第5話 遭遇
豆知識
セラは喘息だったのであんまり運動してなかったんですが、元の戦闘センスや運動神経はかなり良いです
『増援』としてリーヴとセラが研究所の内部に入ると、そこは2人の想像よりも人が沢山いた。
「みんな、なにしてるの?」
「あー…この研究所にはな、怪物が出るんだ。それの討伐の為に俺達が居る」
「へぇ…」
「ちょっと待ってろ」
案内していた男は仲間らしき人に声をかけ、何やら武器のようなものを持ってくる。
「これで武装してくれ」
男が地面に置いたのは、2人分の重厚そうな防護服と突撃銃だった。
「あ、あたしは大丈夫だよ。武器持ってるから」
そう言いながら、セラは双剣を構えてみせる。
「そうか。じゃあそっちの灰髪の方、早く着てくれ」
「うん」
リーヴはセラの手を借りながら、慣れない手つきで防護服を着用していく。
「…よし、着れたね。手離すよ」
セラが手を離した瞬間、リーヴは前向きに倒れ込んだ。そしてそのまま微動だにしない。
「だ…大丈夫?」
「…れない」
「え?」
「重くて…起き上がれない」
結局、リーヴも防護服を着けない事になった。なんなら突撃銃も重くて持てなかった。リーヴは若干落ち込んでいるように見える。
「わたし…弱いね」
「…まぁ、平気だよ。リーヴの事はあたしが守るから」
「…ありがとう」
その時、周囲に討伐隊の誰かの叫び声が響き渡った。
「来たぞ!怪物だ!」
その怒号とも取れるほど大きな声に、リーヴとセラは反射的に身構える。暗くてよく見えない前方の通路の奥から、黒色の人のような『怪物』が姿を現す。ボロボロで裾の長い衣服に身を包んでおり、左の袖が右袖よりも大きく、左腕が見えない。
「今日こそは…!死ね!」
討伐隊の1人が、怪物に向かって銃を乱射する…が
「無駄だ」
怪物は全ての銃弾を隠された左腕で払いのけ、その隊員の顔面を掴んで地面に叩きつけた。
「撃て!撃ち続けろ!」
銃弾の嵐を受けて、怪物の左腕が顕になる。それは、およそ人間とは思えない凶悪そうな爪が生えた異形だった。
「…」
怪物は無言のまま、左肩から先端に刃の付いた触手を伸ばして周囲の隊員を一掃する。
「怪物…しゃべるんだ」
「リーヴは隠れてて、危ないから」
セラは、背後に金色の光を放つ光輪を出現させて、怪物に向かっていく。
「…まだ居るのか」
セラが右手の剣を振り下ろすが、怪物は難なくそれを受け止める。
「硬い…!」
セラは一旦距離を取り、自分の正面に光を収束させる。対する怪物は、本能的に危険を察知して飛び退
く。
「消えて!」
セラの正面の直線上に巨大な光線が放たれ、通路の壁や床を削っていく。
「あの少女に続け!」
他の隊員達も一斉に攻撃を始めるが、怪物は多少なり賢いようだった。
「…これならどうだ?」
怪物は触手を隊員の1人に伸ばし、その隊員を盾にする。
「クソ…これでは銃撃が出来ない…!」
「あたしがやります!」
セラが光を纏って怪物に突撃するが、怪物も学習するようだ。
「お前の光線は確かに脅威だが…狭い場所で撃てば崩落の危険性があるだろう?」
怪物は盾にした隊員を投げ捨て、通路のドアの中に入っていく。そのドアの先は、先程よりも狭い通路だった。怪物は触手を伸ばしてセラに攻撃してくる。
「ふっ!」
セラは落ち着いて触手を切断するが、怪物には再生能力もあるらしく、触手の数は減らない。
(…あんまりやりたくなかったけど…仕方ないよね)
セラは心の中でそう呟いてから、光を纏って天井を突き破る。
「…?」
流石の怪物も少し困惑している。だが、すぐにその困惑は消え去る事となる。
「これで…終わり!」
その声が響くとほぼ同時に、連結させた双剣の刃先を怪物に向けて、セラが急降下して来た。それで発生した土煙に乗じて、セラは更に無数の斬撃を浴びせる…が、手応えは無い。
「思わぬ伏兵が居たものだ…今日のところは退くとするか」
土煙が晴れた頃にはもう怪物の姿は無く、代わりにセラが開けた天井の穴から夜空が見えていた。
「…戻ろう」
セラが乱れた髪を直しながら、入り口の方に戻って来る。
「おお!あの怪物相手に1人で戦って生還するなんてな!中々の強者だな?」
「あはは…それほどでも」
照れ笑いするセラだったが、ここでとある違和感に気がつく。
「……リーヴ…?」
そう。リーヴの姿がどこにも見当たらないのだ。入り口付近の隠れられそうな物陰や、掃除用具入れ、段ボールの中まで探してみてもリーヴの姿は無い。
(…怪物は『今日はもう退く』って言ってた)
もし怪物の今後の行動がその言葉の通りなら、ひとまず今日はもう仕事が無いという事だ。
「…探しに行かなきゃ」
セラは再び双剣を握りしめ、リーヴを探しに研究所を歩き回り始めた。
キャラクタープロフィール
【無を照らす極光】 セラ
種族 人間
所属 星間旅団
好きなもの リーヴ 甘いもの 外出
嫌いなもの 虫 血
異能 光を操る能力
作者コメント
リーヴの相方。リーヴにも言える事だが、こいつの「好き」がlikeなのかloveなのかは定かではない。でもこいつもリーヴが大好き。いつかガッツリ表に出してほしい。ちなみにヘイロー持ちという事はコイツもある程度の強者である。イメージした言葉は「極光」「思慕」