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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第78話 仇敵の喉は赤刃の先に、そして戦友は傍らに

今回のタイトル、見覚えある人居るかもしれませんね

「!!!!!!!!!!!!」


突如としてセラとクオンの背後に現れた星喰が、耳を裂くようなけたたましい咆哮を上げると、周囲の地面や大気は揺れ、魔物達が続々と集まってくる。


「流離…どこ行っちゃったの…!」

「方向音痴を自覚してなかったんですか…」


2人が武器を構えると、大量の魔物が波のように押し寄せてくる。幸いと言うべきか、星喰は今のところ静観している。


「クオン!危なかったら言ってね!」

「はい、セラさんもお気をつけて!」


セラは右手の剣を順手持ち、左手の剣を逆手持ちにして、魔物の群勢を斬り倒していく。クオンも大鎌を構え、紫色に輝く魔力と共に敵を一掃する。その時、2人の頭上に黒色の光が見えた。


「…!セラさん、飛んでください!」


その掛け声がセラの耳に届くのと同時に、星喰が黒色の炎を口から吐き出す。周囲の魔物や地面ごとセラ達を焼き尽くさんとするような勢いで、少しでも擦れば大怪我だろう。


「!!!!!!!!!!」


星喰は勢いそのままに、大口を開けてセラに突進してくる。


「わっ…」


何とか捕食されるのは避けられたものの、すぐさま尻尾での追撃が飛んでくる。


「うぐっ…」


セラは巨大な鞭のような尻尾に弾き飛ばされ、少し遠くの岩に打ち付けられた。


「セラさん!」

「クオンっ……危ない…!」

「うっ…!」


星喰の勢いは止まらず、クオンを丸呑みにしようと突撃してくる。クオンは何とか食い止めたものの、星喰はまだクオンを喰らう事を諦めていないようだ。


「セラさん!伏せてください!」


クオンは左手に暗い紫色の魔力を集めて、星喰の顔の正面で大爆発させた。しかし手応えは薄く、クオンは警戒を解かない。攻撃を当てた時の感触から推察するに、星喰も淵族の一種なのだろう。


「…!!!!!!」


星喰はクオンに興味を失ったのか、標的をセラに変更し、その太く巨大な尻尾でセラの身体を締め上げる。


「あっ…ぐ…ぅっ…!苦し…!」

「セラさん…!」


クオンはセラを助けようとしたが、魔物の大群に阻まれてセラの下に向かう事が出来ない。


「…致し方ありません」


クオンが本気の形態に移行しようとしたその時だった。どこからか、聞き覚えのある声で和歌のような物を詠んでいる声が聞こえてきた。


「赤月夜 水面に揺れるは 赫き意思 其の名は叛意 我が名は逆徒」


その瞬間、幾つもの赤黒い斬撃が飛んできて、星喰の尻尾を集中的に斬りつけた。それのお陰で、セラは何とか解放された。


「はぁっ…はぁ…けほっ」


セラは銀色の髪を少し乱しながら肩で息をしている。


「あ…ありがとう……やっと来たんだ」

「遅いですよ…流離さん」

「すまない、道に迷ってしまった」


流離は2人の前に出て、刀を抜く。それは刀身が血のように鮮やかな赤色の赫刀だった。


「よく死なずに居てくれた。後は任せろ」


セラもクオンも、この時の流離には今までのどの瞬間よりも強い頼もしさを覚えていた。


「不思議だね…出会ったばっかりなのに、『流離なら1人で大丈夫だ』って思えてくる」

「私達も限界でしたし…ここはお言葉に甘えましょう」


流離の姿を見た星喰は、より一層大きな咆哮を上げる。


「!!!!!!!!!!!!!!!」

「畜生の分際で俺を宿敵と見做すか……いいだろう、かかって来い。周りの雑魚共々だ」


その瞬間、流離は高く飛び上がり、抜いた刀を横に振りかぶる。


終式三型(しゅうしきさんけい) 三界破壊」


流離が水平の姿勢で刀を振り抜くと、交差した3本の赤黒い斬撃が3つずつ周囲に落とされた。その威力は凄まじく、残っていた有象無象の魔物達を一気に壊滅させるほどだった。


「しまった…技名は叫ばない方が戦いやすいと学んだというのに…悪癖は治らないものだな」


そう言うと、流離は流れ出た魔物達の血液を左手で回収し始めた。これが彼の能力なのだろうか。


()()()()()…これは俺の…()()()()能力だ」

「…!!!!!」


星喰は流離の実力を目の当たりにし、警戒を更に強めている。一方で流離は、たった1回の深呼吸の後、刃先を静かに星喰に向けて静止している。


「!!!!!!!!」


星喰が咆哮と共に突撃してきたその時、流離が突撃にタイミングを合わせて刀を振り抜く。


「痛みを…返そう!」


高められた流離の集中力によって、その斬撃は星喰の左目を潰す事に成功した。星喰が痛みに悶えて雄叫びを上げている間にも、流離は次の攻撃の準備をしている。


「…終わりか。もう少しくらい楽しめると思ったんだがな」


流離は刀を構えると一瞬姿を消し、再び姿を現して刀をゆっくりと鞘にしまう。その瞬間、星喰の身体にあり得ない量の赤黒い斬撃が走り、星喰の身体は文字通りの微塵切りにされた。崩壊していく星喰の身体を見ながら、流離は小さく呟く。


「…もう1つの力は使うまでも無かったか」


そしてその様子を見ていたセラは、ただただ流離に感心していた。セラは自身が戦士である意識などないが、今だけは1人の『戦う者』として、純粋に流離の圧倒的な実力を尊敬していた。


(…あたしにもあれだけの実力があったら。リーヴを守れたのかな。君に痛くて辛い思いを…させなくて済んだのかな)


そんな事を考えていると、セラはまた悲しさが込み上げてくるのだった。

キャラクタープロフィール

【其の生は徒花か】流離るり

種族 人間

所属 なし

好きなもの 団子 花 和歌 ゆで卵(固茹で)

嫌いなもの ゆで卵(半熟)ネズミ

異能 ①血を操る能力

   ②不明

今回使用した技(一部省略)

・三界破壊

→まあまあな範囲にクソ高火力な攻撃を高速発生で与える。めっちゃ使い勝手よくて流離のお気に入り

疼痛反とうつうがえし

→ただのカウンター

塵滅刃じんめつじん

→流離の大技①。広範囲高火力超多段ヒットという、食らう側からしたら紛う事無きクソ技。

作者コメント

割と天然なお団子布教お兄さん。元々はとある組織に属しており、その時の同僚とゆで卵の半熟が美味いか固茹でが美味いかで喧嘩を起こし、最終的にお互いを半殺しにしている。ちなみにネズミが嫌いなのは、とある過去を思い出してしまうかららしい。

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