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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第59話 なさけは人の…なんだっけ

豆知識

クオンはサラシを巻いています

セラを救出してからしばらく経ったある日。星間旅団は比較的発展した星を訪れていた。だが、どんなに発展していようと魔物は居る。たまたま街の外を出歩いていたリーヴ達は、誰かの悲鳴を聞きつけたのでそこに駆けつけると、1人の女性が魔物に襲われていた。特に苦戦もせずにその女性を助けると、女性は腰を直角に折り曲げて礼を言った。


「本当にありがとうございます…!街の外の景色に興味があって、つい外に出てしまったんです…」

「無事ならそれで良いですよ。今度からは気をつけてくださいね」


セラが落ち着いた様子で告げると、その女性は何かを思い出したかのようにポケットを漁り始めた。


「あ、そうだ…お礼と言っては何ですが、これをどうぞ」


リーヴ達は、3枚のチケットのような物を受け取った。


「これは…?」

「少し前にくじ引きで当てた、近くの高級ホテルの無料招待券です。丁度人数分ありますし、よければ使ってください」

「いいの?」

「はい。命を助けてもらったんですから、これくらい当然です」


その後、女性は改めて礼を言い、街の中へと帰っていった。

3人はそのチケットを見つめながら、これからの行動について話し合う。


「ど…どうする?皆」

「せっかく頂きましたし…使わないのも勿体ないかと」

「ふふ。なさけは人の……なんだっけ」

「『為ならず』ですよ、リーヴさん」

「確かにクオンの言う通りだね…使わないのも失礼かな」

「じゃあ…このホテル、目指そっか」


3人はチケットの裏に書いてある場所を目指して街中を歩き回る。20分ほど経った時、3人の目の前に大きな建物が現れた。


「これかな?」

「だと思う…大きいね」

「ひとまず入りましょう、皆さん」


チケットを見せると、受付の人は丁寧かつ手早く部屋に案内してくれた。


「おお…なんか、いい匂いがする」

「和室ですか…風情があって良いですね」

「2人とも、海が見えるよ!」


揃いも揃ってテンションが上がっているようだ。クオンも自分の家以外の場所に泊まった事などほとんど無いので、こういった場所に来ると少し気分が高揚する。


「まだお昼だし…この辺りの街を散歩する?」

「良いね。本で読んだ事あるから、あたしが都会での楽しみ方を教えてあげるよ!」


その時、クオンの中に閃光が走る。


(そういえば…この2人は恋仲なのですよね。良い機会ですし、今日は2人で楽しんできてもらいましょうか)


恋仲じゃないが。


「お2人とも。申し訳ありませんが…私は少し別でやりたい事があるので、今日は別行動でもよろしいですか?」


その申し出にリーヴとセラは一瞬驚くが、断る理由も無いので快く承諾する。


「うん。わかった」

「クオンも楽しんでね。あ、お風呂は絶対一緒に入ろう!」


セラは心なしかいつもより元気である。


「じゃあ、いこっか」


リーヴがセラに呼びかけた時、不意にクオンがセラを呼び止める。


「あ、セラさん。少し待ってください」

「どうしたの?」

「せっかくお出かけするんですし…少しおしゃれしませんか?」

「良いと思うけど…あたし、服買うお金なんて持ってないよ?」

「であれば、髪型を変えてみましょうか。私にお任せください。ずっとヘーメラーの髪を結ってきたので、多少は出来るんですよ」

「なるほど……じゃあお願いしようかな。リーヴ、ちょっと待っててね」

「うん。先に、外にでてるね。入り口の前で待ってるよ」


こうして、旅団恒例の小休止が始まった。

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