした。
「それより、リーヴさん。蘇生が出来たという事は奈落に行かれたと思うのですが…」
「あ、うん。いったよ。いい人に会ったんだぁ」
今のリーヴは寝起きに近い状態の為、普段より少しだけほわほわした喋り方になっている。
「「いい人?」」
竹藪から帰ってきたサンサーラも一緒に、その『いい人』が誰か気になったようだ。
「うん。まず髪型は長い銀髪で…」
(…タナトスですかね?)
「武器はおっきい鎌で…」
(タナトスみたいですね…)
「あ、それで金欠っていってた」
「「タナトスじゃないですか」」
クオンとサンサーラは偶然にも声を揃えて言う。
「その…何か妙な話などはされませんでしたか?」
「えっと…妙な、はなし?」
「まさかタナトスの言っていた『客人』がアナタだったとは…」
「サンサーラ、タナトスと会っていたのですか?」
「ええ、先程」
「「先程!?」」
予想外すぎる言葉に、セラもクオンも驚きを隠せなかった。
「…ねぇリーヴ。あたし…その奈落って場所がどういうところか気になるんだけど…教えてくれない?」
「うん、いいよ」
リーヴは、自身が訪れたあの世で起こった事を話し始めた。
もうちょっと感動的な再会させたかったなぁ
反省




