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大宙の彷徨者  作者: Isel
第1章 旅立ちと歪んだ『記憶』

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第30話 命と死が相容れぬように

本文でもそれらしい事は言ってますが、静寂は女です

(どうしよう……そろそろ……疲れが…)

(僕もセラも……体力は無限じゃない。いつかは限界が来る……こんな神経削る奴が相手なら尚更だ…!)


 エルミスがそんな事を考えている時、不意に誰かがエルミスの肩を叩いた。


(……リーヴ?)


 振り向くと、リーヴが出発前に渡した紙を持ってエルミスの背後に立っていた。リーヴはまるで『見て』とでも言うかのように、手に持った紙を指差す。そこにはこんな事が書いてあった。


(爆弾が欲しいって……何するつもりさ)


 そう思いはしたものの、あまり考え事をしている余裕も無いので、エルミスは手早くポーチから取り出した手榴弾をリーヴに渡した。


「よし……これがあれば……!」


 一旦領域の外に出たリーヴは、密かにガッツポーズをする。リーヴには妙案があったのだ。


(さっき領域に入ったときも、わたしは攻撃されなかった……やっぱり静寂(しじま)の目には、わたしは戦力として映ってないんだ)


 それは、先程のリーヴ自身の嘆きから思いついた案であった。


(わたしが戦力として映ってないなら、わたしは警戒されてないってこと……つまり、いまこの場でいちばん自由に動けるのはわたし……!)


 そう決心したリーヴは、自分の精一杯の速度で走り出した。周りが静かなので当然足音は鳴っているが、敵も味方も全員領域内に居るのでその足音に気づける者は居ない。


(ふぅ……ここからなら、静寂の飛剣がよくねらえる)


 もうお分かりだろう。リーヴの作戦というのは、エルミスからもらった手榴弾で、セラ達が壊しきれずにいた最後の飛剣を破壊する、というものだった。いくらリーヴでも、セラ達が突然飛剣を狙い始めたのを目の当たりにすれば、それに何かしらの意味があるという事くらい察せるのだ。


(あとは……えっと、ピン抜いて……)


リーヴは手榴弾のレバーを握りしめたまま大きく振りかぶる。


「いっ……けぇぇぇぇ……!」


 本人の諸々の都合上あまり大きな声は出なかったが、それでも手榴弾は頼りなくも静寂の飛剣へ飛んでいく。そして手榴弾はこれ以上無いほどの良いタイミングで爆発し、静寂が守っていた最後の飛剣を破壊した。


「な……んだと……!」


 それと同時に、周囲にガラスが割れるような音が鳴り響き、セラやエルミスを覆っていた静寂の領域が消え去った。


「……! 領域が…!」

「リーヴ……! やるじゃないか!」


 エルミスの視線を辿って、静寂は誰の仕業なのかをる。


「そうか……お前が……!」


 静寂は錫杖から魔力弾を放とうとするが、瞬時にセラがリーヴを物陰に運ぶ。


「今のは……リーヴがやったの?」

「うん。わたしも……ちょっとくらいは、力になれた、かな」

「……ちょっとじゃないよ、すっごい助かった。ありがと、リーヴ。後はあたし達に任せて」


 セラは軽くリーヴを抱きしめて、すぐに戦線へ戻った。


「ここまで来たなら認めよう……お前達は強い。私には劣るがな!」


 セラが前線に戻ると同時に、初めて大きな声を出した静寂が再び5本の飛剣を出現させる。そしてそれらを1箇所に集め、巨大な1本の剣に作り替えた。


「終わりだ!」


 静寂は間髪入れずにその巨剣をセラ達目掛けて振り下ろす。


「エルミス!突っ込んで!」

「分かった!」


 エルミスは決着が近い事を察知して、静寂の元へ一直線に突撃する。


「まさか1人でこれを受け止めるつもりか?全く愚かしい……!」

「その……まさかだよ!」


 セラは先程までよりも更に強い光を纏い、右手の剣を逆手持ちに、左手の剣は順手持ちのままにして、巨剣に向かっていく。


「はぁぁぁっ!!」


 そして、セラは渾身の斬撃を放って静寂の巨剣を粉々に打ち砕いた。


「エルミス!」


 その直後、セラはエルミスの方を向いたかと思えば、エルミスに向かって片方の剣を投げ飛ばした。


「危なァァァァァァァッ!!」


 とか言いつつも、エルミスはしっかりセラの剣を掴み取る。

 

(近い……! 飛剣が……間に合わない……!)


 焦る静寂を前にして、勝利を確信したエルミスはニヤリと笑いながら叫ぶ。


「僕達の……勝ちだ!」


 そしてエルミスは、静寂の身体を思いっきり袈裟斬りにした。静寂は力無く錫杖を取り落とし、地面に膝をついた。


「見事……だ……人間達よ。私の……負けだ」


 潔く認めた静寂の身体は、徐々に魔力へと分解されていく。その様子を見たエルミスが、少し悲しそうに語りかける。


「理解….…出来たかい? 『音』があったからこそ、僕達は協力出来るんだ。多少こじつけっぽくはなるけど……『音』の勝ちだね」

「……フン、やはり理解は出来ない。命と死が決して相容れぬように……『静寂』と『音』は分かり合う事など出来ないのだろうな」

「……そうかい」


 静寂の身体はもう全体の半分ほどが消滅している。


「……だが」

「え?」

「『音』も存外……悪くはない。少なくとも……不快ではない。それだけは……認めてやらんでも……ない……な」


 その言葉を最後に、静寂は完全に消滅した。ずっと静寂の背後にあった魔物の巣も共に。


「終わった……のかな」

「ああ、そうさ。今度こそ僕の……いや、僕達の勝ちだーーーーーっ!!!」


 エルミスは両手を突き上げ、全ての肩の荷が下りたかのように叫ぶ。


「やっと終わったんだ……よかったね、エルミス」

「うん!帰ったら街の皆に報告して、早速宴を開くとするよ! よければ君達も来てくれないかい?」

「うたげ……ふふ、たのしそう、だね」

「急ぐ理由も無いしね。一緒に行こうよ、リーヴ」

「うん」


 こうして、エルミスの戦いは幕を下ろした。

今回使用された技

静寂

静剣・音薙(静寂の大技。効果自体はただの全体物理攻撃)

↑この技、案外簡単に突破されたがこれはどちらかと言うとセラが化け物なだけ。

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