第7話 いい人なの?
豆知識
この世界の星には名前がある星と無い星があります
ある場合は作中で言うのでご安心ください
「…って、ことがあったの」
リーヴがゆっくりと先程あった出来事を説明して、それを理解したセラは流れるようにパラノイアの方を向いて頭を下げる。
「ご…ごめん…いや、すみません…ありがとう、リーヴを守ってくれて」
「気にするな。…まだ後頭部がヒリヒリするが」
パラノイアは腕を組み、胡座をかきながらセラと向き合っている。
「それで、どうしてわたしを守ってくれたの?」
「…俺はお前達が思っているような『怪物』じゃない。襲われたから自分の身を守っているだけだ」
「どういう、こと?」
「言葉の通りだ。そもそもアイツらの本命の目的は…俺を殺す事じゃない。その目的を達成するのに、俺が邪魔というだけだ」
「あの人達の目的って?」
「…かつてここに居た学者の1人、『フェイズ』の痕跡を抹消する事だ。そいつはさっきリーヴが読んでいた手記の持ち主でもある」
「何で…フェイズの痕跡を消そうとしてるの?」
「さぁな。大体…お前達が先程まで行動を共にしていた奴らは俺の討伐隊などではなく、ここに所属していた研究員達だ。その手記にも書いてあったように…学会のイメージを守る為なんだろう」
手記の内容を知らないセラは頭に『?』が浮かんでいたが、それでも大体の状況は理解出来た為、表には出さなかった。
「ふぅん……じゃあ、パラノイアの目的は?」
「…フェイズの行方を知る事だ。俺とフェイズは…知らない仲ではないからな」
「というか…パラノイアって何者なの?」
「俺の素性か…まぁ隠す事ではないが…少し複雑でな。またいつの日か話す事にしよう」
そしてパラノイアは立ち上がり、リーヴ達を見据えて問いかける。
「で、お前達はこれからどうするつもりだ」
「…どうする?リーヴ」
「手伝うよ、助けてもらったし。それに、わたしの能力もまだ使えない」
「能力?」
「わたしは星の間を移動する能力を持ってるの。それを使って、セラと2人で旅をしてるんだ」
「なるほど…感謝する」
パラノイアは軽く頭を下げると、再び口を開く。
「そうと決まれば、フェイズの手記を探そう。ここで探せる手掛かりはそれくらいだ。この部屋にも恐らくあるし、もっと奥の方の部屋にもある筈だ」
「じゃあ、この部屋から、だね」
3人は整理されていない机を漁って、フェイズの手記を探していく。その途中で、リーヴはこんな疑問を呟く。
「ねぇ、パラノイア」
「何だ」
「聖賢学会って、なに?」
「…異能を持たない者達で構成された学会だ」
パラノイアはあまり聖賢学会について話したくなさそうだった。
「あ、これかも」
5分ほど経った時、リーヴが最初の物とは別の古ぼけた手帳を見つけた。ちなみに最初に見つけた手記の
続きも見てみたが、特に有用な情報は無かった。
「めくるぞ」
パラノイアが適当なページを開く。
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No.112
今日、遂に実験の協力者が送られて来る。…いや、聞こえの良い言い方は辞めよう。被験体だ。勿論同意は取っているらしいが…信用は出来ない。
最近の聖賢学会はどうも様子がおかしい。例の『悲願』を達成する事に躍起になり過ぎている。最初は実験用のマウスなどを被験体とする筈だったのに、いきなり人間を送って来るだなんて。
まぁ良い。そろそろ到着する頃だ。
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「つまり…ここでは何かの人体実験が行われてたって事?」
「そうらしいな」
「じんたいじっけん…って、なに?」
「人の身体を使って実験する事だ…手記の書き方からして、少なくとも良い内容では無いんだろうな」
パラノイアはそう呟きながら、また別のページを開く。
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No.113
どういう事だ
昨日送られてきた被験体の中に
私の親友の名前がある
彼も他の学会員と同様、異能を持ってはいないが…
彼は人体実験を何よりも嫌っていた
己が被験体となる事など以ての外だろうに
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その手記自体のページはまだ残っていたが、あとのページは全て白紙だった。
「これで…おわり?」
「いや…恐らく違う。この先は区切りをつける為に、別の手帳に書き始めたのだろう。見たところ、ここから実験が始まるらしいからな」
「なら、次はそれを探すんだね」
「そうだ…が、多分それはここには無い。ここより奥の方…実験室にあるだろう」
「部屋の外…たぶん、わたしとセラはもう敵だと思われてるよね」
「ああ、巡回してる奴らに気をつけて進もう」
こうして、3人は実験室を目指して部屋を出た。
手記のNo.は適当です