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大宙の彷徨者  作者: Isel


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第58話 またあおう、ね

豆知識

クオンは自分の権能によって痛覚をほとんど無くしてます

死んだ時に声を上げてるのはびっくりしてるだけです

翌日、フォルティの家にて。少し遅めに起きたフォルティの前に珍妙な光景が広がっていた。


「…これ何だ?」

「あ…フォルティさん、おはようございます」

「ああおはよう…じゃなくて、この2人何してんだ?」


フォルティが指差した先では、リーヴがセラの身体にしがみついたまま眠っていた。


「いつもこうなんです。ふふ…微笑ましいですよね」

「……なるほど、久しぶりに会えて嬉しかったのか」


フォルティはちゃっかり能力を使ってリーヴの心情を読み取る。


「1日しか離れていないのに…大分長い事離れていた気がしますものね」

「それだけ大事な奴だって事だ」

「ふふ…そうですね」


そんな時、リーヴが目を擦りながら身体を起こす。


「ん……おはよ。クオン、フォルティ」

「おはようございます」

「アンタら、今日出発するんだろ?さっさと顔洗って来いよ」

「もう9時ですよ。2人とも」

「はぁい。セラ、いこ」

「うん…おはよう」


まだ2人とも眠そうだ。当然だろう、2人がこの星で過ごした1,2日は、人生で1番色んな事があった日なのだから。

2人が仲良く顔を洗ってきた後の事。意外にもフォルティは料理が出来た為、セラは目を丸くしながら食べていた。その様子を見て、フォルティは感慨深そうに呟く。


「…俺に子供なんて居ねぇし作るつもりも無ぇけどよ、親ってのは…きっとこんなような気持ちだったのかもな」

「フォルティ、親がいるの?」

「当たり前だろ俺を何だと思ってんだ。…まぁ、俺の親()軍人だったからな、もう何年も前に戦死してるけどよ」

「『も』って事は……フォルティさんも軍人だったの?」

「ああ。だが正直…俺は戦争が嫌いだ。生きる為なら何をするのも仕方ないとは思うが……その理論を悪行の正当化に使うのは腑に落ちねぇ。俺の故郷に居たのはそういう奴らだった、だから俺はこの星に来たんだ」


咀嚼しながら頷くリーヴ達に向かって、フォルティは諭すように言う。


「1つ言っとくぞ。アンタらは……自分の意思で、自分の為に戦えよ。間違っても昔の俺みてぇに…国だの星だの、どうでもいい奴らの為に力を振るうな。善意や献身ってのは…誰かに利用されるのがオチだからな」

「…うん、わかった、よ」


そしてまた、リーヴは『もぐもぐ』と朝食を食べる。その横で、セラは考え事をしていた。


(あたしのこの力は……何の為にあるんだろう。リーヴとクオンを守る為…?いや、それはあたしのしたい事だし…)


セラの葛藤を見抜いたフォルティは、腕を組みながらセラに告げる。


「…そんな難しい事、今考えたって仕方ねぇだろ」

「えっ…?あ、そっか…フォルティさん、心が読めるんだ」

「アンタ、記憶が無いそうじゃねぇか。旅を続けるうちに…いつかその記憶が戻るかもしれねぇ。そん時に分かったりするんじゃねぇのか?」


微妙に本意が伝わりにくい言い回しをするフォルティ。そんなフォルティを見て、リーヴが通訳をする。


「セラ、つまりフォルティは『考えすぎるな』っていってる」

「…まぁ、大体そうだ。8文字に省略されたのは解せねぇが」

「あはは……ありがと」


その後も何やかんやでまったりして、ぼちぼち出発の時間となった。


「じゃあ、わたし達そろそろ行くよ」

「本当に、ありがとうございました。私達の無理な頼みを聞いて下さって」

「あ、ありがとうございます…!」

「礼なんか要らねぇっての……あ、ただ…」


フォルティは思い出したかのように付け加える。


「いつか…アンタらの力を借りるかもしれねぇ。そん時はよろしく頼むぜ」

「うん。まかせて」

「さようなら!」

「フォルティさん、お元気で」


3人が虹色の渦の中に消えていったのを見届けた後、フォルティは下層街の天井を見上げて呟く。


「なぁディスガー。俺は…俺達は何を間違えた?俺はあの時…どうするのが正解だった?」


その過去を振り返るような呟きは、誰にも聞こえる事は無かった。

フォルティの過去はまだ不明瞭ですが、いずれやるので気長にお待ちください

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