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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第81話 輪廻の眷属

豆知識

他の死神と居る時のクオンはちょっと饒舌かつ子供っぽくなります

「さて、第2ラウンド開始と行きましょうか」


サンサーラに『神』としての格の片鱗を見せつけられた疼だったが、その眼からは未だ闘志が燃えているのを感じられた。


「…来い。何度だって斬り伏せてやる」

「良い意気ですねぇ。アナタもそこそこ強いようですし…ワタシも少し本気を出してみましょうか」


サンサーラは左手で印を結び、短くこう呟いた。


「おいでなさい、輪廻」


その瞬間、サンサーラの背後の空間が裂かれ、裂け目から黄金の光が溢れ出した。そして、その裂け目から上半身だけを現したのは黄金の武神のような風貌の巨人だった。腕が6本生えており、その腕には太刀や弓、槍や矢などの様々な武器が握られている。


「何だ…それは…」


疼も驚きを隠せないようだ。一方のサンサーラは、ずっと閉じていた目を開いている。瞼の裏から現れたのは美しい黄金の瞳で、今まではただの変態破戒僧でしかなかったサンサーラが、目を開いただけでやけに美青年に見えた。


「彼の名は『輪廻天将』…ワタシの眷属です」

「…フッ、面白いじゃないか…的は大きい程斬り甲斐がある…!」


疼は高揚を抑えきれないといった様子で、サンサーラに斬りかかる。一方、サンサーラは微動だにしないまま、天将に指示を出す。


「まずは『慣らし』からです。やりなさい、輪廻」


サンサーラの命令を受け、天将は雷の迸る太刀を上から勢いよく振り下ろす。


「なっ…!」


疼は天将の攻撃を受けきれない事を悟って横に転がって回避する。反射的に太刀が振り下ろされた位置に目を向けると、そこには『谷』と表現しても良いであろう程の跡が残っていた。


「まだ休憩ではありませんよ。貫きなさい、輪廻」


疼が立ち上がるより先に、天将はとてつもない迫力を放つ槍で地面ごと疼を貫かんとする。


「ぐぅっ…!」


疼は何とか胴体への直撃を免れたものの、左腕はもう使い物にならなくなっていた。


「貴…様…!」


疼は激しい苛立ちを露わにして、残った右腕でサンサーラの喉目掛けて刃を振るう。


「戦闘において…一時の感情に身を任せるのはお勧めしませんよ?」


しかし、サンサーラは涼しい顔のまま疼の額を錫杖で殴りつける。


「かはっ…」

「さ、そろそろ終わらせましょうか。射殺しなさい、輪廻」


サンサーラが手を翳すと、天将は弓を引き絞って矢じりに魔力を集め始める。そして天将が厳かに矢を放つと、その矢は疼に直撃して大爆発を起こす。その衝撃は周辺の大気を揺らし、その爆風は地面を抉り、林立する竹を悉く薙ぎ倒していった。


「やれやれ…少しやり過ぎてしまいました。原型を留めていると良いのですが」


サンサーラは天将を元の空間に帰し、土煙を掻き分けて疼に近づく。


「…やはり、手加減は難しいですね」


天将の矢を直に受けた疼は全身が血に塗れていて、もう虫の息であった。刀は粉々に砕かれ、片足が千切れている。


「…がつ……ま。もうし……い」

「…?今何と…」


サンサーラは問おうとしたが、既に疼は事切れていた。


「…結局この方は何の為にここへ来たのでしょうか」


サンサーラが思案していると、遠くから誰かが走って来た。


「サンサーラさん!何かすごい音が聞こえたんですが…大丈夫ですか?」

「セラさん…ええ、ワタシは平気です」

「サンサーラ…この方は?」

「最近噂になっている人斬りです。何故かここに現れてワタシに襲いかかってきましたが…目的は分からず終いでした」


サンサーラは疼の遺体を簡素ながら埋葬し、リーヴの件の説明をする。


「…!じゃあ、遅くてもあと数日でまた会えるって事ですか…!?」


リーヴの蘇生は順調である事を伝えると、セラは年頃の少女らしくその顔に笑顔を溢れさせた。その後、どことなくウキウキしながら眠りについたセラを見て、夜が更けた頃にサンサーラはクオンに言う。2人は蝋燭を挟んだ対角の位置で、座布団に座っている。


「…セラさんは可愛らしい方ですね」

「手出さないでくださいね」

「出す訳無いでしょうが」

「説得力がありません」


クオンはそう言いながら、サンサーラが部屋の奥の棚に隠していた春画を『スッ…』と取り出した。


「あっそれは…」

「全く…良い歳してこんな物を…」


クオンはペラペラとページを巡りながら呆れたような溜め息を吐いている。


「あなたはどんな顔をしてこれを買ってるんですか?」

「違いますよエタナクス、それは買った物ではありません」


その瞬間、クオンは座ったまま一歩後ろに後退る。


「あ…あなたまさか……これを盗んだんですか…?な…情け無い……犯罪ですよ?」

「んな訳無いでしょうよ。拾ったんですよ、そこの竹藪で」

「尚更情け無いですよ。買ってくださいよ嘆かわしい…」


2人は何だかんだで仲が良かった。

キャラクタープロフィール

【幾千の破滅、幾万の回生】サンサーラ

種族 神

所属 浮月

好きなもの 自殺 酒 春画

嫌いなもの 節制 チーズ

権能 「輪廻」

今回使用した技

震天裂地斬しんてんれっちざん

→発生が遅めな超高火力雷属性攻撃

破海穿空槍はかいせんくうそう

→やはり発生が遅めな超高火力水、風属性攻撃

陰陽生滅弓おんみょうしょうめつきゅう

→超高火力、超広範囲な光、雷属性攻撃。そこそこ離れた浮月の街まで揺れが伝わる程に規模と威力が大きいが、やはり発生は遅い

作者コメント

変態破戒僧です。それしか言葉が見つからない。技名がめっちゃ厳かで、正直言って戦闘スタイルの規模で言えば作中最大クラスかもしれない。ちなみに眷属の輪廻天将の下半身は主君であるサンサーラも見た事がないらしい。

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― 新着の感想 ―
ほお!なるほど! 確かに笑 趣味全開ですね!!笑 つづきどうなるんだろう!? いつかのエピソードであったと思うんですけど、読みにくかったら言ってくださいってあったので、気をつけて言いますね! …
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