表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宙の彷徨者  作者: Isel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/197

第33話 もぐる、よ

更衣室にて、セラとリーヴは海に潜る為のウェットスーツに着替えていた。一足先に着替えを終えたセラが更衣室から出ると、先程声をかけてきた女性が2人分のタンクのような物を持って立っていた。


「お、終わったかい。素潜りだと大変だからこれを使いな。酸素が入ってるタンクだよ」

「あ、ありがとうございます」


セラはタンクをしっかりと背負い、その他の細かい潜水の準備をしながらリーヴを待つ。


「セラ、おまたせ」


しばらくして、リーヴも着替えを終えて出て来る。


「あ、リー……ヴ?」


出て来たリーヴの姿を見て、セラは戸惑う。何故なら、その時のリーヴはセラと同じようなウェットスーツとゴーグルを付けてはいたのだが、その他にも浮き輪、足ヒレ、シュノーケルなどと、目的の分からない混沌とした服装をしていたからだ。


「何…何?どうしたの、その…浮きたいのか沈みたいのか分からない格好は」

「あるものぜんぶ付けてみた、よ」

「浮き輪は要らないんじゃないかなぁ」


リーヴは一旦更衣室に戻って着替え、セラと同じような格好になった。


「ふぅ…改めて、おまたせ……あ」


その瞬間、リーヴは気づいてしまった。今の2人は、どちらも普段より身体のラインが出る服装をしている。そして反射的にセラの胸元を見てしまったリーヴは、自身の胸部を数秒ほど見つめた後に悔しそうに呟く。


「……まけた…」

「…急にどうしたの?」

「セラに…まけた…」

「何が?」

「セラの方が…おっきい…」

「え?身長ならリーヴの方が大きいよ?」

「うぐぅぅぅぅぅ…!」


その無意識の言葉がリーヴに地味な追い打ちをかけたようだ。何はともあれ、2人はいよいよ海に潜る事となった。


「そういえば、わたし泳いだことない。セラは、泳げる?」

「あたしの星には水があんまり無かったから…水遊びくらいならした事あるんだけど」

「大丈夫だよ、2人とも。危なくなったら他の奴らが助けてくれるさ。それと…魚を取る時はこれを使いな」


桟橋の上で2人に手渡されたのは、長い銛だった。重さも丁度よく、ギリギリではあるがリーヴでも持てる程度だった。


「じゃ…そろそろ行っておいで。あんまり気を張らずに、観光の一部だと思ってね!」


そして、2人は遂に海へと飛び込んだ。セラの育った星には一応オアシスがあった為、水に潜った経験自体はある。だがリーヴにとっては正真正銘、初めて自然界の水に触れた瞬間だった。


「おお…これ、おもしろい。水のなかでも、息ができる」


リーヴはセラにそう伝えたつもりだったが、生憎水中なので声が届かない。


(想像してたより静か…なんか、静寂(しじま)の領域を思い出すなぁ)


それ聞いたら静寂はギリキレそうだが。


(あ、お魚いた。でも…水の中だと多分声聞こえないよね)

「んっ」


リーヴは口を閉じたままくぐもった声を出し、斜め下の方を指差す。


(食べられそうな魚だ…取るの?)

(うん。沢山とって帰ろう)


これだけ見るとテレパシーで会話してるようにしか見えないが、一応ジェスチャーで会話をしている。

比較的大きめの青魚に後ろから近づき、リーヴが銛を力強く突き出す。


(やった、取れた)


リーヴは見事に魚を仕留めた。


(ふふん。わたしの、はじめての勝利)


それでいいのか。


(あ、あたしも取れた)

(よし。まだまだいっぱい取ろう)


それから、2人は沢山の魚を取った。生態系に影響を及ぼさない範囲で。


(そろそろ上がろうか)

(うん。いっぱい捕まえたし、ね)


2人が桟橋に上がると、リーヴ達に服を貸してくれた女性が立っていた。


「おかえり。見たところ…大漁だね。よかったよかった。今日居ない奴らの分を抜いても、あんた達の食事には十分足りるよ」

「がんばったから、ね」

「お疲れ様、リーヴ」

「セラもね」


その夜、女性は2人に夕食を作ってくれた。焼き魚や煮魚、刺身などの沢山の魚料理が振る舞われた。


「おいしい…!この冷たいお魚、すき…!」


リーヴは刺身が特に気に入ったようだ。


「魚っておいしいよね…!あたしも大好きだよ」

「気に入ってくれたようで何よりだ。いっぱい食べておくれ!」


2人は心ゆくまで魚料理を堪能し、やがて夜になった。なんとこの女性、服を貸してくれた上に食事を作ってくれた挙句、寝る場所まで用意してくれるらしい。2人は寝る前に、布団に入って小さな声で話している。


「やさしい人に出会えてよかった、ね」

「うん。これから出会う人も皆…こんな人ばっかりだったらいいな」


2人はこれからの旅路の安泰を願って、眠りについた。

おまけ『追い打ち』

2人が潜り漁を行った翌日…


「え?昨日言ってた『負けた』って…胸の大きさの話だったの?」

「うん。セラにはかてない。一生かかっても」

「そ…そんな事ないよ。ほら、リーヴも…膨らみが視認出来るくらいにはあるから、元気出して…?」

「うぐぁぁぁぁぁぁ…」


セラはやはり無意識に追い打ちをかけてしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ