第4話 やばい、ね
豆知識
なんとなく世間知らずっぽいリーヴですが、世間一般の常識くらいは知ってます
砂漠の星からリーヴの能力を使い、新たな星へとやって来たリーヴとセラ。虹色の光を放つ穴の先に広がっていたのは、廃墟街のようなものだった。少し遠くに大きめの建造物が見えていて、その更に遠くにはうっすらと明るい街並みが見えている。
「リーヴの能力で移動する時ってこんな感覚なんだね」
「うん。たのしい、よ」
その時、セラはとある疑問が湧いてくる。
「そういえば…リーヴって何の為に旅をしてるの?」
旅の目的。それは、リーヴにとっては今まで一度も考えた事のないものだった。
「なんのため……うーん…わからない」
リーヴは少し表情を暗くして呟く。
「そっか…でも、それはそれで良いんじゃないかな?」
「いいの?」
「目的が無いなら、『目的を見つける為』に旅をするっていうのも…ありじゃない?」
「…それ、いいね」
リーヴは静かに右手の親指を立てており、表情は真顔のまま大して変わっていないが、その両目は少し輝
いている。
(かわいい…)
セラが心の中で呟いている時、リーヴが突然何かに気づいたような声を上げた。
「…あ」
「どうしたの?」
「セラ…重大なことに気がついた」
「何に?」
「わたし達…お金持ってない」
セラの中に稲妻が走った。
「確かに…!忘れてた…」
「ふふ…やばい、ね」
リーヴは全く動じていないかのような微笑みを浮かべて、セラに声をかける。
「…セラ、ちょっと待ってて」
リーヴは少し離れた場所へ走っていったかと思えば、程なくして両手に何かを抱えて帰って来た。セラが目を凝らすと、沢山の小枝を持っているようだ。
「それは…?」
「ふっふっふ…お家作ろう、これで」
「これで…?」
「これで」
セラは苦笑いである。
「うーん……ちょっ…と足りないかな…?」
「分かった、もっと取ってくる」
「ああ…それよりもさ、あの大きい建物の方に行ってみない?人が居るかもしれないし…」
「そうだね、行ってみようか」
セラは何とか重労働を回避する事に成功した。10分ほど歩いた頃、2人はその建物の正面までやって来た。
「…やっぱり人が居るみたい」
「とりあえず、入ってみる?」
「そうしよっか」
リーヴに同意しつつも、セラは双剣を取り出して周囲を警戒する。一見は何かの研究所のようだが…少し遠くに人が住んでいる街があるという事は、もうここら一帯は使われていないという事。そんな場所にある研究所に人の気配がするなら…誰だって多少なり警戒するだろう。
「誰だ!」
研究所のドアに手をかけた2人の背後から、銃などで武装している1人の男が声をかけた。
「わっ」
「…」
セラは無言で男を警戒している。
「もしや…今朝の報告にあった増援の者か?」
その男から放たれた言葉は、2人の予想を大きく裏切るものだった。増援、という言葉と男の格好から考察するに、この研究所では何かとの戦闘が起こっているのだろうか。
「ぞ…増援?えっと、あたし達は…」
「そう、増援の人だよ」
セラの台詞を遮って、リーヴが男にそう伝える。
「やっぱりそうか…!先に少人数の増援を送って、後から大人数を追加するとの報告だったからな…」
予想外の展開に焦るセラが、小さな声でリーヴに耳打ちする。
「ちょ…ちょっとリーヴ…!あたし達、増援の人なんかじゃ…!」
「わたしの能力は、続けて使えない。最低でも1日は間を空けないといけないの。ここでこの人達に協力しておけば、ひとまず今日の寝るところは困らないでしょ?」
リーヴにはそんな考えがあったらしかった。
「ああ…確かに……じゃあ、危ない事があったら…あたしがリーヴを守るからね」
「ふふ、たのもしいね」
その時、セラはある事を思いついた。
「そうだ…これからの旅であたし達が名乗る時…せっかくだから、何か組織名みたいなの欲しくないかな?」
「わたしは特に……セラ、ほしいの?」
その質問に対して、セラは若干赤面しながら答える。
「………うん」
図星だったようだ。
「ふふ…かわいい」
「ぁ…ありが…とう」
「セラがほしいなら、付けていいよ。名前」
「うーん……安直だけど、『星間旅団』とかはどう?」
「いいね。今度から、そう名乗ろう」
2人がほんわりと話し合っている時、先程の男が2人に呼びかける。
「どうかしたか?」
「ううん。今いくよ」
リーヴとセラは、研究所の中へ入っていった。
キャラクタープロフィール
【なにもないもの】リーヴ(彷徨者)
種族 人間…?
所属 星間旅団
好きなもの セラ 美味しいもの
嫌いなもの 特になし
異能 星々の間を渡る力
作者コメント
本作の主人公。誰も触れてないが宇宙空間で普通に息できてるので人間とは言い難い。セラが大好き。本作は前作と比べて常識人が多いので、リーヴには奇人になってもらうかもしれない。あと顔と声が良い。イメージした言葉は「無」「希望」「彷徨」